家族経営の飲食店で子どもを手伝わせることについて

家族経営の飲食店で子どもを手伝わせることについて

家族経営の飲食店の場合、一般的な飲食店とは違い、「子ども」「家族」がそのお店で働くこともあり得ます。 この場合、法律的には何か問題点があるのでしょうか? それについて見ていきましょう。


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家族経営の飲食店の場合、一般的な飲食店とは違い、「子ども」「家族」がそのお店で働くこともあり得ます。
この場合、法律的には何か問題点があるのでしょうか?
それについて見ていきましょう。

家族経営の飲食店で、子どもを働かせることは法律違反なのか?

労働基準の「労働時間」の項目においては、子どもの労働を制限しています。ごく簡単に言えば、大人と同じような働かせ方をしてはいけないようになっているということであり、特に22時~5時までの間の労働は、原則として禁じられています(シフト制で、かつ16歳を超えた男子の場合には、この規定はない)

飲食店の場合、夜の22時以降もやっている、というところは決して珍しくはありません。特に子どもが、学校に通っていて部活にも行っていて…ということであれば、「お手伝いできる時間」が21時以降になることもあるでしょう。
このように考えていけば、家族経営で子どもに手伝わせることは、極めて違法性の高いものであるかのように思われます。

しかしここで出てくるが、同じく「労働基準法」の「適用除外」の項目である第116条の2の項目です。この項目では、「この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。」とされています。
そのため、実際のところは、「家族経営での飲食店においては、子どもを働かせることは、違法とはなり得ない」ということになるのです。

出展:厚生労働省「労働基準法」

児童福祉法の観点から

もっとも、児童福祉法においては、「満15歳に満たない児童に対して、酒の席で接待するような行為」を禁じてきます。また、当然のことながら、「勉強をしなければならない時間を無視して労働に従事させること」などは児童福祉法に違反しています。また、健康を損なったり、健全な養育が妨げられたりするような環境下で、子どもを働かせることがあってはいけません。

加えて、この特約はあくまで「家族経営」「家庭内の労働」にかかる話です。「子どもをほかの飲食店に働かせに行った」というようなことがあれば、これは法律違反となります。

家族経営の飲食店のなかで子どもに手伝いをさせた場合、たとえお小遣いをあげなかったとしても、「違法」とまでは言えないと考えられています。ただし、「手伝いをしなければご飯もやらない」などのようなケースの場合は虐待にあたります。

周りの人はどう見ているのか、「お客側」の意見について

法律から、「子どもの手伝い」を考えていくと、「勉強をする時間が確保できなかったり、虐待にあたる行動がされていなかったりすれば、店を手伝わせるのは問題がない」ということになります。

しかしこれを、「そのお店に来ているお客がどう感じるか」ということと、「当の子どもがどう考えるか」はまた別問題です。

まだ小さい子どもが一生懸命親の真似をしてお手伝いをしていたり、中学生くらいの子が注文を取りに来たりしている光景を、微笑ましく思ったり可愛く思ったりするお客様もいるでしょう。

しかしなかには、強烈な嫌悪感を抱く人もいます。
「お酒も出る席なのに、子どもに手伝わせるなんて何を考えているんだ。また、仮に昼間の時間帯、夏休みの時間帯であったとしても、その時間は本来は勉強や遊びにあてるためのもの。労働に回すべき時間ではない。子どもが自発的にやっている、というかもしれないが、子どもは親の考えを読むものだ。親のことを考えて、親がしてほしいことを察して手伝っている可能性も充分にある。それが健全なかたちだと言えるのか」という意見を持つ人もいますし、実際に「親の飲食店でずっと働いていた」という「子ども」の立場だった人などは、「家のなかの家事を手伝うのとは違う。本当は家で遊びたかったし、部活もしたかった。でも、手伝うことが当たり前のように思われていて、断ることができなかった」という考えを大人になっても抱え続ける人もいます。

もちろん、本当にお店が好きで、お店を継ぐことを考えて、前向きに仕事に取り組む子どももいるでしょう。お手伝いを積極的に行い、対価を受け取る子どももいるかもしれません。お店での活躍が自分自身の自信につながり、前向きになれる子どももいるでしょう。
「どこまで子どもに手伝わせるか」というのは、それぞれの家庭の教育方針もあり、一概に言うことはできないという問題もあります。

しかしそれに対して否定的な見方をする層というのは一定数います。また、「子どもに手伝わせなければ、そもそも経営が立ち行かない」「家族は無償の労働力である」という考えが基本にあるのならば、それは極めて危険な状況であると言わざるを得ません。

子どもは大人から守られるべきものです。
労働を強制することは間違っていますし、また「手伝って当たり前だ」という空気を子どもに押し付けることも間違っています。
それを理解したうえで、「どこまで子どもに手伝わせるのか」を真剣に考えていく必要があります。