【基礎知識】飲食店の事業承継の方法とM&A

今、中小企業・小規模事業者の飲食店経営者にとって、後継者問題は大きな課題になっています。経営者の高齢化が進み、事業を誰かに引き継いでほしいと思っても後継者がいないことも少なくありません。 事業承継の際、有効な手段としてM&Aがよく知られています。ここでは、飲食店の事業承継の方法と、M&Aについての基本的な知識を紹介します。


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【事業承継】飲食業界の跡継ぎ問題

中小企業庁によると「2025年までに、平均引退年齢とされる70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者はおよそ245万人に達するが、約半数の127万人は後継者が未定になる」と予想されています。127万人という数字は、日本企業全体の1/3に相当します。

帝国データバンクが2019年に行った「全国・後継者不在企業動向調査」によると、2019年における事業承継の34.9%は「同族承継」でした。

先代経営者と新経営者との関係性は、同族承継以外に「創業者」「内部昇格」「外部招聘」「その他」に分類され、もっとも高かったのは同族承継です。

過去3年間の調査結果を見ると、同族承継の割合がいちばん大きい傾向は変わらないものの、その割合は年々低下の一途をたどり、2017年の41.6%から6.7ポイント低下しました。

また、全国約9万5000社の後継者候補の中でもっとも多い属性は「子ども」の40.1%、次いで「非同族」(従業員など社内外の第三者)の33.2%でした。

これらの調査結果から、第三者承継のニーズが顕在化する経営者は、今後一気に増大する可能性があります。

こうした傾向は、飲食店における事業承継でも同様です。これまでは親族間で行われるケースが多かったものの、その割合は減っています。背景には、飲食店を敬遠する若者が増えたことや、経営者側も負担のかかる飲食店を子どもに引き継がせたくないと考えていることがあります。

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【個人店・チェーン店】事業承継の方法

ひとくちに飲食店といっても、個人店とチェーン店では事業承継の方法が異なる部分もあります。それぞれの方法を見てみましょう。

個人店の方法

個人店では、以下のような手法で事業承継されることが多いでしょう。

子など親族に承継する

いちばんオーソドックスな方法です。親族が経営者になれば、従業員や取引先も安心して店とかかわりを持ち続けることができます。

従業員に承継する

店の事情をよく理解している従業員に引き継げば、経営者としての教育期間を短縮できます。

後継者募集サイトを利用する

ネット上には、飲食店を第三者に承継させたい側と、飲食店を引き継ぎたい側をマッチングさせる仲介サイトがたくさんあります。サイトによって、得意な業種や事業規模などが異なります。

店のある地域の商工会議所へ相談する

全国にある商工会議所は、経営者のサポートを行うところです。事業承継が決まっている経営者はもちろん、後継者がいない経営者の相談にも対応しています。

取引先金融機関へ相談する

多くの金融機関は、法人向けサービスとして事業承継を掲げています。相談の専門部署を設置し、公認会計士や税理士、弁護士などの専門家と連携を取りながら、事業承継の解決策を提案します。

取引先金融機関に相談することで、金融機関が抱えている顧客の中から事業承継先を紹介してもらえることもあります。

チェーン店の方法

フランチャイズチェーン店のオーナーになっており、店の事業承継を考えている場合は本部からの許可を得る必要があります。了承が得られれば、個人店と同様に親族への承継や親族以外への承継を行うことができます。

また、本部が仲介し、別のオーナーへの事業承継を促すこともあります。

【個人・チェーン店共通】M&Aで後継者を募集する

M&Aによる後継者募集は、個人店・チェーン店のいずれも活用できる方法です。後継者のいない飲食店の後を継ぎたいと考えている側は、M&Aを専門に手がける会社に直接問い合わせ、買収を希望している企業とのマッチングを依頼します。

M&Aの専門会社には、それぞれ得意な業種があります。当然、飲食店の事業承継であれば飲食業界のM&A専門企業に依頼するのが望ましいでしょう。「買い手の候補者をたくさん知っている」「M&Aを進めるにあたってのポイントを確実に押さえながら、案件を進めることができる」といった強みがあるためです。

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飲食店M&Aの買い手・売り手が知るべきポイント

M&Aで飲食店を買収したい、あるいは譲渡したいと決めた場合、それぞれが押さえておくべきポイントがあります。M&Aを成功させるために、ぜひ知っておきましょう。

飲食店を”買う側”のポイント

飲食店を買いたい人・企業が抑えておくべきM&Aのポイントは、以下の4つです。

M&Aによる買収の目的を明確にしておく

目当ての飲食店を買収することにより、あなたの会社にどのようなメリットがあるのか見通しておく必要があります。「既存事業との相乗効果が見込める」「あるいは既存事業で培ったノウハウを活かし、飲食店事業に参入することで、会社全体の収益を伸ばせる」といった具体的な姿を描いておきましょう。

素早く判断する

飲食店の買い手を探している企業には、いくつもの企業から引き合いが来ている可能性があります。買う判断を迷っていると、他社が手を挙げてしまうこともあります。少しでも興味を持った案件を見つけたら、自社が得られるメリットを冷静に分析しつつ、素早く交渉に動くようにしましょう。

ビジネスモデルの整理

M&Aの目的とも関連することですが、M&Aによって買収した飲食店をどのようなビジネスモデルで経営していくのか、あなたのビジョンを明確に整理しておきましょう。既存事業も含めた事業展開の青写真を描いておくことで、M&Aの相手を絞りやすくなります。

デューデリジェンスをする

譲渡側企業の企業価値を適正に判定することを「デューデリジェンス」といいます。買収側企業にとって、譲渡側企業は「まったく見ず知らずの他人」です。

健全に経営が行われているか、あらかじめ把握して、リスクを予測する必要があります。そこで、デューデリジェンスを行い、決算や財務、法務など状況を調査することが重要になります。

飲食店を”売る側”のポイント

飲食店を売りたいと考える人・企業が抑えておくべきポイントは、以下の4つです。

M&Aによる譲渡の目的を明確にしておく

M&Aによる譲渡を選んだ背景には、「親族に後継者がいない」という理由の他にも、「副業として飲食事業を行ってきたが、本業に集中したい」といったことが挙げられます。

これらの課題を解決するための手段として、M&Aという道を選択したことを明確にしておくことが何よりも大切です。

M&Aは準備から交渉過程、そして完了までに多大な労力を必要とします。交渉の途中で売るのが惜しくなったり、欲が出たりして機会を逃してしまう失敗を防ぐためには、当初の目的を意識し続けることが大切です。

営業状況を整理する

売却前に、店舗の売上・費用がわかる資料や損益計算書、従業員数など、店の営業状況を整理しておきましょう。

売却側が現状を把握してM&Aの戦略を立てるのに役立つだけでなく、買い手にとっても買収の判断材料になります。M&A Propertiesでは、顧問税理士にも相談をしながら、資料の準備を進められることをおすすめしております。

ネガティブな情報も偽りなく開示する

M&Aの手続きを進めていく過程で、買い手側に情報を開示する必要があります。その際、ネガティブな情報も正確に開示しましょう。

M&Aを成立させたいために、ネガティブな情報を隠したくなるものですが、専門家が調べれば必ずネガティブな情報は明るみに出ます。情報を隠すという行為そのものが、買い手と売り手の信頼関係を揺るがすことになり、M&Aが不成立となる事態になりかねません。

条件を明確にする

譲渡の目的を達成するために、希望する買収先企業のイメージや買収金額、買収の期限など、条件を明確に出しましょう。また、条件には優先順位をつけておき、譲れないものと妥協できるものを決めておくと、判断に迷わずにすみます。

飲食店の事業承継・M&Aには高い専門性が必要

当然、買い手・売り手の双方がM&Aによる事業承継に成功したいと考えています。しかし、これまでの経営経験の中で、M&Aを何度も経験している経営者は多くありません。初めての人がほとんどでしょう。よくわからないことが多いM&Aを安心して進めるには、仲介会社の助けを借りる選択がベストです。

M&Aには高い専門性が求められます。また、M&Aで取引される企業が属する業界ごとに特徴があり、ここにも専門知識が必要です。そのため、どんな企業のM&Aを引き受ける仲介会社より、飲食業界専門のM&A仲介会社に依頼することが、成功への近道。

M&A Propertiesは、創業10年間の取り扱い総額がおよそ450億円に上る、飲食業界専門のM&A アドバイザリー企業です。

飲食店のM&Aを知り尽くした経験豊富な専門コンサルタントが、初期検討・交渉・買収スキームの検討・デューデリジェンスなど、M&Aによる事業承継を一括してサポートいたします。

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まとめ

飲食店を第三者に事業承継する手段として、M&Aはよく用いられる手法です。飲食店を親族以外に事業承継したいと考える経営者は今後も増加し、M&Aはこれまで以上に盛んに行われると考えられます。

飲食事業に参入したいと考えている企業にとって、M&Aによる飲食店の買収は、経営のために必要な資源を一から準備しなくてもよいというメリットがあります。飲食店の買収を希望する企業を探すには、飲食店専門のM&A仲介会社、M&A Propertiesへお問合せください。