【新進気鋭の若手飲食経営者シリーズ①】焼肉こじまグループ代表 児島雄太社長インタビュー(前編)南大阪発!コロナ禍でも約1年で10店舗を出店した急拡大中の焼肉店の全貌とは?

1978年に大阪府羽曳野市にオープンしてから44年の歴史を持つ焼肉こじま。この地は焼肉激戦区とも言われており、その中でも人気の老舗です。先代が作られた店を19歳の時に受け継いだ児島雄太社長は、コロナ禍においても様々な戦略で拡大を続け、約1年で10店舗を出店するという快挙を成し遂げています。 前半では、コロナ禍で受けた影響とその対策、そして児島社長が考える人と立地の重要性について伺いました。


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記者)まずは飲食を始めるきっかけについて教えて頂けますか?

児島社長)私の場合は、むしろ飲食業界しか経験していません。というのも、高校を卒業後、

すぐに父親が経営していたこの「焼肉こじま」に入社したからです。ただ、入社して数か月が過ぎて、私が19歳になった頃、父親が突然亡くなり、私はそれを機にお店を引き継ぐことになりました。

ただ、「2代目オーナー」と言われるのが嫌でした。当時1店舗しかなかった焼肉こじまの規模を大きくしようと別の業態のお店を次々にオープンさせました。例えば、ラーメン屋だったり、うどん屋だったり、フィリピンに店を出したり。本当にいろんな業態をやりましたね。いろいろ試した結果、一度会社が傾きかけてしまってフィリピンに居住地を移してやっていこうと計画をしました。しかし2年前から始まったコロナで入国不可となり、もう一度日本で店舗展開しようと決意しました。

記者)コロナの影響を大きく受けたということですね。他にもコロナ禍でどんな変化がありましたか?

児島社長)円安、食材高騰、輸送費の高騰があります。たとえばフィリピンで家畜のえさを作って、それを名古屋の商社に卸すということをしているのですが、船代が5倍ぐらいになっているため輸送コストがかかり過ぎているというのが現状です。今在庫がある分の家畜のえさで賄っていますが、在庫がなくなったとたんに輸送コストが圧迫してくる、さらに食材の原価が高くなるということになります。

これは他社でも同じことが言えるので、食材の原価は全体的にまだまだ上がっていくはずです。さらに飲食店に来るお客様はというとコロナで人流は6割ぐらいになっているため、来店客数は減っています。さらに先行きが見えないため、個人の財布の紐は堅くなっている。食材費が上がったからと言って、その分をそのまま飲食で提唱しているメニューに上乗せということをすれば、お客様が「高い」と思って客離れが起こるかもしれません。

ただでさえ、人流が以前よりも減って、他社の飲食店等とお客様の取り合いをしている中で、自ら不利になるような行為はしたくないというのもあります。戦略や事業計画から見直しているところです。

 

 

記者)具体的にこれまでの戦略や業態づくりについても教えていただけますか?

児島社長)元々は、郊外にある家賃が安くて損益分岐点の低いところに店舗を構えるという店づくりをしていました。オープン前までにかけるお金を極力抑えることで、早期回収を狙った事業戦略です。しかし、今の世の中はそれでは事業を続けられなくなっています。なぜなら、いくら損益分岐点の低い場所にお店をオープンさせても、外出する人が減っている現状があるからです。

さらに、コロナで習慣が変わってしまって、夜遅くまで食事をするということがなくなりました。昼飲みやランチなら外に出るという人が多くなりました。これまでとは全く違いますね。以前から私たちはInstagramなどのSNSや食べログを使っての集客を得意としてきましたが、そもそも人がいないところでは何の反応もありません。魚のいないところで、魚釣りをしているようなものです。

記者)従来の考え方を変えなければいけなくなっているということですね。そこからどのように舵を切ったのでしょうか。

児島社長)これまでは大阪中心で店舗展開を行ってきましたが、今回FCで東京のオーナーさんが葛飾区の金町で店をオープンさせたいという声がかかり、初めて東京に目を向けました。東京店は2022年5月にオープンしました。そこで東京での、人の流れ、人口の多さ、お金の使い方が、やはり大阪とは違うということを実感したところです。

記者)どんなところが大阪とは異なっていたのでしょうか?

児島社長)金町は、23区内の端に位置し、東京では郊外と区分されますが、大阪の郊外とは商圏がまるで別物です。大阪で出店している最寄り駅は南大阪でも一番大きい阿部野橋なのですが、それよりも東京の郊外の方が3倍ぐらい大きいんですよ。東京の規模感は本当にすごいと思います。

 

 

記者)東京は繁華街自体の数も、繁華街のお店の数も本当に多いですよね。

児島社長)繁華街のお店の数は大阪とは全然違います。大阪の郊外では、焼肉を食べた後に行ける二件目が近くにはありません。二件目に行くにも時間がかかってしまうので人の流れが生まれない。その動きがあるのが東京の魅力的なところですね。

金町は下町なのにあんなに人がいて、地域密着型の愛されるお店作りもはまる。そのフィット感が絶妙で、大阪にはない街です。

記者)ぴったりの街を見つけて、順調な様子が伺えますね。

児島社長)すべてが上手くいっているわけではありません。金町店のオーナーは北千住でも餃子屋を運営しているのですが、北千住のような大きな街でも21時以降は人の流れがなくなり、売り上げがよくないと言っています。そのため、今は営業時間を変えて昼から通しで営業をしていったり、色々な施策を考えたりする必要が出てきています。コロナや様々な情勢の変化で本当にいろいろなものが変わってきているため、変えていくしかありません。

元々加盟店さんには、ランチ営業をしなくても、これだけの利益率が見込めますと言ってきましたが、今の時代では難しいと言えます。肉の仕入れ値、特にタンやハラミの値段が高騰しているため、原価率が上がっているのも影響しています。「タンの仕入れが2倍になったから、メニューの金額も2倍にします」とは言えません。タンやハラミは人気商品ですので、出さないわけにもいけません。だからどうするかを考える必要がありますし、今は外食よりも難しい商売はないのではないかと思っているほどです。

 

 

記者)外的要因に大きく左右されるのは飲食店の経営の難しいところですね。賃料などもシビアに見られていますよね。

児島社長)今までは坪8千円くらいの損益分岐点の低い場所、地価が安いところを狙って店舗を構えていました。でも東京には条件のいい街がたくさんあるので、これからは坪1.5~2万円ぐらいまで賃料が上がってもいいと考えています。例えば、大阪の我孫子に店を出した時と比べて家賃が倍になっても、売り上げが倍以上になるので利益がしっかり出るんですよ。

北千住、町屋、八王子などもいいと思っています。ただこれは、今の段階で私が知っている地名を言っているだけなので、リサーチをすすめれば他の場所も候補に挙がってくると思います。

記者)候補に挙がっている街の共通点は何でしょうか?

児島社長)理想を言えば、金町のような人が集まる街です。駅から徒歩5分圏内で、角地で、視認性がある場所。金町のような場所であれば、「東京」にもこだわってはいません。例えば仙台とかもアリだと思っています。家賃が高いと言われていても、渋谷に比べれば高いはずがないので、そういった地方都市の一流立地でも店舗展開をしていければ、成功できると思っています。

 

 

記者)やはり飲食店において立地は重要ですね。

児島社長)そうですね。立地と人です。今までは人が要因となって失敗することが多かったのですが、コロナ禍になって立地の重要度が上がりました。

人に関しては、店長の人柄によってお店がガラッと変わります。それは直営でもFCでも同じです。お客様にもアルバイトにも、その店長がどれだけお店を好きか気持ちが伝わるので、とても雰囲気がよくなり売り上げが伸びるんです。

あとは業態ももちろん大事ですね。元々3年前くらいまでは、低投資で高利益のお店を目指していたのですが、その考えが少し変わってきています。低投資ではやはり限界があるのです。今後はさらにお店作りにもお金をかけて行こうと思っています。金町店はトータルで2500万円をかけて作ったということもあり、私たちの中ではかなり完成度の高いお店だと感じています。投資をした分、売り上げを出せるのであれば、そこはかけるべきだと思っています。

ただ、今ある郊外店舗だから取り組めることはまだまだあるので、いろいろと仕掛けていくところです。楽しみにしていてください。

 

後編へ続く