飲食店を開業するにあたり、あらかじめ法人を設立しておくべきか、個人事業主でスタートして良いのかについて説明します。
多くの方はサラリーマンの経験から、法人についてのイメージは持っていても個人事業主についてはよくわからないと思います。個人事業主という言葉は知っていても、ビジネスはまず法人を設立するところから始まると考えている方が多いのではないでしょうか。
飲食店を開業するという段階においては、個人事業主でも法人でも出来ることは変わりません。実際に個人事業主として飲食店を経営している人が多いので、結論としては法人化しなければならないということはありません。
個人事業主と法人の違いについて、信用面、金銭面、税金面から説明していきます。また、法人には色々な種類がありますが、ここでは株式会社の例で説明します。
法人のほうが信用されやすい?
まずは信用面ですが、よく、法人のほうが信用される、法人化していないと取引してもらえない、という話しを聞きます。大手企業を相手に取引をするのであれば確かにそういった面もありますが、飲食店においては個人事業だから食材を卸してもらえないということはまずありません。
法人のほうが良い場所の店舗を借りられるのではないか、というイメージもあるかもしれませんが、法人の場合は過去の実績や決算書等を確認した上での審査となるため、実績の無い開業タイミングでは個人事業主に比べて有利というわけではないでしょう。
法人のほうがお金を借りやすい?
また、法人化しておくほうが銀行融資を受けやすい、というイメージもありますが、これも飲食店の開業時では特に有利になるようなことはありません。実際に多くの飲食店は個人事業主です。将来的に年数を重ね、利益を出し続けた法人であれば確かに融資を受けやすくなるでしょうが、開業時では変わりません。
ちなみに、株式会社についての本などで有限責任について勉強された方もいると思います。株式会社の有限責任とは、万が一、会社が倒産するようなことがあっても株主にはその責任が及ばないというものです。ここから、法人で借入をすれば失敗しても個人には責任が及ばないと思われている方がいます。確かに法的にはその通りなのですが、そのために銀行は必ず、法人への融資の際に代表者の連帯保証を要求してきますので、実際には責任から逃れられません。
法人のほうが税金がお得?
よく、法人は経費が使いやすいと言われます。確かに法人化しているほうが節税手段は多いのですが、それは利益が多く出ている場合です。利益が少ない場合には使える経費は所詮限られ、それどころか法人の維持コストとしての負担が増えてしまいます。特に1店舗だけの飲食店の場合、大きな利益は出にくいと言われています。
税金面で個人事業主と法人を比較した場合、所得額によって段々と税金が高くなる個人に比べ、法人は資本金が1億円未満であれば税率がほぼ一定となります。個人の税率が法人の税率を越える境界線は年収900万円ですので、代表者の給与がそれ以上になると法人化したほうが税金がやすくなります。
実際に飲食店を開業して利益が1000万円以上出るようになってから法人化しても十分間に合います。逆に利益が出ないうちから法人化してしまうと手間と費用ばかりが増えてしまい、さらに利益が上がりにくくなりますので注意が必要です。