バックグラウンドミュージック(Back Ground Music、以下「BGM」)はお店の雰囲気をつくるうえで非常に重要なものです。
ただ、このBGM、少し扱いが難しいものであることもたしかです。
今回は、店舗でかけるBGMと、その注意点や特徴について見ていきましょう。
店舗でかけるBGM、その選び方の基本について
まず、「飲食店でかけるBGMの選び方の基本」から見ていきましょう。
BGMを選定する際に大切なのは、「店の雰囲気にあっているかどうか」です。
たとえば、若者向きのお店で、どうにも古臭い曲ばかりを流すのはいただけません。この「店の雰囲気にあった曲を流すこと」は非常に重要です。加えて、昼と夜でBGMを変えるなどの工夫もしたいものです。
BGMには「マスキング効果」と呼ばれるものがあります。
これは、騒音などを音楽によって抑えるというものであり、非常に効果的なものです。特に、席同士の間があまり離れていないようなお店や、外の騒音がうるさいお店などに向いています。たとえば、地理的な条件はよいものの、繁華街であり、かつ客席を増やすために客席同士の間をあまりあけていないというようなお店の場合は、このマスキング効果を利用することをおすすめします。
BGMを選ぶときの「音量」も非常に重要です。
飲食店のなかには、この「BGMの音量」が大きすぎて、耳障りになっているところもあります。ひどいところでは、店員の会話やお客様同士の会話がうまく聞き取れないということもあります。
もちろんそのようにして、「音楽を楽しむこと」を前提としてつくられた飲食店ならばよいのですが、そうではない場合、「耳障りなほど大きなBGM」は、明らかにマイナスです。外の音をかき消すにしても、BGM自体が「騒音」になってしまっては本末転倒です。
ただ、あまりにも静かすぎると、BGMの役目を果たせないので調整が必要です。
BGMと著作権
さて、「店舗のBGM」ということを考えた時、そこには一つ厄介な問題が発生します。
それが、「著作権」の問題です。
著作権というのは、「著作物」を守る法律です。著作物は、”思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの”(引用:著作権 第2条第1項第1号)であり、これらを所定の手続きや条件を守らずに使用することを禁じるものです。
飲食店で流すBGMも当然、この「著作物」に含まれます。このため、著作権の保護対象内とされています。
勝手にこれらを使ってしまうと、大きな問題になりかねません。「ばれないだろうから」という考えは非常に危険です。ちなみに、個人で買ったCDを流してもひっかかります。
この著作権の問題をクリアする方法は、大きく分けて以下の5つです。
1.著作権者が亡くなってから50年以上経っているもの
(日本の場合は、著作権者死亡後50年で著作権が消滅する)
2.民謡など
3.保護対象外となっている曲(たとえばフリー楽曲など)
4.ラジオなどに代表される、公共性の高いものを選ぶ
5.使用料を払って使う
1から4の場合、使用料が発生しないのが大きな魅力です。しかしこのような手段を選んだ場合、当然のことながら、使用できる曲には制限がかかります。「落ち着いた雰囲気のお店をつくるつもりなので、曲も日本の古い歌を使いたい」というような場合ならばいいのですが、最先端のカフェで最先端の曲をかけたい、といったケースではかなり困ってしまいます。
JASRACでの手続きか、それとも業者を使うか?
「使用料を払って使う」という場合、その方法は大きく分けて2通りあります。
1.JASRAC(以下「ジャスラック」)から使用許可を得る
2.業者を使う
ジャスラックは非常に多くの曲を扱っており、さまざまな選択肢から曲を選ぶことができます。
使用料に関しては、「店舗の広さ」で決まっています。500㎡の場合は6000円、広くなっていくにしたがって使用料金があがり、9000㎡以上では50000円とされています。
これは1年間の年額使用料ですが、この金額を払えば、何曲でもBGMとして利用できます。
対して、業者によるものは値段にばらつきが多いのが特徴です。また、許諾申請を自分で行わなくてよいという、非常に大きなメリットがあります(すでに料金に著作権使用料が含まれていたり、また自社で音楽を作っていたりするため。このあたりもチェックしましょう!)
一方、これらの業者を介す場合、選べる曲の数は、ジャスラックから使用許諾を得た場合よりも少なくなります。
業者に頼む場合は、必ず比較検討をすることをおすすめします。また、現在では、短期間のみ、無料でお試しができるところも出てきています。
BGMは、インテリアエレメンツと同様、店舗を形成する重要な要素のうちの一つです。しかしそこには、「著作権」という厄介な問題が存在するのもたしかです。クリーンな店舗運営をするために、そして起こり得るリスク要因を避けるために、適当な音楽選びを行うとともに、著作権に関わる問題を適切に処理していきましょう。