現在小売店などに行くと、そこで売られている商品の多くに、「カロリー」「塩分」などが表記されていることがわかるでしょう。このような表記と飲食店との関わりについて見ていきましょう。
現在の「栄養成分表示」のあり方について
カロリーやたんぱく質量、食塩相当量、炭水化物量などについての記載を「栄養成分表示」と言います。この栄養成分表示は、小売店の商品をつぶさに見ていけば、「表記されているもの」と「表記されていないもの」があることがわかるでしょう。
栄養成分表示についてまとめたものが、「食品表示法」です。実は今までの栄養成分表示というのは、「JAS法」「食品衛生法」「健康増進法」などによってばらばらに定められていました。「どこまで表示しなければいけないのか」も違っていました。しかしこれは紛らわしくわかりにくいため、平成27年の4月1日に新たに「食品表示法」が施行され、栄養成分表示が義務化されました。
この栄養成分表示は、原則として「小売店などで売られている、消費者向けに予め包装された全ての加工食品や添加物(業務用加工食品は除く)に対して表示することが義務付けられているもの」です。ただ、上でも述べたように、現状(平成29年2月時)としては、栄養成分表示がついているものとついていないものがあります。これはいったいなぜなのでしょうか。
この理由は、「5年間(平成32年3月31日まで)は、移行期間であるから」というものです。
今までほかの方法で表示をしていたものが、突然「栄養成分表示が一本化されたから、明日からすべてこの表記で統一をしてくれ」と言われても、多くのお店では対応ができません。そのため、新しい栄養成分表示への移行経過措置期間として5年間の年月(ただし生鮮食品に関しては1か月半。このため、生鮮食品の場合は、すでにすべてが食品表示法による表記に統一されているはずです)が設けられたわけです。そのため、栄養成分表示以外の表記をしていることもあるのです。
栄養成分表示は飲食店と関係があるのか?
ただ、この「栄養成分表示」は、飲食店においては義務化はされていません。そのため、飲食店を経営している人は、必ずこの栄養成分表示をしなければならないわけではないのです。
ただ、アンケートによると、全体の42パーセントの人が「飲食店や食品売り場において、栄養成分表示を見たことがある」と答えています。また、そのうちの10パーセント程度が「料理を選ぶときの参考にしている」と答えており、55.7パーセントが「ときどき参考にしている」と答えています。また、各都道府県でも、「飲食店でも栄養成分表示を行うべき、行うことを強く推奨する」としています。
栄養成分表示をすることのメリットとは
現在、日本人にとって「生活習慣病」は大きな関心事です。糖尿病が強く疑われている人は15パーセント程度いると言われており、高血圧に至っては30パーセント程度の割合だと言われています。また、ダイエットをしている人(特に若い女性など)は「カロリー」に対して非常に神経質になっています。
このような人に対して、「栄養成分表示をすること」は強いセールスポイントとなります。
特に、「1日の塩分量は6グラム以下に抑えなければならない。しかし自分で料理をするのは難しい」「昼ご飯は高血圧用のお弁当を頼んでいるが、夜の食事が困る」という人には、「栄養成分表示によって塩分量が分かっているお店」はとてもありがたいものとなります。近所であるのなら、それこそ足しげく通い、常連になるという人もいるでしょう。「このお店のものならば、安心して食べられる」「外食も怖くない」といった意識は、お店の売り上げにつながるだけでなく、高血圧を患い食事の悩みを抱える人に対して新しい希望を与えることにもつながります。
栄養成分表示のデメリットとはどこにあるのか
このため、利用者のことと店のこと、両方の観点から考えると、栄養成分表示を行うことには何のデメリットもないように思われます。ただ、この栄養成分表示を行うことが難しいところもあります。
まず一つ目は、「フルコースなどを出す高級店」です。雰囲気の良さを重要視し、味の良さを追求する高級料理店において、「栄養成分表示」はしばしば邪魔になります。だれだって、「この一口が○○カロリー…」と考えて食べるのは嫌ですし、雰囲気も悪くなってしまうでしょう。
もう一つは、「すべての料理の栄養成分を計算するのはとても手間がかかる」ということ。小さなお店などの場合は、この点を忌避するところも多いのではないでしょうか。
ただ現在は、都道府県などが、計算のノウハウをまとめたマニュアルを出しています。また、一度すべてのメニューをまとめてしまえば、後は追加メニューだけを計算していけば事が足ります。頑張って計算してみてはいかがでしょうか。
「お腹が膨れればよい」というのは、もうずっと昔の話。健康志向が高まる今、飲食店でも、栄養成分表示が求められているのかもしれません。