飲食店のアルバイトを解雇したい、許可されるケースと許可されないケースと方法

飲食店のアルバイトを解雇したい、許可されるケースと許可されないケースと方法

飲食店は、「アルバイト」を雇って店を回していることが多いと思われます。 そのため、しばしば、「アルバイトを解雇したいのだが、どうすればよいのか」という問題にぶつかることになります。 今回は、法律の観点から、「アルバイトを解雇できるケース」について見ていきましょう。


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飲食店は、「アルバイト」を雇って店を回していることが多いと思われます。
そのため、しばしば、「アルバイトを解雇したいのだが、どうすればよいのか」という問題にぶつかることになります。

今回は、法律の観点から、「アルバイトを解雇できるケース」について見ていきましょう。

「気に入らない」という理由では当然解雇できない

「アルバイトは正社員に比べて、立場的に強くない」「アルバイトは不安定な立場である」「アルバイトはシフトに融通がきく分、正社員ほどさまざまなことが保障されていない」というのは、しばしば言われることです。
このため、「アルバイトならば、解雇をするときもそれほど大変ではないだろう」と考えてしまいがちです。

しかし実際には、アルバイトを解雇するときには、労働基準法や判例に照らし合わせてみると、非常に厳しい決まりがあることがわかります。

まず、「解雇できない」という例について見ていきましょう。

たとえば、本人の信仰を理由とするもの。一例ですが、店側の店主がAという政党を熱心に支持しており、アルバイトがBという政党の熱心な支持者だったとしましょう。このような場合は、支持する政党が違うわけですが、それを理由として解雇することはできません。

また、現在は「ブラックバイト」が問題になっています。そのため、これを重くみて、国の公的機関などに訴える人もいます。このような人というのは、確かに店側からすれば非常にうっとうしい存在ではあります。しかしそもそも「ブラックバイトであること」が大きな問題ですし、このような「正当な訴え」をした人を、それを理由に解雇することは認められていません。

「履歴書にウソを書いていた」という場合はどうでしょうか。こんなことをされてしまうと、アルバイトに対して非常に強い不信感を抱いてしまうことでしょう。しかしこれであってさえ、「このような理由だから、このアルバイトは絶対に解雇できる」とは言えないのです。たしかにこのような経歴詐称は、解雇理由の一つにはあたりますが、「わずかでもウソを書いていたらその時点でクビにできる」というものではないのです。

ただ、犯罪などに関しては厳しい目で判断される事例が多いので、この場合は解雇事由にあたると考えられるケースも多いと言えます。

「サボリ癖」「能力がない」は解雇ができるのか?

このように考えていくと、アルバイトは非常に強い立場にあるように思えます。ただ同時に、上で挙げたことは、「履歴書のウソ」以外は人間として当たり前のことだと言えるでしょう。信仰や政治的信条を理由として解雇するようなことはあってはいけませんし、ブラックバイトを訴えた人を解雇できるなどということは絶対にあってはなりません。

もう一つ、飲食店経営において身近なのは、「サボリ癖」と「能力がないこと」でしょう。

「いつも病気を理由にして、シフトを勝手に抜ける」
「遅刻が多い。いつも5分くらい遅れてくる」
「せっかく決めたシフトを無断欠勤! その日のコマに穴があいた」
このようなアルバイトの身勝手さに、頭を悩ませる飲食店の経営者は決して少なくはありません。

こういった「サボリ癖」「シフトを守らない」ということは、一見すると、十分な解雇理由にあたるように思えます。
しかしこの場合でも、アルバイトの立場は今だ強く、1回や2回程度遅刻や無断欠勤をしただけでは解雇はできないと考えられています。これを理由として解雇をするためには、まずは「注意」が必要です。それでも改善されない場合は、減給などを提案します。ここまでしてなお、まったく改める様子がないという状況になって初めて、アルバイトを解雇することができるのです。

「人間としてアウト」なことをやっていたとしても、「1回遅れてきたからクビだ!」とは言えないわけです。

もう一つ悩まされるのが、「アルバイトの能力が低すぎる」ということでしょう。

「ほかの人が10できることを、そのアルバイトは3しかできない」
「お客様に迷惑をかけてしまう」
「皿を毎シフトごとに必ずと言ってよいほど割り、経済的な損失を与える」

こういったケースは非常に困りものです。

ただ、この場合も、「雇用している側が、十分な教育を行っているか」が問われます。再三の指導を行い、丁寧に教え、それでもなお能力が低く、かつ配置換え(ホール→キッチンなど)をしたとしても、やはり能力の向上が見込めない……という状況になって初めて、「解雇」が選択肢にあがってくるのです。

もっとも、アルバイトにこれらの指導を再三行っていると、アルバイトの方が居心地が悪くなり「辞めたい」と申し出てくるケースはあるかもしれません。しかし注意や指導の仕方が「退職を迫るものであるもの」であった場合、後々まで問題になりかねません。このことも理解したうえで接していくことが重要です。

アルバイトは、決して「簡単にやめさせることができる人材」ではないのです。