飲食店がはらむ問題~ワンオペのリスクについて考える

飲食店がはらむ問題~ワンオペのリスクについて考える

どの業界にも、それぞれの問題点や悩みがあります。社会全体が抱える問題が業界に色濃い影を投げかけている場合もあれば、ほかの業界ではあまり見られない問題が特定の業界でのみよく見られる、ということもあります。 今回は、どちらかと言えば後者に属するであろう「ワンオペ」について、飲食店の観点から見ていきます。


この記事は約5分で読み終わります。

どの業界にも、それぞれの問題点や悩みがあります。社会全体が抱える問題が業界に色濃い影を投げかけている場合もあれば、ほかの業界ではあまり見られない問題が特定の業界でのみよく見られる、ということもあります。

今回は、どちらかと言えば後者に属するであろう「ワンオペ」について、飲食店の観点から見ていきます。

まずはおさらい、ワンオペとは

「ワンオペ」は、大変問題があるものの、一種の流行語にもなった言葉ですから、多くの人が耳にしたことのある単語でしょう。
ただここでは、まずは「ワンオペとは何か」ということからおさらいしていきます。

ワンオペは、「One Operation(ワンオペレーション)」の略語です。
基本的な解釈として、「たった1人の人間だけで、店舗をまわすこと」となるでしょう。特に飲食店においては、「オーダーや調理、給仕、レジ作業、場合によっては仕込みなども1人でこなす」という意味合いになります。

これは正社員だけではなく、非正規雇用のアルバイトなどがこなすこともあります。

この「ワンオペ」が、もっとも可視化されたのは牛丼の全国チェーンの話でしょう。
2014年から2015年にかけて、この「ワンオペ」が大問題となったのです。

半日以上も1人の人間だけで店を回すということもあったうえ、さらに翌日も勤務しなければならない…などの過酷な就業実態が明らかになったのです。

1人の人間が声をあげたことにより、同じような体験をしていた人たちが次々と声を上げるようになりました。
また、深夜営業を中止した会社もあります。徐々に終業態勢は見直されているとはいうものの、このような形態は完全に駆逐されたわけではありません。
1つの会社がワンオペを解消すべく動いたとしても、また別の会社がワンオペでの勤務を指せることもあり、まだまだこの問題は解決していません。

ワンオペはなぜ起こるのか

「人件費」は飲食店を経営するうえで非常に大きな経費です。特に深夜営業をしている飲食店の場合、「深夜勤務」ということで、賃金を1.25倍にしなければなりません。
また、深夜帯は「たしかにお客様は来るものの、日中に比べるとやはりお客様の数自体は少ない。それならば、できるだけ少ない人数で回したい。2人以上の人間がいて、手持無沙汰になってしまうことは避けたい」と考える飲食店経営者もいるのではないでしょうか。

加えて、人員不足に悩まされる飲食店も多くあるのも問題です。日勤と違い、深夜勤、特に「夜の22時から朝の6時」までのような時間は人員が確保しにくいという現状があります。

また、飲食店の場合は、しばしば「学生の非正規社員(アルバイト)」が主力になることもあります。彼らは、多くの場合、学校を卒業すると辞めていきますし、在学中もテスト期間などは休みをとることが多いと言えます。加えて、長期休みは実家に帰るという人も多いでしょう。そのため、「普段は深夜帯を担当している学生さんがごっそり抜けてしまう」ということがあるのです。

このようなことから、賃金の面でも、人員の面でも、深夜帯に人を入れるのが難しい、という飲食店は多いのではないでしょうか。

ただ、この「ワンオペ」には非常に大きな問題があります。

ワンオペの問題点2つ

ワンオペで起こりうる問題は、大きく分けて2つです。

まず1つめが、「ワンオペをしている人間に、体力的・精神的な負担がかかりすぎる」というものです。

ワンオペをしているときというのは、トイレに立つのも難しくなります。特に、ホールや調理場と従業員用のトイレが遠いところにあった場合、お客様の鳴らすチャイムが届きにくいということもあり、行くことが難しくなります。この結果として「来るのが遅い!」としてクレームがつけられることになれば、時間もとられますし、精神的な負担も増えます。それによってさらにほかのお客様からクレームが寄せられることもあります。

また、「本来ならば人が少ないはずの夜間」であっても、団体客が訪れた場合は非常に忙しくなります。また、そもそもの問題として、「ワンオペでは対応しきれない人数が来ているのに、経営者が改善してくれない」という店もあります。
注文を受けて、作って、運んで、下げて、洗って…というのを、1人でこなすのは現実的にはとても難しいでしょう。

もう1つは「強盗」の問題です。
「従業員が1人しかいないから強盗に入りやすい」とした犯罪者が、ワンオペの飲食店を狙って強盗をはたらくケースが多くみられました。ある年など、飲食店を対象とした強盗事件のうちの半数が、ワンオペをしていたチェーン店であったという統計が出ています。翌年には、なんとこの数字が9割にも増えています。

飲食店側にとっては、「たとえ強盗があったとしても、その時に奪われる金額の方が、従業員を2人雇うよりも安い」という計算があるのかもしれません。
しかし強盗は、金銭面の被害だけでなく、従業員への傷害事件につながる可能性もあります。

良識ある飲食店の経営者として、ワンオペは避けるべきでしょう。