レジでの会計は、飲食店でもほかのお店でもとても大切なものです。今回は、「レジの作法」として、レジのやり方を見ていきましょう。
まずは基本! 領収書の話
飲食店を経営していると、必ず「領収書をください」と声が掛けられるときがくるでしょう。
ただ、領収書は実はきちんと要件を満たさなければ「領収書」として認められないので注意してください。
領収書を出すときに必要な条件は、以下の5つです。
・金額
・宛名
・発行者の情報
・何に使ったかの但し書き
・日付
です。
「領収書といえばハンコ」と思っている人もいるかもしれませんが、実はハンコは必須条件ではありません。ただ、お客様に求められることが多いので用意しておくに越したことはありません。
注意したいのは、「宛名」と「但し書き」です。「宛名はこちらで書きます」というお客様もおられますが、これはお店が記入するものです。また、但し書きもしっかりと。飲食店の場合は、「打ち合わせ費用」「飲食代」「昼食代」「食事代」のような形が多いと思われます。
現在は機械で印字して発行するタイプの領収書もあります。こちらでも法的な効力はかわりません。ただ、私が飲食業に従事していた12~13年前は、「機械での印字は不可、必ず手書きにしてください。そうではないと落ちないので」という人、「手書きでの領収書は不可、機械での印字にしてください」という人の両方がおられました。そのため、どちらにも対応できるように、2つのタイプの領収書を準備しておくといいかもしれません。
混んでいるときの別会計はどうする?
飲食店で多いのが、「別会計」です。女子会などで来られたお客様の場合だと、「別々に会計してほしい」という申し出を受けることも多いでしょう。レジのシステムにもよりますが、現在では多くのところが別会計ができるレジを導入していると思われます。基本的には別会計をお受けする方向をとると良いと思われますが、「混雑時はどうするか」ということも考えておきましょう。
これはお店の考え一つなのですが、平日のランチタイムなどはどこも混んでいますし、お客様にも時間の制限があります。そんなときに、「10人バラバラで別会計」ということになってしまうと、待たされたお客様の方がイライラしてしまいます。
「個別に断るのが難しい」ということであれば、レジ前に「混雑時の別会計はお断りしております。ご協力をお願いいたします」のようなプラカードを下げておくとよいでしょう。口頭で一人ひとりに伝えるよりはトラブルも少なくなります。
飲食中にトラブルがあった場合はレジでも一度謝罪する
飲食店を経営していると、どうしても「トラブル」は起きてしまいます。異物混入や生焼け、従業員の態度が悪い…などのように、クレームはたくさんあるでしょう。
このようなクレームが寄せられた場合、まずその場で謝罪します。きちんと誠心誠意をもって謝れば、多くの場合はそれ以上大事にはなりません。
また、たとえそのクレームを寄せられた張本人ではなくても、レジを受け持つ従業員は、会計の際に一言謝罪の言葉を添えるようにすると良いでしょう。「先ほどは誠に申し訳ございませんでした」と加えるだけで、お客様からの好感度はあがります。
この言葉は、
・トラブルやクレームをきちんと店全体で共有できている
・従業員全員が1つのお店を回していっているという意識を伝えることができる
・張本人だけでなく、ほかの従業員もそのクレームを重く受け止めている
ということの象徴となるからです。
ちなみに私はお客様のテーブルの上で食器を派手に割ってしまったことがあります。もちろんその場でも謝罪しましたが、レジでも頭を下げてお詫びしたところ、そのグループの方から「会計のときまできちんと謝罪できて偉いね。もう今のですべて許したし、気にしなくていいよ。けがしなくてよかったね」と優しいお言葉をいただいたことがあります。もう10年以上前のことですが、忘れることができません。
レジの誤差は誰の責任?
飲食店に限らず小売業のトラブルとして、「レジのお金の誤差」があります。計算上の数字とレジのなかのお金が合わない、というトラブルです。これにはいくつかの理由が考えられます。
・お客様から受け取ったお金が間違っていた
・お客様にお渡しするおつりが間違っていた
・クレジットカード支払いなどのときの誤り
・従業員の横領行為
などがその代表例でしょう。
この「誤差」をどこまで容認するか、というのはお店によって違いがあります。「各時間帯で1000円までは許容範囲」「1日の売り上げの誤差が1000円未満ならいい」「100円以内の誤差なら大丈夫」「1円でも許されない」など、かなりの違いがあります。
もちろん誤差が出ないに越したことはありませんが、誤差が出たときにはだれがその責任を負うのでしょうか。
これを「従業員に負わせる」としているところもありますが、法律的にはかなり問題のある行為です。従業員にレジの誤差の責任を負わせるためには、従業員の具体的な過失を特定し、それを立証しなければならないからです。多少の誤差はやむなし、というのが一般的な解釈なのです。
もしあなたが従業員であり、店側から賠償を求められたのならきちんと断りましょう。