飲食店を開業するにあたって、冷蔵のテクニックをしっかりと身に付けておかなければなりません。厨房内での作業に従事する皆に“なにを冷蔵すべきか”と“どう冷蔵したら良いのか”という2点をしっかりと把握し、理解をしてもらう必要があります。従業員皆が今まで飲食店での勤務歴があるとは限らないので、冷蔵についてのテクニックや知識はマニュアルで見える化しておくことが必要です。そこで、ここでは食品の冷蔵のコツについてお話をしていきます。
そもそも、冷蔵をするのは“衛生面”のため
基本的なことですが、そもそも食品を冷蔵することによって、バイ菌や雑菌といった菌の増殖を抑える効果が期待できます。食品を衛生的に保管するには冷蔵をすることが必要不可欠。冷蔵設備についてもしっかりと考える必要があります。はじめから菌が付着していない食品を購入すれば、より長く鮮度を保つことが出来るのでは…?と考える方もいるかもしれません。しかし、残念ながら鶏肉や豚肉といった肉類をはじめ、魚介類、野菜といったようにほぼすべての生鮮食品になんらかの菌が付着しています。
ただ、付着している菌の多くは冷蔵庫内の温度である10℃以下で増殖速度がかなり抑えることが出来ます。冷蔵庫内は一般的に0から10℃で設定されていますので、きちんと冷蔵庫に入れて保管することによって菌が繁殖して食品が汚染されてしまうことを防ぐことが可能です。冷蔵庫での保管は“食品の衛生”のためであるということを経営者はもちろん調理従事者はしっかりと理解しておくべきでしょう。
“エチレンガス”対策にも冷蔵は必要不可欠!
肉や魚類を冷蔵するのはもちろんなのですが、野菜や果物に関しては家庭だと案外室温で保存している方も多いことと思います。しかし、野菜や果物は適切な管理をしなければ収穫後から“老化”と言われ、新鮮さが欠けていく現象に見舞われます。その“老化”の原因は、「エチレンガス」によるもの。エチレンガスは、本来は“熟成”するために野菜や果物から出てくるものなのですが、その熟成が行き過ぎると腐敗といったように傷んでしまいます。よって、このエチレンガス管理を冷蔵庫内で行うことが必要になるのです。冷蔵庫内の温度で野菜や果物を保管すれば、エチレンガスの発生を室温での保管時よりも抑制することが出来ますので、野菜や果物を出しっぱなしにせず、きちんと冷蔵庫での保管をすることをオススメします。
冷蔵が必要な食材と、しなくていい食材を理解しよう
冷蔵が基本な食品をまずは覚えておくことが大事です。肉類そして魚介類は加工品であっても冷蔵することが基本になります。また、先ほども触れたように野菜については冷蔵すべきものと、しない方が新鮮な状態で長持ちするものがあります。冷蔵庫の温度は10から0℃が基本ですが、野菜によっては0〜4℃までの低温域では一気に鮮度が落ちてしまうものもあるため注意が必要です。
・冷蔵しなければならない食品
肉類…鶏肉、豚肉、牛肉ほか肉類全般、ハムやベーコン、ミートボールといった加工肉
魚介類…生魚、干物関係なく魚介類全般、ソーセージや蒲鉾といった加工品
野菜…きのこ類、大根や人参、新タマネギ、レタスやキャベツ
果物…ブドウ、イチゴなど
それ以外にも、卵や牛乳といった乳製品、納豆や厚揚げといった大豆加工品も冷蔵する必要があります。
・冷蔵しなくても大丈夫である食品
野菜…カットしていないかぼちゃ、ゴボウ(土付きが望ましい)、タマネギ、芋類全般(土付き)
果物…マンゴー(硬い間)、ミカン、バナナなど
常温保存可能と表記のあるレトルト食品・ソース類、缶詰やびん詰め食品
・冷蔵庫でも比較的温度の高い部屋に保存すべきもの
(野菜庫に入れるのがベター)
野菜…芋類全般、トマト、ナス、キュウリ
果物…マンゴー、グレープフルーツ、レモン
冷蔵庫を正しく、そして上手に利用しよう!
業務用冷蔵庫でも、近年は多機能のものが多く目立ちます。初期投資費用にもよりますが、多数のドアがある冷蔵庫を購入した際はドアごとに保管するものを決めておくと良いでしょう。冷蔵庫内の各エリアそれぞれに温度を設定できるタイプのものは、保管する食品ごとにしっかり適温を設定するようにしましょう。適した温度設定をしていると、そうでないとでは食材の鮮度に大きく差がでます。長持ちするだけではなく、美味しさに直結するので気を付けましょう。
また、食材の出し入れを頻繁に行うと、冷蔵庫内の温度が上がってしまいます。出し入れは迅速に、必要以上に冷蔵庫のドアをあけないことが重要です。また、探し物などをして冷蔵庫のドアを長時間開けっ放しにしてしまうのもNGです。冷蔵庫内の温度を上げてしまうと、冷やして元の温度になるまでの間の電気代もかかりますし、庫内に保管しているものが傷んでしまう原因になります。食品を新鮮な状態で、より長く美味しく食べられるようにするために冷蔵庫の取り扱いについて習熟しておきましょう。