飲食店経営者が知っておきたい領収書の取り扱い

飲食店経営者が知っておきたい領収書の取り扱い

取引をしている事業主は時には領収書を発行する立場になり、また逆に領収書をもらう立場になります。この記事では飲食店の経営者が知っておくべき領収書の取り扱い上の重要点について説明します。


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領収書は取引に関する重要な4つの書類のひとつで、他に見積書、納品書、請求書があります。とりわけ領収書は確定申告や税務調査のため7年間保存する義務もあり重要度が高い書類です。領収書を作成する目的はその取引の記録を残すことで、取引で発生した金額の食い違いを防いだり、顧客から再度支払いを要求されて二重払いをしてしまうような金銭トラブルを防止することにあります。

上記のような理由からも領収書は支払う側のメリットが大きい文書と言えます。取引をしている事業主は時には領収書を発行する立場になり、また逆に領収書をもらう立場になります。この記事では飲食店の経営者が知っておくべき領収書の取り扱い上の重要点について説明します。

領収書の保管方法

前に述べたように領収書は整理のうえ1年後ごとに保管し最長7年保存する義務があります。しかし領収書は毎日発生するものなので個人事業主の場合、本業が忙しく時間もないので、効率よく整理・保管するテクニックが必要と思います。

そのため、封筒かファイルを用意して、出費項目別、日付順、月別に分けたうえで領収書・レシート類をどんどん放り込んでいく方法で整理していくのが簡単だと思います。領収書類を台紙やノートに細かく日付順に張り付けたりする必要もありません。なぜなら確定申告が過ぎれば後は保管するだけでそれらはほとんど見ることもないのが理由だからです。

課税文書としての領収書

印紙税法では金額5万円以上の領収書には収入印紙を貼り付けしなければならないとなっています。以前はその境界は3万円でしたが2014年4月1日以降5万円以上の領収書に対し収入印紙を貼らなければならなくなったので金額を間違えないようにして下さい。

ルールとして領収書を相手に交付する前にその貼り付けた収入印紙は印鑑で消印(割印)して交付し、再利用など悪用されることを防止しなければなりません。また収入印紙を貼り忘れた場合、あるいは意図的に貼らなかった場合、のちに税務調査で判明すれば過怠金としてその額面の3倍罰金を払う義務が生じますのでくれぐれも注意が必要です。しかし領収書そのものは印紙が貼られていなくても有効です。

領収書発行に際しての表記上の注意点

領収書を発行する場合、一定の決められたルールがあります。後のトラブル防止のためにもできるだけ基本に沿った取り扱いを心掛けて下さい。
①まず相手の取引先名+御中(様)で支払先を特定します。
「上様」等でも領収書として認められますができるだけ正式な名前で発行するほうがベターと思います。
②代金を受領した日付は正確に記載して下さい。
③領収金額については発行後改ざんされることを防止するため、金額の頭部に¥または金、金額の最後にー(ダッシュ)もしくは也、さらに金額には三桁ごとに,(カンマ)を付けます。
また金額が十万円、百万円単位になる大きな領収書の場合は改ざん防止にさらに壱、弐、参、伍、拾、萬などの漢数字を利用したほうがいいと思います。さらに領収金額を打ち込む機械としてチェックライターがあります。これも改ざん防止には効果的です。その場合、必ず数字の間にすき間を開けず打ち込む配慮も必要です。すき間があると後でそこに数字を加えられて改ざんされる可能性があります。
④但し書きには取引の内容を簡単に表記します。
⑤最後に発行者の住所、名前、名前に商売上の屋号があれば併記、連絡先を記入して押印します。
印鑑についてはシャチハタ印でもいいですが、特注の角印だと改ざんされにくい効果があると思います。

レシートの取り扱い

確定申告ではちゃんとした経理処理を行い取引に掛かった領収書を整理保存することが求められています。しかし全てが領収書である必要はなく、最近はレシートも認められています。レシートの場合、取引の内容が細かく印字されていることが多く、むしろ後から見て領収書より取引内容を確認するのが容易なメリットがあります。

ここでレシートの場合の問題点を上げると、レシートの内容で個人用と事業用が混ざっていた場合は後で分からなくなることが多いので、もらった段階で即レシートの裏面や余白に「うち事業用に〇円支払い」等の記載をしておくことで混乱を防止できます。

また混在を避けるテクニックのひとつとして最初に個人用と事業用の清算は別にしてもらう方法もあります。あるいは個人用のレシートはもらったらすぐに捨てて、事業用のみ残すと混ざるリスクを避けられるでしょう。

領収書をもらえないときの対応

事業において往々にして領収書をもらえない場合があります。その時の対応について解説します。例えば仕事でバス・電車など公共交通機関を利用した場合、領収書はもらえませんので「交通費清算支払明細書」作って残しておきましょう。その場合、明細書には交通手段を使った目的、経路、金額、日付などは必ず入れておきます。

また取引先への香典・供物料なども一般的に領収書がもらえないケースです。このような場合、支払伝票に香典と引き換えにもらった会葬礼状など添付して明細を残しておけば問題ないと思います。

発行上の注意

著者の個人的体験からも感じるのですが、領収書発行に関して安易な取り扱いが散見されます。例えば顧客から「領収書の日付空けておいて」って依頼されたら安易に応じて発行してしまうケースです。飲食店で決済するときによくこの対応を見かけましたけど本当にこのような取り扱いでいいのかなって疑問を感じています。あるいは発行者の住所氏名捺印のみで金額他全て白紙の領収書を交付するケースです。さすがにこのような取り扱いは絶対避けるべきと思います。

最近某地方議会の議員が取引業者からもらった空白の領収書を使って政務活動費に関する不正を働いて議員辞職をするニュースが流れました。このように空白の領収書は何に使われるか分かったものではありません。自分の身は自分で守るべきで、たとえ親しい知り合いでもこのような取り扱いは断るべきです。白紙委任ほど怖いものはありません。

領収書は金券とみなすべき

領収書は経費としてその項目を落とすときの大事な証拠書類です。確定申告で経費として多く落とせれば落とせるほど節税につながります。そういう意味では領収書を後に現金で帰ってくる金券とみなせば俄然個人事業主としても領収書に対する意識が高まり、いい加減な処理をしなくなります。

売上げ増加は相手に依るところが大きいですが、経費に関しては個人事業主の意思でかなりコントロールできます。領収証の取扱い次第で大きく節税になりますし、とりわけ個人用と事業用の境界があいまいな家事関連費でその差が出ると思います。

ただし税務署に領収書をきちんと認めてもらうには一定のルールがあるので、ちゃんとそのルールに基づいた領収書を発行してもらったり、領収書がもらえない場合は要件を備えた支払明細書を自作する必要があります。

飲食店経営者はしっかりと領収書に対する知識をもって実務に組み入れていただきたいと考えています。