食べ歩きが趣味である人は皆さんの周辺にもおられることと思います。通常のランチでもあちこちのお店を試し、営業などで普段とは違うエリアに行く予定がある時には事前にチェックしたり注目のお店に足を運んだり、国内でも海外でも旅行に行くとなれば間違いなく現地でおすすめのお店を徹底的にチェックし、滞在中の食事の機会をMAXに活用しきる・・・。
ちょっとやり過ぎじゃないか、などと傍から見ていると感じることもあるのですが、実はそういう食べ歩きが大好きな人は飲食店を経営する上でかなり有利です。
今回は、飲食店をオープンしてから繁盛店に上り詰めるまでの長い期間の中で、食べ歩きがお店の成長を後押しし得るポイントについてお伝えしてみたいと思います。
世の中には様々な業態、特徴、雰囲気、価格設定のお店がある
食べ歩きが好きな方々の中にも、通う頻度やバラエティなどにバラつきがあるものの、最低限の外食しかしない方々と比べれば圧倒的にいろいろな味を味わってきているし、お店ごとの雰囲気や特徴をリアルに体験し目を養ってきています。
例えばステーキのお店でも、輸入牛肉を効果的に利用して若年層をターゲットに安く提供しているお店もあれば、ブランド和牛などを利用し、高所得者層や企業接待などをターゲットにした高級志向のお店もあります。その他にも様々な組み合わせでタイプの異なる多くのステーキ屋さんが存在しています。
同じステーキを扱うお店であっても、対象となるターゲットや提供される肉質や味付け、店内の雰囲気、同時に提供されるアルコール商品の種類に至るまで、細かい部分で数多くの違いが存在し、それらは「各お店の特徴」として消費者は感覚的に認識します。
ステーキだけを見ても数多くの違いがあるのですから、他の多くの料理も含めれば、それこそ無数の特徴が存在していることが分かります。
普段から食べ歩きをしている方々は単に食いしん坊であちらこちらの味を堪能しているだけではなく、この「お店の数だけ存在する特徴」というものを圧倒的に体感してきているのです。
机上の空論では成功はない
飲食店経営はビジネスですので、事業計画が非常に大切です。それが基本中の基本であることは周知の事実です。
ですが、同時に「何をどう提供するのか」についても飲食店にとっての大事なコアの一つであり、それは立案した事業計画が実現できるか否かに大きな影響を与える重要な要因となります。
事業計画内の数字的なアプローチは確かに机の上であれやこれやと考えを巡らせることはできるのですが、それを実現する「何をどう提供するのか」に関しては、候補となる料理や提供スタイルをどれだけ体験して知っているのかが非常に重要なカギとなります。
食べ歩いて感じてきたことは生きたデータとなる
食べ歩きが好きでいろいろなお店に足を運んできた方々は、この「何をどう提供するのか」の部分のデータが蓄積できている理想的な状態です。これは非常に価値が高いことにお気付きでしょうか。
飲食関係のテレビ番組や雑誌、さらにはインターネットの口コミサイトなど、様々なお店の情報を得る手段は数多くあるのですが、それを読んだだけではそれほど意味がありません。
それらのお店に足を運び実際に体験する、これこそが価値ある生きたデータです。食べ歩きが趣味という方々は、この生きたデータを蓄積し、膨大なデータベースを日々構築していっているのです。
膨大な生きたデータはお店のポテンシャル
側面的な見方をすれば、ビジネスとは専門性の提供です。飲食店で言うならば、どれだけ美味しいものを知っているか、どれだけ飲食店での楽しい体験を知っているか、どれだけお得な価値を堪能してきたか・・・、これらの体験全てがその専門性のベースとなり得るわけです。
膨大なデータベースを持っていることは、メニュー選定や雰囲気のセッティング、その他オリジナルの特徴を企画する段階でも大きな力を発揮します。ありがちなお店とは一味違った何かをひねり出してお客様に強烈なエッセンスを感じてもらえる特別なお店になり得る可能性を秘めています。
特にメニューはオープン時に設定して終わりというわけではありません。新たなメニューを追加して更なるヒットメニューを模索すべきですし、ランチ用に特徴ある内容や新たな客寄せ目的のメニューを盛り込むなど、後から追加的に必要になってくるケースは次々に訪れます。
さらに、その貴重なデータが本当に活かされるタイミングは、何らかのネガティブな状況を打破しなければならない時です。提供してきた味や雰囲気、サービスがどうやら今一つ受け入れられてない状況下では当然ながら軌道修正が必要になるのですが、その時に、思いもよらないインパクトのある最善の一手を打つことが出来やすいという貴重なメリットも確保できるのです。
食べ歩くならオープン前しかない!
お店をオープンしてからは日々の業務に追われ食べ歩きに時間を割くようなことは基本的には出来にくくなります。ですので、オープンする前の準備期間中、さらにはお店をやろうと考え始める前の段階から食べ歩いて貴重なデータを蓄積しておいたことが非常に有意義で価値のあることだったと後から痛感することになるでしょう。
現在食べ歩きが趣味だという方は様々な観点からより多面的に各お店をフォーカスしていくことを意識されると一層有意義になっていきますし、飲食店の出店を漠然と考え始めた段階で特に準備らしいことはまだ何もしていない方々も、今のうちに様々なお店で生きたデータの蓄積をしておくことを強くおすすめしたいと思います。