【新進気鋭の若手飲食経営者シリーズ①】焼肉こじまグループ代表 児島雄太社長インタビュー(後編)マルチチャンネルで勝ち抜く経営戦略

1978年に大阪府羽曳野市にオープンしてから44年の歴史を持つ焼肉こじま。この地は焼肉激戦区とも言われており、その中でも人気の老舗です。先代が作られた店を19歳の時に受け継いだ児島雄太社長は、コロナ禍においても様々な戦略で拡大を続け、約1年で10店舗を出店するという快挙を成し遂げています。 後編では、コロナ禍においても1年強で10店舗を出店するという快挙を成し遂げた児島社長に、社員に対する想いや今後の展開と経営戦力について伺いました。


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記者)児島社長のSNSを拝見すると、「ストレスは何も生まない」だとか「負荷をかけることはやる気を削ぐだけだ」といった言葉を投稿されています。従業員としても、そのような考えを経営者の方が持っていらっしゃると働きやすいのではないかと思います。 

児島社長)従業員の定着率はいい方だと思います。弊社に入社をして辞めた人がいないと言ってもいいぐらいでした。去年まで離職は0人で、今年の5月に初めて、12年働いていた子と5年働いていた子が退職しました。

 

この子はトップダウンで物事を決めてあげた方が動けると思ったらそう接していましたし、また別の子は共感をしてあげた方が伸びそうだと思ったらそのように接していました。人によって、接し方を変えていたんです。おそらくそれもあって、各々が最善の状態でいられたから、長く在籍してくれていたんだと思います。

 

もちろんストレスは大切で、負荷がエネルギーにもなるんですが、かかり過ぎると人は潰れちゃうので、そのバランスを大切にしています。少ない人数でチーム作りをしているので、環境づくりは大切だと思っています。

 

これまでは長く一緒に勤めていくことがいい事だと思っていました。ただ、ずっと同じメンバーで仕事をしていると、新しい考え方というのが出てきません。今回、長く勤めてくれていた2人が辞めて、引継ぎが大変ではあります。ただ、ポストが空いたことによって空気の入れ替えができます。人は5年ぐらい同じところにいると、考え方が固まってしまいがちなので、次に入った人たちには新しいことをどんどんやってくれることを期待しています。

 

記者)児島社長のエピソードではと畜場で働いていたと聞いたのですが…。

 

児島社長)と畜場で働いていたと言っても1年だけです。21歳の時の話ですね。私がと畜場に行っていた時は、週3回、朝6時から昼まで働かせていただきました。もちろん、焼肉こじまをしながらですので、昼過ぎからは店舗の営業に入って、仕込みをするという流れです。とても辛かったですが、1年と決めていたので、その期間だけ乗り切って見せるという気持ちで働いていました。

 

と畜場での仕事は、始めの半年は内臓場に立って、2階から流れてくるせんまいなどの内臓を1階にいる私たちが拾って、ひたすら洗うという作業でした。流れ作業みたいな状態です。後半の半年は、切られたばかりの頭が流れてくるレーンから頭を受け取り、頬とベロを取るという作業です。

 

もう15年も昔の話なのですが、現場の人たちとは今も仲良くさせてもらっています。1年に1回ぐらい、ホルモンが少なくなってきた時に挨拶に行くんです。すると、「お前、そんな時だけ来るよな」とは言われるのですが、ちゃんと分けてくれますよ(笑)

 

記者)その時の経験があったからこその人脈ですね。と畜場で働こうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

 

児島社長)きっかけは、当時弊社で働いていた社員が怠け癖のある人がいたからです。その社員のことを変えたいと思った時に、人を変える前にまずは自分の行動を変えてみようと思いました。当時は朝5時起きで働き始めて、そのあとは店舗に移りそのまま夜までずっと働き続けるという生活でした。社長である私がここまでしているんですから、私に対して何も言えなくなるだろ、という負けん気根性が強かったかもしれないですね。

今は、当時の出来事を美化して、あの時があったから、今があるというように言っているんですけど(笑) でも、本当に人と人との繋がりはありがたいと思っています。

 

私のスタイルとして、言動よりも行動を見てもらって、そこから何かを感じて欲しいという想いがあります。このやり方で経営をしていって、徐々に仲間が増えていきました。アルバイトとして働いていてのちに社員になった人もいますし、私が23歳の時に法人化して社長になった時にアルバイトで採用した子が、今は店長を務めていたりもしています。

 

他にも、4店舗目の焼肉こじまのオープニングスタッフだった当時大学1年生の子が、弊社の社員になり、店舗立ち上げをいくつか経験してもらった後でFCの社長にまでなっています。その子は今、12店舗ぐらい立ち上げていますよ。私よりできる子だなって思っています(笑)

 

記者)児島社長はお若いですが、自らの様々な経験を経て、社員も育ててこられたのですね。

 

児島社長)飲食歴は長いですね。歴が長い割に、思ったような結果は全然出してないですが。社長になった当時は、若手経営者の急成長している飲食企業を指をくわえて見ていました。自分も30歳までに100店舗出したいなと。ただ、店舗を出すことが目的になってしまっていたので、ある時歪ができてしまって一気に状況が悪くなりました。いろんな環境変化もありますし、諦めずに堪えることって本当にきついんですよね。ずっと長く残っている飲食店って数えるほどしかないと思うので、飲食店経営の難しさを日々感じています。

 

ただ、あと一つ二つのエッセンスで爆発すると思っているんです。今まで苦労して蓄積してきたノウハウは絶対に活かせるはずです。それは、立地選びもそうですし、お店の完成度についてももうワンランク上にすることで大きな変化が生まれる可能性があると思っています。

 

どんどん新しい業態が出てきて、飲食企業の皆さんもチャレンジしていっているじゃないですか。それを見て刺激を受けつつ、昔ながらのやり方でコツコツ経営されている方々もいらっしゃるので、自分だけが苦しいわけではないと奮い立たせています。

 

記者)今後の展開については店舗展開が中心になるのでしょうか?それともFCを増やしていくのでしょうか?

 

児島社長)今後の展開については、店舗展開については先に話した通りです。ただ、店舗展開だけを中心にとは考えていません。たくさんのチャンネルを持って経営をしていきたいと思っています。

 

店舗での売り上げが下がった時でも、利益を確保できるようにネット通販を始めたり、お弁当の全国展開をしたり。駅弁や百貨店でお弁当の販売をしていこうと思っています。ただ優先順位はあるので、本部を構築しながら、タレとパッケージの開発を進めている段階です。その部分がそろそろできてきているので、あべのハルカスなどで販売をしてみて、実績がついたら新大阪での駅弁販売につなげていきたいと思っています。新大阪でも売れるという実績がつけば、次は東京の百貨店です。今後は店舗販売よりもネット販売の方がお弁当の売り上げの割合が高くなることもあるのではと思っていますが、店舗販売をストップさせることはありません。今はチャンネルを増やしていき、成長させていく段階だからです。選択と集中が必要だと思うので、それぞれの責任者を育てていきます。

 

もちろん飲食を中心に置くのですが、ネット販売での売り上げが良くなれば、加盟店に卸すこともできますし、店舗販売も売り上げが追い付いてくるようになれば、また他の展開も考えることができるようになるので、色々な種をまいていきたいと思っています。

 

このような考えに至ったのも、過去の苦労があってのことです。先ほどもお話しましたが、2021年の3月ごろはタンやハラミといった人気商品の原価はまだすごく安くて、それを低価格で提供しながら利益も出せるすごい業態ができた!と喜んでいました。しかし、現在タンの値段は2倍以上、ハラミも高騰して、人件費も上がって…。このようなことは、今後も大いに起こり得るし、潰れていく飲食店も増えると思います。それに耐え忍ばないといけないので、先手を打っていく必要があります。飲食をメインにしつつも様々なチャンネルを持っておくことや、店舗数を確保して損益を分担できる状態を作っていくことが今後重要になってくると思います。もちろん、商品開発などのやるべきことを一番に重点に置きながら、というのが前提です。

 

もう一つの展開としては、FCですね。FCのオーナーさんも随時募集していて、もっと増やしていきたいと思っています。

 

記者)FCでの展開はやはり大阪中心になるのでしょうか?

 

児島社長)大阪でも増やしたいですが、今はとにかく東京でもう2~3店舗は絶対に出したいと思っています。金町にオープンしたFCのオーナーさんは、今度田町にも出すことが決定しています。まだ他の場所でも試してみたいという私の強い気持ちがあるので、出店費用の半分、1000~1500万円くらいをこちらで出して、私たちのモデルで店舗出店してくれるオーナーさんを探しています。出店費用を投資したとしても、東京だったら絶対に回収ができるという自信があるので、そういった特別メニューを考えました。これは「ホルモンこじま」の方です。

 

焼肉こじまのFCも展開していきたいのですが、職人が必要になってくるため急速な出店は難しいところがあります。最短50日の研修でできますよ、とは伝えているのですが、この50日が長いと感じるオーナーさんが多いことも事実です。オーナーさんと店長さんは、やはり早く店を出したいと思っていますから。しかしこの研修をおざなりにしてしまうと、店をオープンしてもお客さんがつかず閉店に追い込まれてしまいます。私としては研修内容をさらに強化していって、満足度の高い店舗展開を徹底しようと思っているところです。

 

FCでの展開としては、100店舗を目指していますので、どの土地であってもFCオーナーさんは随時募集しています。