マーケットインとは、商品ありきではなく顧客ありきの販売戦略を示す言葉である。製品の企画開発段階から、生産・販売までのすべての流れで消費者の声を重視し、市場のニーズに寄り添った商品展開を行う考えのこと。飲食店の経営においても、マーケットイン的考え方は重要だと言える。顧客を重視し、顧客が「食べたい」と感じるものを提供することで、顧客の獲得につなげることができるからである。
現代の飲食業界は、ほとんどの分野において飽和状態となっている。顧客は膨大な数の店舗からどこかひとつの店舗を選び出し、利用することになる。店舗選択の理由として、「いま食べたいものがある=消費者のニーズに合っている」ということはシンプルかつ重要なものだ。
マーケットイン的考え方を重視して経営を行う場合には、店舗においてどのような顧客行動がとられているかを確認する必要がある。しかし、これはたとえば「人気のあるメニューを強化し人気のないメニューを淘汰する」と言った二元論的な見地で行うのではない。人気のあるメニューがなぜ顧客に選ばれているのか、人気のないメニューを選ぶ顧客は何を求めているのかといった顧客目線を持ち、検討する必要があるのである。
マーケットインに対し、プロダクトアウトという方法もある。プロダクトアウトとは、作り手が主体となった販売戦略のことである。作り手の考えに則り、顧客に提供するという考え方だ。マーケットイン・プロダクトアウトというふたつの考え方はしばしば対立するものと言われることもあるが、消費者のニーズと作り手の考え方が乖離してしまっては経営上の軋轢が起きかねない。どちらか一方のみを重視せず、バランス良く取り入れることが健全な経営につながると言える。