【M&A成約事例】次のステージへ想いを繋ぐM&A ~株式会社バンズダイニング×株式会社DCT.company~

2024年7月、東京日本橋を中心に居酒屋を運営する株式会社バンズダイニングと、埼玉を中心に焼肉屋を運営する株式会社DCT.companyのM&Aが実行された。今回は、両社の代表へ、M&Aに至った経緯や今後の展望について話を伺った。


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株式会社DCT.company 会長 髙山 嬢次 氏

「ねぎたん塩・焼肉・お食事 ジャン髙山」「タン・シャリ焼肉 たんたたん」など、埼玉県を中心に3店舗を展開。「一笑懸命」の企業理念には、DCT.companyに関わる全ての人が知り合えてよかったと笑えるため=スベテワミンナノエガオノタメニという想いが込められている。

―M&Aで会社の譲渡を検討した経緯をお聞かせください。

髙山)コロナなどの影響により、当時目指していた中長期目標の達成が難しそうだと感じてきたタイミングでM&Aについて考え始めました。

スタッフからの「どんどん出店していきたい」という声や、私自身も店舗拡大し、スタッフがより輝ける場を作っていきたいと思っていた一方で、思うように新規出店が出来ておらず、会社の今後の成長戦略に関して悩みを抱えておりました。

その際「自分は何が一番得意なのだろうか」と振り返ったところ、新しい業態、ブランドを作り上げていくという、ゼロからイチを生み出す部分が自分の強みだと再認識しました。

会社の現状を改めて考え直すと、もしかすると今の会社のフェーズであれば10を100に育てていくのが得意な経営者にバトンタッチした方がよいのではないかと思い立ち、会社を譲渡するという選択肢を考え出しました。

―具体的にM&Aに関して誰かに相談するきっかけなどありましたか?

髙山)我々のお世話になっている財務の先生が「もし髙山さんがM&Aについて少しでも検討しているのであれば、早めに動き出していた方がいい会社とマッチングできるのではないか」とM&A Propertiesさんを紹介してくれたのがきっかけです。

M&A PropertiesさんはM&Aに長けている会社だとは聞いていたのですが、初めて面談した際も、代表の中村さん自らご挨拶してくださいましたし、弊社の担当になってくれたアドバイザーも我々のスタンスに非常に寄り添ってくれる方でしたので、この仲介会社になら安心して任せられると感じました。

―M&Aに対して、当初はどのようなイメージを持たれていましたか?

髙山)初めは売った買ったのイメージが強く、大きな会社に吸収されてしまうといったイメージを持っていました。正直なところ、検討し始めた初めの頃はM&Aと言われてもピンと来ていなくて、「これまで一緒に頑張ってくれたスタッフはどうなってしまうのだろう」という心配や、M&Aのプロセスが良く分かっていないことによる漠然とした不安がありました。

―M&Aを検討するにあたり、どのような条件や相手方がいいと考えていましたか?

髙山)私がこれまで積み上げてきたものをガラッと変えるのではなく、それを引き継いで更に磨いてくれるところと一緒になりたいという想いが強くありました。

そのため、譲受候補企業へ打診をしていく際にもこの企業だったら今後スタッフがより生き生きと働けると思える企業にしか打診を行わなかったので、かなり厳選して慎重に進めていました。

―M&Aを進めていくにあたり幾つかの企業から提案がありましたが、バンズダイニング様と交渉を進めることにした理由をお聞かせください。

髙山)我々DCT.Companyが大事にしてきた理念と、バンズダイニングさんの理念が一致していたというのが非常に大きかったです。様々な企業の方と面談をしたのですが、バンズダイニングさんであれば同じ方向を向いて取り組めるという直観がありました。

また、ただ同じような会社というだけでは意味がないと考えていたのですが、バンズダイニングさんは我々の持っていない厳しいエッセンスを持ち、財務面の強さなど我々の持っていない魅力的な強みがたくさんあり、その点で、我々の存在価値との掛け算で更に成長していけるビジョンが描けたというのが大きな理由でした。

―元々髙山会長と塙社長は「居酒屋甲子園」で過去に接点があったとお聞きしていますが、そこも理由となったのでしょうか?

髙山)そこに関しては偶然が重なった部分もありまして、理念や考え方が非常に合致している会社を選定して話を進めていたら、その会社の代表がたまたま塙社長だった、という流れでした。同じ団体の仲間だったからこそ方向性が近かった部分もありますし、我々が1店舗~2店舗の頃から塙社長には可愛がっていただいていたので、とても印象に残っていました。

―M&Aの一連のプロセスを経験する中で、特に大変だったことはありましたか?

髙山)目立って大変だったことはなく、当初のイメージに近しい形で進められました。M&A Propertiesさんが常に伴走してくれて、先回りして様々なことを整理してくれたので、大きな不安もなく進めることが出来ましたね。

―今回のM&Aについて、従業員の方にお伝えした時の反応はいかがでしたか?

髙山)一般的なM&Aと比べるとイレギュラーな形ではあるのですが「クロージング前にスタッフに会社を譲渡すことを伝える」というプロセスを踏むことにしました。当然リスクも大きいのですが、「こんな明るい未来が待っている」ということをスタッフの皆に事前に伝えておきたいという想いが強くあり、先んじて伝えることにしました。

これからバンズダイニング様と一緒になることで、今抱えている悩みが解消され、わくわくするような未来が待っているんだということを堅苦しくならないようにスタッフの皆に話したところ、ポジティブに受け入れてくれました。

当然まだ困惑している部分もあると思うのですが、そこは焦らず、ゆっくりとバンズダイニングさんと一緒に進んでいけるといいなと考えています。

―髙山社長と同様の悩みを抱える経営者の方へ、M&Aの経験者として何かメッセージをいただけますでしょうか。

髙山)M&Aを実際に実行するか否かに関わらず、1度やることをイメージしてみるといいと思います。

自分自身と会社のことを棚卸するいい機会になりますし、「本当にこれはやりたいことなのか?」「何年後にどうなっていたいのか?」「そのためにどうしていくのがいいのか?」というのを自問自答していくと、自然と自分の得意なことや不得意なことが見えてきます。

そもそもM&Aが何なのかをよく知らない方も多いかもしれませんが、「自分の不得意なところは得意な方にバトンタッチしていく」という選択肢が存在していることをぜひ知ってほしいですね

もし上手くいくか分からなければ、気軽にM&A Propertiesさんに相談してみてください。伴走してくれる方がいるのは心強いですし、苦しい時に一緒に頑張ってくれるようなアドバイザーの方が揃っていますので。

株式会社バンズダイニング 代表取締役社長 塙 良太郎 氏 

―どのような経緯でDCT.company様をグループに迎え入れることをご決断されたのでしょうか?

塙)単純なのですが、非常にいい会社だと感じたためです。髙山社長は非常に堅実に事業を展開していて、とても手間暇をかけ、愛情深く従業員を育てている方でした。

私自身も人との関わりが好きで飲食をやっているのですが、DCT.companyさんとバンズダイニングはとても似ているアイデンティティを持っていたので、そこが決め手になりました。

髙山社長とは「居酒屋甲子園」を通じて元々知り合いだったのですが、経営されている店舗を視察した際、居酒屋甲子園で培った理念がスタッフ全員に浸透しているのが伝わってきて、M&Aも安心して進められました。

また、企業の理念が近しいだけではなく、牛タンなどのメインの商材が近く親和性が高いという点も後押しになりました。ただ一緒なだけではなく、それぞれの会社に違った強みがあるという点も大きく、両社が融合することで絶対に良くなるという確信がありました。

―DCT.company様の従業員と初めて対面した際には、どのような話をされましたか?

塙)髙山社長が事前に受け入れる体制を作ってくれていたので、とても歓迎されました。「居酒屋甲子園という同じルーツをもった仲間の会社なので、大切にしている想いは同じです」という形でお伝えしたところ、とても自然に打ち解けることができました。

―同グループとなったDCT.company様との取り組みについて、既に行っていることや今後想定していることをお聞かせください。

塙)まずは早く1店舗出店したいですね。その後もコツコツ進めて、1年間で1~2店舗ずつ出店していきたいと考えています。従業員の働き方についても、改善できることがまだまだあるので、少しずつ着手していきたいです。

また、我々にはこれまで焼肉業態のスペシャリストはいなかったのですが、DCT.companyさんのエッセンスを取り入れることで、更に良くしていきたいです。

DCT.companyさんと一緒になったことで、焼肉に関する人的資源やノウハウが手に入ったので、居酒屋・焼肉の二本柱で今後もやっていく予定です。M&Aについても、この二本柱を更に伸ばしていけるような形で今後も進めていきたいです。

―最後に、今回のM&A全体を振り返った感想をお聞かせください。

塙)「感謝」の一言に尽きます。髙山社長にも、従業員の方にも、仲介をしてくれたM&A Propertiesさんにも感謝しかありません。我々の従業員もとてもやる気を出しています。

今回仲介をしてくれたM&A Propertiesさんは非常に暖かい会社で、他のエージェントと比較しても非常にいい印象を持ちました。譲渡企業と譲受企業では気を遣うところが異なりますし、板挟みのようになってしまうこともあり得ますが、頑張って双方の味方であろうとしてくれているのが伝わってきました。

髙山)M&Aはゴールではないと思っていて、ここからが一番重要だと考えています。私自身もまだ残ることになっているので、「今後に向けたいいスタート地点に立てているな」という気持ちでいます。