株式会社鳥貴族ホールディングス 代表取締役社長 大倉忠司氏インタビュー(後編) ~「グローバルチキンフードカンパニー」を見据えた経営戦略~

後編では、アフターコロナにおける鳥貴族の取り組みや、ダイキチシステム社とのM&Aについてお話を伺いました。


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―コロナ禍はどのようなことを考えて会社を経営されていましたか?

まず前提として、アフターコロナで好調な企業はコロナ前でも好調な企業であると考えています。コロナの影響も非常に大きいですが、必ずしもコロナだけが業績に影響を与えている訳ではないんです。その上で弊社がコロナ前にどのようなことをやっていたかというと、そもそも当時は出店する度に赤字店が続出するような出店ありきの状況だったため、2018年に新規出店を凍結するところから動き始めました。

それと同時に徹底的なコストダウンを実施し、担当が嫌がるような「聖域」になっている部分にも切り込んで、今までお取引している会社さんにも「申し訳ないけどコンペさせてくれ」といった形で経費削減を図りました。

―鳥貴族の今後の展望についてお聞かせください。

東名阪でドミナント戦略を取った後、全国展開をしていくという当初からの戦略は変えずに進めていく予定です。福岡・仙台の出店はコロナで延期になったのですが、元々コロナ前から計画はしていて、それを今着実に進めています。2030年には直営・FCを合わせて1,000店舗を目指して動いています。

―「TORIKI BURGER」や「トリキの焼鳥惣菜」などの新業態は如何でしょうか?

「TORIKI BURGER」は、アルコール業態だけでは会社の基盤が弱く、コロナのような感染症の影響を受けたときにやっていけないと考え、元々コロナ前からやりたいと思っていたものを始めた形になります。

「トリキの焼鳥惣菜」については、焼鳥の将来性・可能性をまだまだ感じていまして、焼鳥に関する販売チャネルの更なる拡大としてスタートさせました。直近で提供した百貨店での反応も非常に良く、いずれ展開できるように持っていきたいと考えています。

―海外展望についても既に検討を進められていますか?

海外向けの業態開発を進めていて、フードコートで提供する商品を開発しています。どうしても、従来の鳥貴族だけでは出店に結構時間が掛かってしまうので、早期に展開できるフードコート業態で海外は攻めていこうと検討しています。

また、一番大きなところではアメリカへの展開を考えています。場所も具体的に決まっていて、鳥貴族の業態をローカライズしつつで上手くやっていければと思っています。その他にも、台湾・香港をはじめとした東アジアへの展開も進めていまして、それぞれの国の事情によって直営なのかフランチャイズなのかは分かれますが、それぞれの国の考え方を重視してやっていこうと考えています。最終的には東南アジアや、中国本土にも広げていくという構想です。

―「エターナルホスピタリティグループ」という社名への変更を公表されていますが、変更の理由についてお聞かせください。

グローバルカンパニーを目指すというところで、海外にも受け入れられやすい名前を念頭に置いています。「エターナル」については、創業時からの理念である永遠の企業にしていくという想い、「ホスピタリティ」については、英語圏での飲食企業との親和性の高さからそれぞれ名付けました。また、今後色んな会社・屋号のお店が仲間になっていくことを見据えたときに、「鳥貴族」という屋号を外した方がグループになりやすいだろうと考えました。

―2023年1月にダイキチシステム社を子会社化されましたが、グループ化される以前はどのような印象をお持ちでしたか?

私の師匠が「やきとり大吉」の出身でしたので、元々「やきとり大吉」のDNAは私も持っているんですね。私が20代の頃からどんどん成長を遂げていて、凄く大きな存在でした。 当時から「やきとり大吉」は200店舗近く展開していて影響力があったので、逆に私自身は同じことをやる必要はないと考えていました。「やきとり大吉」が中高年の男性が客層の中心であるなら、自分は新しい市場を作ろうという想いで若者・女性客を狙っていったというのもあります。

そのような意味でも、非常に縁のある会社だと思っています。最高店舗数で1,100以上展開しており、焼鳥をこれだけ市民に広めてくれたという凄い存在であり、憧れもありました。

―M&Aに至ったきっかけをお聞かせください。

元々漠然と「一緒に出来たらいいな」とは思っていました。客層に関して棲み分けが出来ていましたし、「やきとり大吉」の店主は全てフランチャイズでチェーン店のスケールメリットをあまり享受できていない一方、我々のグループに入ってくれれば様々なスケールメリットを提供できるため、お互いwin-winな関係性になれるという点から具体的に検討を始めました。

―2023年の1月にグループ化を公表されていますが、いつ頃からM&Aの検討を始めたのでしょうか?

2020年の1月に担当の部長と1対1で話をしたのがスタートで、コロナの影響で少し様子を見る形になりました。本格的に進め始めたのは2022年以入ってからになります。

―大倉社長にとって初めてのM&Aとなりましたが、実際に体験された印象をお聞かせください。

まず1つに「時間を買った」という感覚があり、もう1つに「人的資源を買った」という感覚があります。昨今は人手不足が深刻化していますし、その点でM&Aの後も「やきとり大吉」の方が皆さん残ってくれたので、非常にありがたかったです

―ダイキチシステム社をグループに加えたことにより、どのようなシナジーが生まれましたか?

当初はサプライチェーンにおけるスケールメリットの点も考慮していましたが、グローバルチキンカンパニーを目指す中で、「鳥貴族」と「やきとり大吉」が一緒になったということ自体が焼鳥業界に大きなインパクトを与え、一大焼鳥グループとしてブランド力が大きく向上したのを実感しています。

―グループ化後の社内文化、待遇、システムなどを統合していく上での苦労はありましたか?

事前に想像していたよりも非常にスムーズに進んだので、そこまで大きく苦労はしていないです。ダイキチシステムの方から「鳥貴族の社員はいい人が多い」と言っていただける機会がとても多くて、上から目線でものを言うような人がいないというが1番大きかったと考えています。バリューである「TORIKIWAY」が社員に浸透しているのを感じ、私としても嬉しかったです。

―ダイキチシステム社の今後の成長イメージについてお聞かせください。

現在は店主や社員の高齢化が進んでいるので、フランチャイズ展開・加盟店募集について見直しを図っています。我々からすると、ダイキチシステムの加盟店募集のやり方はもっと工夫できると感じていて、意識改革も含めて様々な提案を行っています。

―今後のM&A戦略について考えていることはありますか?

今も様々な焼鳥屋の店主と交流していますが、鳥貴族と棲み分けできるような焼鳥チェーン店があれば興味はありますね。また、直近では考えていませんが、1からの海外出店だと時間がかかるので、例えばアメリカの企業とのM&Aといった話は将来的に検討する可能性はあります。

―最後に、ダイキチシステム社を含めた鳥貴族ホールディングスの将来の展望をお聞かせください。

鳥貴族はこれまで日本で大衆市場という形で広まってきましたが、今後はよりハイエンドな焼鳥店なども含め、様々な形で国内・海外への展開を検討しています。

例えば、私はこれまでミシュラン系の焼鳥屋に行くことはあまりなかったのですが、ダイキチシステム社のグループ化によって交流が増えましたし、店主の方から「やきとり大吉が業界に入るきっかけだった」「やきとり大吉を自分にもやらせてほしい」といった声を頂くことも出てきました。中には、「何か協力出来そうなことがあれば是非やりましょう」と直々に言ってくれる店主もいまして、そのぐらいやきとり大吉の存在は大きいのだと改めて実感しました。

ミシュラン系の焼鳥屋の方々とは、今後コラボして海外展開を進めることを検討していますが、間違いなくこれはダイキチシステム社が我々のグループに入ってくれたおかげであると考えています。

新しい展開については、今後面白い話をお伝えできる機会もくるかもしれないので、是非楽しみにしていてください。