GYRO HOLDINGS 株式会社 代表取締役 根本寿一氏×株式会社ヴィクセス 代表取締役 中元孝太氏インタビュー(前編) スピード M&Aが成功した理由

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根本社長のご経歴を教えてください。

元々中目黒で割烹料理の個人店を経営していました。
その頃にレインズインターナショナル創業者の西山知義さんと知り合い、2000 年にレインズへ入社。新業態の開発や商品開発、調達といった食材に絡む仕事に携わり続け、グループである調達会社のコスト・イズの社長を経てレインズの代表を 5 年ほどやらせていただいた後、2021 年 12 月に GYRO HOLDINGS の代表取締役に就任しました。

なぜレインズから GYRO へと活躍の場を移されたのでしょうか。

個人店を経営していた頃は、自分の能力では広げても 3 店舗くらいが限界だと思っていたんです。ところが、西山さんと出会い多店舗展開の楽しさを知り、1,200 店舗くらいのチェーンオペレーションを経験させてもらいました。これはすごくいい経験で楽しかったのですが、一方でマーケットがどんどん変化していく中で、組織の規模が大きくなるにつれて自分たちがやりたいと思っている企画や商品開発が難しくなっていく歯痒さを感じるようになりました。メリットをデメリットが上回るようになってきたんですね。

そんな折にコロナ禍が発生。代表として一日中コロナへの対応を余儀なくされました。大きくチェーン展開している企業でしたので、対応しなければならないことが本当に多くて。顧客に向き合い、新業態開発や調達/商品開発にもっと力を入れていきたいと考えていましたが、それが難しくなったことを悟り、対応が一段落したタイミングで GYRO へと移りました。

なぜ GYRO HOLDINGS を選ばれたのでしょうか。

もう一度飲食店としてのあるべき姿、の展開に取り組みたいと考えたのが一番の理由ですね。GYRO は店舗数が多い割には、個人店のやり方が色濃く残っています。チェーンとしての動き方は難しくても、個店の強さがある。強さというのは、スタッフのお客様に対する姿勢、料理への思い、そして店舗単位で利益ベースに乗せようという商売感覚といったものです。それを各店舗から感じられて、面白そうだなと思ったのです。

一方で、200 店舗から 300 店舗、500 店舗と数を増やしていく段階においては、チェーンのオペレーションが重要になっていきます。それぞれが持つ個店の強さに、チェーンの経営効率を掛け合わせ、両方を併せ持った新しい外食チェーンを目指せるのは GYRO の強みだと思っています。

GYRO HOLDINGS に大きな魅力を感じたことがよくわかりました。実際に経営に参画してみていかがでしたか?

M&A を軸としているにもかかわらず、経理周りを含めた管理が出来ているなという印象を持ちました。一般的な個人店では、コロナ禍で厳しい思いをした店舗が多くあった中で、GYRO はM&A 戦略からくる個別企業の強みとチェーンとして両者を生かした経営が出来ていました。それに留まらず、ファンドの支援を受け次のステージを目指していける体制もあると思いました。

ありがとうございます。
ではここで、6 月に GYRO が株式会社 ESOLA(エソラ)の完全子会社化を発表した件について詳しく教えていただきたいと思います。この M&A の背景にはどのようなきっかけや狙いがあったのか、中元さんにお伺いしたいと思います。以前インタビューにお答えいただいた際(https://naciel.jp/interview/viccess_1/)は、ダルマプロダクションを買収し、その後について模索中だったと記憶しております。

そうですね。ESOLA の売却を考えていたのは、ちょうどインタビューを受けていた今年(2023 年)の 1 月末から 2 月頭くらいです。昨年の秋口から年末にかけて徐々に数字が伸びてきたと思っていた矢先にコロナがまた盛り上がってしまい、年末は乗り切れても 1 月以降は厳しいと感じていました。

どうしてもコロナの影響で店舗の PL や BS に不安な部分がありました。10 年以上続けてきた歴史もありますし、ヴィクセスを慕って集まって来てくれたメンバーが多くいたため、厳しい状況でも潰すわけにはいかない。どうにか切り抜けなければならないという中で、1 店舗の利益を伸ばすには限界があります。そこで出た結論が、自分の持っている経営資源を切り離して、選択と集中をする、ということです。

主力事業の ESOLA の売却にはかなり悩まれたと思います。対象に選んだ理由を教えていただけますか?

創業ブランドともいえる ESOLA を切り離すのは重大な決断でしたが、今後ヴィクセスが広げられる出店に限りがあるのは ESOLA だと判断しました。焼肉事業は約 1,000 万円で出店できるのに対し、ESOLA は 2,000 万円はかかってしまいます。また、僕らにはフランチャイジーを集めるノウハウが乏しいため、ESOLA を僕らの力で広げていくのは限界だろうと考えました。きっと違う方々とパートナーシップを組んだ方が、まだ成長の余地があるだろうと思ったのです。

もう一つの背景として、コロナ禍で ESOLA は地方出店し多くの方に喜んでいただけたということがあります。業界全体で見ると一見レッドオーシャンである業態でも、立地を選べばまだ展開の余地はあるのだと確信を持ちました。ただ悔しいことに、成功の見込みがある場所があったとしても、自分たちで実行することは難しい。売却はその問題解消の手段でもあったのです。

売却先の検討を始めようかという頃に、GYRO 取締役の中村英樹君と飲む機会があり、ESOLA の売却を考えていると相談したんです。その翌日に改めて具体的な方針を相談し、根本さんに話を持っていって欲しいとお願いした、という流れです。

根本社長はこの話を受けたときにどのような感想をお持ちになったのでしょうか。

少子高齢化が進みつつあったり、コロナによってリモートワークが加速したりと、様々な環境変化がある中で、GYRO の 5 年先の事業戦略を考えたときに、和食と洋食を両方持っておく必要があると思っていました。以前は焼肉と居酒屋を強化して行こうと思っていたのですが、いずれもレッドオーシャンになってしまっているのと、地方で展開していくことを見越した時に居酒屋や焼肉の加盟店が集まるという見込みも中々厳しくなっているなと感じ始めていました。それに対して、洋食は需要があってチャンスがあると考えていました。だからこそ、M&A の案件は和食または洋食の業態で、地方展開している先を探そうと考えていました。

中村君ともそうした考えは共有していましたので、中元さんから話をいただいた時にすぐに連絡をしてくれたんだと思います。実際に代々木上原の ESOLA を見にいってみましたが、率直に「これはいいな」と思いましたね。私が求めていた条件に当てはまっていたのです。若い人にも居心地と使い勝手のいい店ですし、40代以降の方でも楽しめそうだと感じました。というのも、すでに人口動態が高齢化に向かっていますので、都会に出てこない人の割合が上がり、地方郊外に 60 代 70 代の方が増えていきます。そうした年代の方々にとっての洋食は、焼肉やとんかつよりもご馳走だと感じている人も多いと思います。ファミレス以上居酒屋未満のようなイメージです。ESOLA のスケールはまさにビンゴでしたので、即答で「やろう」と言いました。

GYRO の戦略と ESOLA の戦略が合致したんですね。

売上が小さくても、地方できっちり利益を出せる業態であったのが大きかったですね。ある程度限られた人数でも利益を十分に確保できるという点が、M&A に踏み切る最終的な決め手になりました。

お話が持ち上がってから M&A の発表までの期間はかなり短いように思えます。

僕は初めて売る側の立場になりましたが、早いですよね。2 月に話をしてから 6 月に着地したので、期間は 3~4 ヶ月程度でした。デューデリも入れましたが、根本社長が信頼して下さって、あまり厳しい要求はありませんでした。

これまでは買う側でしたが、売る側になって感じるものはありましたか?

寂しさもありましたが、今後への期待の方が大きかったですね。僕は、50 店舗、100 店舗を出せる業態を目指して ESOLA を創業しましたが、狙い通りにうまくいかなくて。上手くいったり失敗したりを繰り返したこの 10 年を振り返って、自分の得手不得手、ヴィクセスの強み弱みがやっとわかってきたんです。

ESOLA に関しても、自分ではこれ以上拡大できないと認めました。それによって GYRO のグループになって店舗数を増やし、世の中に安くて美味しいワインが飲める店があることを広められる可能性が見えてきました。それは僕たちの元々の願いでもありますので、この M&A はポジティブに捉えられていますね。むしろこれから ESOLA がどんな形で伸びていくのか楽しみです。

かなりスピーディな M&A になりましたが、2 社間に意識のズレのようなものはありませんでしたか?

常にすり合わせとコミュニケーションを一緒にやってきましたので、幸い大きな問題はありませんでしたね。場所を変えながら社員のメンバーの方と顔合わせをしつつ、コミュニケーションを取ってきましたので、1 ヶ月ほどで十分すり合わせはできたと思います。もちろん細かいところは多少あるとは思いますが。

実際に、社員からの不満も離脱も全く無いんですよ。ESOLA の商品開発に関わっていたメンバーは、すでに GYRO 側の商品開発も始めていますね。事業領域は明らかに広がっていますが、本人もポジティブな姿勢で取り組んでくれていますし、本人の成長にも繋がっていると思いますね。

僕自身としても、根本社長に従来からの ESOLA の文化やスタンスを尊重していただけていると感じています。お互いの強みを尊重しあえていますね。従業員管理も従来の方法を継続しているので、社風や個人の仕事内容のキャッチアップしていただけていると思います。他の M&A との比較はできませんが、やはり人同士の関係に影響されるのかなと思います。

また、ESOLA は 3 年間出店をストップしていましたが、M&A 直後に新店の話が動き出したことからも、社内にはよい状況が伝わっているのではと思っています。

難しいと思われがちな M&A ですが、非常にスムーズに進んだ事例ですね。

後編へ続く