株式会社ヴィクセス 代表取締役 中元孝太氏インタビュー(後編) 失敗を乗り越えた先に見えた企業の新しい在り方

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記者)ここまで、事業は順風満帆のように見えますが…。

中元氏)実は結構失敗もしているんです。自己評価では40勝30敗、よくてもプラマイゼロくらいです。飲食店以外に美容室も出したことがありますが、閉店しています。
2016年からは、子供が喜ぶ仕掛けや和牛を安価で提供するロードサイドの焼肉屋として「流れ焼肉WONDER」2店舗を、その後に、新宿で繁盛している焼肉バルをベンチマークして、ESORAが得意とするワインの要素と焼肉を組み合わせた「mEatEsola」を田町、中目黒、川崎で出店しました。しかし、客単価5~6,000円の焼肉屋はみんな失敗してしまったのです。当時は競合に勝てると思っていたのですが、ロードサイドの焼肉店は知名度がなければ勝負できず、どんなに繁華街で成功している業態だったとしても、高単価では戦えないと思い知りました。

記者)その経験が今、肉流通センターで生きているように感じます。

中元氏)そうですね。2017年から始めた肉流通センターは、まさにロードサイドの失敗を踏まえ、客単価は3,000円前後です。賃料が低いエリアに出店し、ローコストを価格に反映させて集客をかけています。低価格の焼肉屋は、安かろう悪かろうのイメージがついてしまっているので、そこは払拭したいと考えていました。肉の質にはこだわって、安くても美味しくてお腹いっぱいになるというコンセプトを基に、私自身が家族連れで週に2回行きたいと思える店を作ろうと思って、肉流通センタ―をやっています。反省が生きたいい業態になっていると思いますよ。

記者)今はコロナ禍も乗り越えて、現在はいかがですか?

中元氏)全然越えられていないですよ。もちろん利益は出ていますが、大企業と違って純資産がないわけですから、財務戦略も考え直さなければなりません。今は出店のフェーズというよりは、企業の体力をつけることが最優先です。

社員も即戦力を採用するのは厳しくなっていて、アルバイトが活躍できて、利益を生みだせる仕組みを構築しているところです。

記者)反省といえば、地方への出店も強化されていますね。

中元氏)都内に何店舗か出しましたが撤退も多く、正直1,000万円の保証金を積んだ賃料100万円の店で勝てるイメージが沸きませんでした。勝てる出店先を考えたとき、やはり長岡を原点とした地方に行き着いたんです。

記者)2019年にESOLA鳥取駅前店がオープンしました。なぜ鳥取を選んだのでしょうか。

中元氏)元々出店するなら中国地方か四国地方と決めていました。これらのエリアは、居酒屋はあっても洋系の飲食店は全くといっていいほどありません。鳥取なんてピザ屋なんなく、ドミノピザやピザーラすら知られていないほどでした。

ちょうど鳥取駅前に賃料が安い物件が見つかったので8月オープンしたところ、12月には売上が600万円を超え、200数十万の利益がでるほどのヒットとなりました。その後は米子、岩国、松江、徳山、宇部新川に出店しています。

記者)出店に慎重な姿勢から一転、一気に出店を進めたのは賃料の安さが理由でしょうか。

中元氏)洋系の飲食店がないエリアであったのと、おっしゃるとおり賃料が安いのが大きな決め手になりました。米子は月500万を売り上げるほど好調でしたが、残念ながらコロナで打撃を受けて閉店してしまいました。徳山も閉店していますが、初期費用が低いのもあり赤字幅は非常に小さく済みました。地方はコロナの影響が長引く傾向がありましたが、最近はようやく落ち着きを見せてくれています。昨年の10月以降は全店が黒字になりました。

記者)それだけ調子がよければ、さらに地方戦略に力を入れていきたいですよね。

中元氏)本当は力を入れたいのですが、今はまだ体力をつけている段階なので様子を見ながらですね。都内や仙台、広島などの大きな地方都市ではなく、もう少し規模の小さな地方都市で広げていきたいと思っています。

地方に現調にも行きますが、どんどん人が減っていることを実感します。せめて、飲食店などのサービス系が動かないとなくなってしまうのではないかという危惧もあります。

記者)そうした地方進出を進める中で、2020年にはダルマプロダクションをM&Aされました。このM&Aのきっかけは何だったのでしょうか。

中元氏)前株主より声を掛けていただいたことがきっかけで、これを機に上場したいという想いもありました。私は新しい業態を作るのはとても得意なんですが、商品開発が弱いんです。その点、ダルマプロダクションの古賀慎一社長はCONAで商品開発をされていたので、私がやりたいと思ったものを一緒に実現してもらえるんじゃないかと考えました。業態も同じイタリアンということで、シナジーが生まれることにも期待していました。

記者)弱点を補完してもらえる期待があったということですね。

中元氏)そうですね。現に最近オープンした食堂、パン屋、八百屋は、私が古賀さんにやりたい業態やコンセプトを要望として伝えて、ダルマプロダクションに作ってもらうという流れで生まれました。最終的にはインスピレーションで決めたM&Aでしたが、大きな力になってもらえていると思います。

記者)今後もM&Aには積極的に取り組みますか?

中元氏)ダルマプロダクションとのM&Aは成功していますが、今のところは新しい買収は考えていません。
私が考えた業態を売っていくM&Aであれば、効果的でないかと思っています。“流れる焼肉”は一度失敗こそしましたが、今ならウケる業態だと考えています。私が考えた案を大企業が実現し、ダルマプロダクションが一緒に商品開発していくのが面白そうですね。

記者)新規業態を大企業と共に実現していくイメージでしょうか。

中元氏)その選択肢も十分考えられます。自分の得意なことを考えた時に、私は新しい業態で20店舗は作れても、100店舗は難しいんです。なのでその80店舗は大企業にやってもらえるようなスキームで関わるのもよいと考えています。売上を伸ばすためのM&Aではなく、自分たちの得意なことをやるためのM&Aです。今もいろいろやりたい業態のアイディアはありますが、今の会社の体力では難しいものも多いので、誰か一緒にやってくれないかなと考えています。

記者)結果的にコロナ禍でのM&Aということになりましたが、率直なご感想をお聞かせください。

中元氏)デューデリジェンスや財務資料も拝見しましたが、状況が状況なので全く当てにならないんですよ。想定していたものと乖離がなかったかと言えば嘘になりますが、それはお互い様ですからね。

コロナ禍で2年半以上を過ごしてきて、やっと動き始めたタイミングです。ここからはもっと収益改善に取り組んでいこうと考えています。

記者)フランチャイズ展開はどのようにお考えでしょうか。

中元氏)ESOLAは現在新宿店と吉祥寺店がFCです。都内、地方を問わずお話があれば展開していきたいと考えています。肉流通センターはヴィクセス管理のFCのほか、私が半分株を持っているTWENTY NINE社が管理するFCもあります。どちらで展開しても会社にとってメリットがありますので、お声がけいただいた方で対応しています。業態もかなり洗練されてきていて、売り上げも好調です。ESOLA、肉流通センターのいずれかに興味がある方は、ぜひお問い合わせいただければと思います。

記者)最近だと、業態のM&Aが話題になったことが記憶に新しいですが、御社でも一事業を売却するようなことも選択肢としてあるのでしょうか?

中元氏)業態づくりを得意としているので、選択肢としては大いにあります。ドリンク29円、1,999円のワイン飲み放題でアイドルタイムの売り上げを取ることに成功しているので、新業態の可能性は十分にあると考えていますが、20店舗くらいまでは展開できてもそれ以上が難しい。業態開発とは別軸で、立地と資本は中小企業だとどうにもならない面があります。だからこそ住み分けをして、20店舗のその先を大きい企業に拡大してもらうという戦法もあると考え始めているところです。絶対に当たる確信のあるアイディアがたくさんあるので、大企業とそのような関わり方ができればと思っています。

記者)地方への進出、新業態のM&Aと、いろいろなお話を聞かせていただきました。今後の目標を教えてください。

中元氏)ヴィクセスはミッションに「地方創生」を掲げています。コロナの影響もあり、地方の飲食店は閉店が相次いでいます。食事をする店や働く場所が無くなってしまうと、地方からはさらに人がいなくなり過疎化が進みます。地方の生活を支えるには、まずは飲食店が頑張らないといけません。「ひと」「もの」「しごと」が充実した豊かな地方都市作りをお手伝いできるような出店を目指します。今後は岡山や四国、九州への出店を計画中ですが、それ以外のエリアへのFCも大歓迎ですので、ぜひ一緒に地方を盛り上げていただければと思います。

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