【M&A成約事例】自社の知見を活かすM&A ~積み重ねた信頼関係で描く成長戦略~ ひいらぎホールディングス株式会社 代表取締役会長兼社長 柊崎庄二氏

外食・食物販事業を中心にブライダル事業など幅広く事業を手掛けているひいらぎホールディングス。ホールディングス全体での総店舗数は233店舗に及び、グループ会社のイートスタイルは「サーティワンアイスクリーム」「久世福商店」など154店舗を展開するメガフランチャイジーでもある。(※店舗数は2024年12月時点) 2023年12月には、CLSA キャピタルパートナーズがアドバイザーを務める Sunrise Capital IV(日本企業特化型投資ファンド、以下サンライズキャピタル)からの資本参画を受け更なる成長を遂げているひいらぎホールディングスは、2024年7月に生パスタブランドの「ポポラマーマ」との資本業務提携を実行し、同ブランドをグループの傘下へと迎え入れた。 本記事ではグループの創業者であり代表取締役会長兼社長の柊崎庄二氏から、ひいらぎホールディングスの事業戦略や2024年度におけるM&Aの経緯を伺った。


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柊崎さんが事業戦略の中で重要視していることを教えてください。

柊崎)会社にしても店舗にしても、一番は「人」を重要視しています。快適に働ける職場環境を整備することをはじめ、従業員・スタッフが働きやすくなるための試行錯誤を積み重ねてきました。

例えば、過去にサーティワンアイスクリームの店舗改装で、通常実施するお客様に見える部分だけではなく、バックヤードの部分の改装もセットで実施するようにしました。お客様に対しての改装は当たり前にやることですが、表が綺麗だったとしても裏が古いままで手を加えられていない状態だと、落差が生まれてしまいスタッフが気持ちよく働くことが出来ないですよね。結果としてこの取り組みはスタッフからの反応が非常に良好で、今ではサーティワンアイスクリームの本部施策として全国に広まっています。

私は創業当時から人との出会いや縁を大事にしてきて、縁ができた人たちにどのような貢献ができるのかをずっと考え続けてきました。店舗数や規模を拡大するというのは、その結果としてついてきたものだと考えています。

これまでのご自身の経験の中で、人や縁を大事にするようになったきっかけがあるのでしょうか?

柊崎)最初は飲食業界での経験が全くなかったので、業態として魅力を感じたサーティワンアイスクリームのフランチャイズに加盟するところからスタートしました。半年間で3店舗を出店したのですが、人材不足などの影響もあり、立地を見る目も甘く、2店舗が赤字になりました。最終的には1店舗は閉店し、もう1店舗は譲渡しました。

通常、フランチャイズの立ち上げは最初が非常に肝心で、そこで失敗してしまうと次に進めないケースがほとんどです。ただ、それでも私がサーティワンを続けていきたいと思えたのは、本部の役員や社員の皆さんとの信頼関係があったからこそでした。業績が苦しい中でも真摯に向き合い支えてくれたからこそ、「この人たちの信頼に応えたい」という想いで再出発し、地域を変えて出店を続け、そこから徐々に上手くいくようになりました。

ビジネスは必ずしも上手くいくときばかりではなく、厳しいときもたくさんあります。私自身が厳しいときに信頼関係に助けられた経験があるからこそ、目の前の人を大事にしなければならないと強く感じていますし、その経験から現在の経営理念も培われてきたのかなと。

ひいらぎホールディングスの強みを教えてください。

柊崎)一言で表現するのは難しいですが、ひとつひとつのお店を大事にしてきた結果、有形無形の様々な強みを積み上げてこれたと感じています。最適化された営業オペレーションや、組織としてのまとまり、良好な関係性などは、言葉で表現するとありふれたものに聞こえますが、簡単には実現することが出来ません。これらを文化として根付かせられているというのが、我々の何よりの強みかもしれません。

ひいらぎホールディングスとしての、今後の出店計画についてお聞かせください。

柊崎)元々は九州を中心にドミナント展開をしてきましたし、今後も九州への出店は続けていきます。また、今後は九州以外の関東以西や、更には日本全国に出店を広げていきたいと考えています。どのブランドを広げていくか、どのようなプランを組んでいくかという戦略部分に明確なこだわりがある訳ではありませんが、我々のノウハウが最大限活かされるような形での出店を進めていく予定です。

また、長期的には海外展開も視野に入れています。食のプラットフォーマーとして、日本の食文化を海外に広げていくというチャレンジをしていきたいですね。

ひいらぎホールディングスは、過去に複数回のM&Aを実行されています。事業の譲り受けにあたって大事にしていることはありますか?

柊崎)譲り受けにあたっては、歴史やブランド力があるか、既存事業とのシナジーが期待できるかどうかなど、さまざまな点に着目しています。ひいらぎホールディングスと一緒になることで、そのブランドの強みを活かしながら、そのブランドもグループ全体も成長していけるかどうかも重要ですね。

グループに迎え入れたい先については、長年愛された歴史や老舗の味を持っているところや、成長ポテンシャルのある新興業態など、食に関わる様々な候補先から検討しています。

2023年12月には、サンライズキャピタルからの資本参画が実行されました。同社とパートナーシップを結ぶことになった経緯をお聞かせください。

柊崎)元々一店舗ずつを大事にやっていくことだけを考えていましたが、そのお陰で会社も徐々に成長し、IPOも視野に入る規模感になってきました。そのような最中、M&A Propertiesさんからファンドを絡めた成長戦略について提案を受けたのが提携のきっかけでした。

M&A Propertiesさんは外食業界に非常に精通しており、我々経営者の目線に合わせた様々な提案ができるM&Aアドバイザーでした。相談事に対してもフェアで率直な回答してくれましたし、非常に信頼しています。

そうして具体的に相手先を探していく中で、様々なファンドから資本参画の提案をいただきました。どの会社も魅力的だったのですが、最終的には「この人たちとだったら一緒にやっていける」と感じた点が決め手となり、サンライズキャピタルさんと話を進めることにしました。

資本参加が実行されて以降、柊崎さんの心境や業務に何か変化はありましたか?

柊崎)経営面は全て任されていますし、マイナスな部分での変化はありませんでした。一方で、ポジティブな要素として本社の管理面・ガバナンスが強化されたのは感じています。また、第三者の資本が入ったことによるいい意味での緊張感は生まれるようになりました。

サンライズキャピタルの方は経験値や実績も豊富で、何より一人一人がしっかりとしていて信頼が出来る。目の前の人を大事にして仕事を進めている点も我々と共通していますし、この会社とパートナーシップを結ぶことが出来て良かったと思っています。

約半年後の2024年7月には、生パスタブランド「ポポラマーマ」と資本業務提携を実施されました。本件の経緯についてお聞かせください。

柊崎)元々2008年にフランチャイズとして加盟していて、現在8店舗を運営しています。30年間生パスタ一筋で展開していることから商品自体が非常に美味しく、売上も堅調に推移していて、運営する側としてはブランドへの信頼度は非常に高かったです。

一方で、ポポラマーマは出店や立地開発といった部分で成長が止まっているという課題もありました。その点においては、ひいらぎホールディングスとして蓄積してきた店舗開発の知見を活かすことが出来そうで、我々が一緒になれば更にポポラマーマを成長させることが出来るのではないかと考えたのが資本業務提携のきっかけになります。

安家社長とは、ポポラマーマに加盟した当初から長年コミュニケーションを積み重ねて信頼関係を築けていましたし、普段から成長戦略について意見交換をしていましたので、そのやり取りの中で徐々に具体的な話が進んでいきました。

資本業務提携の後も関係性は良好で、業績も順調に推移しています。新規出店についても具体的に進んでいますので、ここからの成長が楽しみです。

「ポポラマーマ」の今後の展開方針をお聞かせください。

今後は直営・フランチャイズの両輪で更に出店を進めていく予定です。ポポラマーマは生パスタブランドとして圧倒的な商品力があり、F/Lの比率も安定していてブレがありません。SNSでも「美味しい」という好評な反応が非常に多く、もっと全国各地に広まって欲しいブランドです。ここから更に全国各地にフランチャイズパートナーを増やしていきたいと考えています。

我々は長年フランチャイジーとしてポポラマーマの運営をしてきましたので、その中で蓄積してきた様々なノウハウを元にアドバイスを行うことが可能です。この記事を通じて、ポポラマーマに興味を持ってくれる人が増えると嬉しいですね。