【M&A成約事例】競争激化のラーメン業界で「麺屋 音」が決断したM&A ~「社員の未来」と「ブランドの成長戦略」を見据えた決断の裏側~

北千住に本店を構える濃厚な煮干しスープが人気のラーメン店「麺屋 音」。その運営会社である株式会社天翔は、2025年3月に株式会社FS.shakeとのM&Aを実行しました。競争の激化による厳しい環境が続く中、株式会社天翔はどのような経緯でM&Aに至ったのか。本インタビューでは、代表を務めていた原直樹氏に、M&A実行の背景や本音を赤裸々にお話いただきました。


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Q.M&Aを検討し始めたきっかけを教えてください。

原氏: 昨今のラーメン業界でM&Aが盛んになってきて、それによる競争激化が一番のきっかけです 。具体的には、大きな変化が2つありました 。

まず一点目が、人材難の中での賃金・労働環境に対する変化です 。

我々も業績を上げて給与を上げる努力を長らく続けてきましたが、M&Aにより大きな資本が入ったラーメンチェーンの給与水準との間に、毎年どんどん格差が生まれ始めました 。このままでは、頑張ってくれている社員に十分な報酬を渡せず、人材流出につながってしまうという危機感を強く持っていました。

もう一点は、立地の変化です 。

以前は駅前・エキナカは大手チェーンが占めていたので、路地裏の名店とは立地の面で住み分けができていました 。しかし、M&Aが加速する中で、そうした路地裏の名店が資本を得て、駅ナカやフードコートに進出しはじめました。そうなると、お客様の利便性から見て、徒歩5〜7分の路面店よりもそちらに人が流れるようになってしまいます 。「麺屋音」も、この影響を強く受けていました。

こうした2つの大きな波に、自社だけで対抗するには限界がありました。そうした環境の変化の中で「資本のついた会社と一緒に成長していくほうが、ブランドを守り、社員の待遇面でもみんなにとって良い道なのではないか」だと考えるようになり、M&Aを検討し始めました。

Q.当社のM&Aアドバイザリーサービスには、2022年の8月に初めて相談いただきました。その当時の経緯をお聞かせください。

原氏:元々M&A Propertiesとは、南越谷の店舗物件を仲介していただいたのを通じて繋がりがありました。「今のままやっていくのは厳しいな」と考えていた中、その際のM&A Propertiesの営業担当からM&Aの仲介もやっている旨を聞き、「取り合えず相談してみよう」と連絡したのが最初のきっかけになります。

当時はM&Aについて全く知識がない状態でした。M&A Propertiesは「そもそもM&Aとは何なのか?」という基礎的な部分から丁寧に教えてくれましたし、コンサルタントの方が「原さんはどのようなゴールであればM&Aしても良いと思いますか?」と聞いてくれて、自らの想いの実現に寄り添ってくれたので非常に頼りになりました。

 

Q.実際にM&Aの相手方探しに着手するまで、1年程度時間をかけてじっくり準備を進めました。

原氏:自分の理想とする状態でのM&Aを実現するに際し、最初に相談した時点での会社の状況からすると多少のギャップがありました。実際にM&Aを進めると決めてからは、そのギャップを埋めるために、新規出店を進めて売上を向上させたり、会社におけるキャッシュフローを明確化したりなど、様々な改善に着手しました。

その他には、細かい部分ではありますが、店舗別の決算書と合致するようにしっかりとPLを作り込んでいくといった、第三者から見てもしっかりと収益力が分かりやすくなるような準備も行いました。

Qそうした準備を終えて実際に相手方探しをスタートしましたが、当時の買い手に対する希望条件・判断基準についてお聞かせください。

原氏:会社の価値に紐づく金額面の他に、3つの ポイントを重視しました。

1つ目はその会社の雰囲気で、社員が新しい会社でうまくやっていけるのか。2つ目は社員の処遇で、給与水準や労働環境が改善されるのか。最後に3つ目は成長戦略で、「麺屋 音」の強みをどう活かして成長に繋げられるのか。

候補企業探しについては、非常にいい会社ばかりだったのですが、最終的にはこれらのポイントにどの程度合致するのかで相手方を決定しました。

Q.最終的には、株式会社FS.shakeと交渉を進めることを決定されました。その理由をお聞かせください。

原氏: M&A活動中の3ヶ月間は、正直、心が落ち着かない不安な日々でした 。業績が前年比を維持できるかという不安に加え、万が一の事故、食中毒、社員の大量離職などが起きないか、普段は考えないようなことまで心配していました 。

飲食というものは、今月までは良かったとしても、来月には10%利益が下がったということが容易にあり得る先の読みづらいビジネスですから、その数値がM&Aの成否にも影響しかねないというプレッシャーは想像以上に大きかったです。

また、活動中に最も大変だったのは、社員に対して会社売却を検討していることを言えなかったことです 。社員は次の出店を期待していましたが、M&Aが控えている以上、出店はできず、現状維持をするしかありませんでした 。毎年増収増益を目標に掲げて、1年に1つは店舗を増やしていこうという会社の目標を掲げている中で期待に応えられなかったのは、精神的につらかったですね 。

Q.M&Aにおける具体的な作業で大変なことはありましたか?

原氏:当初の印象とは異なり、大変だったことは全くありませんでした。それは、M&A Propertiesのコンサルタントが本当に手厚くサポートしてくれたお陰だと考えています。

M&Aを実行した経営者の友達からは「M&Aはやること沢山あるから結構大変だった」と事あるごとに聞かされていたので、私も覚悟をしていたのですが、思いのほか負担は少なかったです。

Q.その他、M&A実行において印象的だったことはありますか?

原氏:トップ面談を多くの会社と実施したおかげで、多くの会社の経営者の方と話す機会が出来たのは印象的でした。通常は2~3社の候補とトップ面談を行うのが一般的だと聞いていたのですが、今回は5社以上の企業と面談を実施しました。それだけ多くの判断材料の元に検討を出来ましたし、結果として一番最後に面談をしたFS.shakeさんと合意に至ったので、大変ではありましたが良かったと思っています。

Q.M&A実行後の心境についてお聞かせください。

原氏:現在の心境は、「安心している」というのが一番大きいです 。約束通り社員の待遇は向上していますし、旧メンバーが1人も離職していないのが何より嬉しいです 。FS.shakeさんへの譲渡後は、わずか半年でラーメン店を2店舗、さらにラーメンと居酒屋をミックスした新業態も1店舗オープンさせています 。このスピード感には非常に驚きました。

一方で、「寂しさ」も感じています 。今まではすべて自分で最終決定していましたが、今は顧問として意見を言うことはあっても、必ずしも採用されるわけではありません 。それは予想していたことですが、時折「僕は代表じゃないんだ」と感じることはあります 。

Q.その他に何か変化はありましたか?

原氏:今までは仕事中心の生活でしたが、自分の時間が取れるようになったことで、5歳の子供と家庭で過ごす時間が増えたのはとても嬉しいです。創業16年の会社を一番良い形で手放すことができ、人生の中で良い成功体験になったと感じています 。

Q.現在M&Aを検討されている方に対してアドバイスをお願いします。

原氏: 少しでもM&Aに興味がある方は、一度相談してみた方が良いと思います 。 M&Aは、自分の意向を取り入れながら進めることができ、納得のいく形に調整していけます 。金額も決まったものはなく、自分が今後どうしていきたいかによって適切な形を選択することが可能です。

また、話を進めていくうちに、自社の現状と目標のギャップが見え、「この条件ならM&Aした方が良いのではないか」という形が見えたとき、現状とのギャップを埋めるために何をすべきかが明確になるので、今後の方針をしっかりと立てることが出来るようになりました。

私の場合はM&A Propertiesのサポートが非常に手厚く、M&A期間中の負担は想像よりもはるかに少なかったです 。単に売却を仲介するだけでなく、成長戦略を一緒に考え、サポートしてくれる点が非常に良かったです。

まずは一人で悩まず、早い段階で信頼できるパートナーに相談してみることを、いち経営者として推奨します。


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