【有限会社の廃業】解散手続きの基本的な流れ

有限会社の廃業には、「解散」という手続きを取る必要があります。 実際は、事業をやめるだけでは廃業にはなりません。会社が持っている資産や債務を整理し、「法人格」(法人が持つ機能や権利)を消滅させる必要があります。


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有限会社の廃業には解散手続きが必要

有限会社の廃業には、「解散」という手続きを取る必要があります。まずは「解散」について理解しましょう。

有限会社における「解散」とは

「廃業」とは企業が事業をやめることを指します。廃業のなかでも、債務の支払いができなくなって事業をやめることを「倒産」といいますが、「廃業」は経営者が自主的に事業をやめる(自主廃業)意味で使われることが一般的です。

実際は、事業をやめるだけでは廃業にはなりません。会社が持っている資産や債務を整理し、「法人格」(法人が持つ機能や権利)を消滅させる必要があります。

資産や債務の清算だけのために存在する会社を「清算会社」といい清算会社に移行するための手続きを「解散」といいます。つまり「解散」は廃業の第一歩となります。

有限会社には解散事由が定められている

有限会社を解散するには、理由(法律的には「解散事由」といいます)が必要です。解散事由として認められているのは、以下のいずれかに限られています。

・存続期間満了など、定款で定めた解散事由の発生
・株式総会の決議
・合併(合併によって有限会社が消滅する場合)
・破産手続き開始の決定
・解散命令・判決

経営者の判断で自主廃業をする場合「株主総会の決議」を解散事由にすることが一般的です。

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【解散手続き】基本的な11の流れ

有限会社を解散・清算する際に必要な手続きや必要書類などについて、流れに沿って見てみましょう。解散事由は「株主総会の決議」とします。

1.株主総会の決議を行う

株主総会を開き、解散の決議を行います。原則として、株主総会で決議された日を解散の日とします。解散の決議は「特別決議」で行い、可決には半数以上の株主が出席し、3分の2以上の賛成が必要です。

このとき、解散手続きを行う「清算人」が決まっていない場合は、清算人の選任を行います。清算人には取締役が就くことが一般的です。

株主総会では、登記申請時に添付する以下の書類を作成します。

・株主総会議事録
・清算人の就任承諾書(清算人の選任について決議を行った場合)
・株主総会書面決議書(書面でやり取りを行い、株主総会の開催を省略した場合)

2.解散・清算人選任の登記を行う

解散日から2週間以内(本店所在地では2週間以内、支店所在地では3週間以内)に法務局で解散登記と清算人選任登記を行います。

費用と「解散及び清算人選任登記申請書」に添付する書類は以下のとおりです。

【費用】
登記費用(登録免許税)
・解散の登記:3万円
・清算人選任の登記:9,000円【添付書類】
・株主総会議事録
・清算人の就任承諾書
・定款

※場合によって添付する書類
・株主総会書面決議書
・代表清算人の互選を証する書面(代用清算人を清算人の互選で選んだ場合)
・代表清算人の印鑑登録証明書
・委任状(司法書士などに登記申請を委任する場合)

3.解散の届け出を行う

解散後、すぐに税務署、市区町村役場、都道府県税事務所に解散の届けを出します。「異動届出書」に定款と登記事項証明書を添付して、各機関に提出します。

4.財産目録と貸借対照表の作成を行う

解散の届け出と同時に、解散日における会社の財産目録と貸借対照表を作成して、株主総会の承認を得ます。

5.債務者保護手続きを行う

「債権者保護手続き」とは、債権者に対して、官報に公告を出したり個別に連絡をしたりして、解散する旨を伝え債権を申し出るように伝えることです。

官報に公告する際、一定の期間内(2ヶ月以上の期間を設ける)に債権を申し出るよう記載します。なお、官報公告費は約4万円です。

6.解散確定申告書の提出を行う

解散日の翌日から2ヶ月以内に、解散日までの確定申告書を作成して、税務署に提出します。

その年の事業年度の開始日から解散日までがひとつの事業年度となります。解散確定報告書は通常の確定申告と異なるケースもあるため、税理士などの専門家と相談しながら作成すると良いでしょう。

確定申告書に添付する書類は以下のとおりです。

【添付書類】
・貸借対照表
・損益計算書
・株主資本等変動計算書
・勘定科目内訳明細書
・法人の事業等の概況に関する書類

なお、解散確定申告書を提出後、解散日の翌日から1年ごとを「清算事務年度」といいます。

清算中は、清算事務年度の終了ごとに確定申告書を提出し、法人税や事業税などの納税も行います。また、清算事務年度ごとに貸借対照表などを作成し、株主総会で承認を得なければなりません。

7.残余財産の分配を行う

売掛金などの債権を回収し、買掛金などの債務の支払いを済ませたうえで、残余財産があれば株数に応じて株主に分配します。

8.清算確定申告書の作成を行う

残余財産が確定したら、残余財産確定日から1ヶ月以内に確定申告書を提出します。解散確定申告書と同様の添付書類が必要です。清算確定申告書も、税理士などと相談しながら作成すると良いでしょう。

9.決済報告書の作成を行う

残余財産の分配後、債権や債務、財産の分配についてまとめた決算報告書を作成します。作成した報告書は株主総会で承認を得ます。

10.清算結了の登記を行う

株主総会で決算報告書の承認を得たら、承認日から2週間以内に(本店所在地では2週間、支店所在地では3週間以内)法務局で清算結了の登記申請を行います。この登記で法人格が消滅します。

費用と「清算結了登記申請書」に添付する書類は以下のとおりです。

【費用】
登録免許税:2,000円

【添付書類】
・株主総会議事録
・委任状(司法書士などに委任する場合)

11.税務署等へ清算結了の届け出を行う

清算結了の登記をしたら、すぐに税務署や市区町村役場、都道府県税事務所に清算結了したことを届け出ます。「異動届出書」に定款と登記事項証明書を添付して各機関に提出します。

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売却・事業承継が見込めるならM&Aも選択肢

有限会社を廃業する理由として「家族経営で後継者がいない」「何年も赤字が続いている」といったことが挙げられます。

しかし、廃業するには解散・清算を行うための費用と時間が必要です。

もしもM&Aによって有限会社を第三者に譲渡できれば、有限会社の経営者や会社にとって大きなメリットになります。

「会社が存続できないから廃業」と考える前に、まずはM&A紹介会社などの専門家に相談し、自社を売却案件として紹介してもらえないか見てもらいましょう。赤字であっても、内容によっては買収対象として買い手から評価されることもあります。

M&A Propertiesは飲食業界のM&Aを専門に手がけています。飲食業界に広いネットワークを持ち、飲食業のM&Aについて豊富な実績があります。

飲食業をされている有限会社で「廃業を考えているが、M&Aの可能性があるなら話を聞いてみたい」と思われた方は、ぜひ一度ご相談ください。

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まとめ

有限会社を廃業するには、株式会社と同様に解散・清算という手続きを取る必要があります。

株主総会の決議を経て、法務局で登記をしたり、税務署をはじめとする公的機関に届出書を出したりするなど、いくつものステップを踏まなければなりません。

また、解散や清算事務を行うなかで、年度ごとに貸借対照表などを制作したり、確定申告書を提出したりする必要もあります。さらに、登録免許税や官報公告費などの費用も発生します。

廃業には時間と手間、さらに費用もかかります。廃業を決断する前に、御社を第三者に譲渡するなどの方法を模索してみてはどうでしょうか。

第三者に事業を譲渡するM&Aの仲介会社などの専門家に相談すると、御社を買いたいと考えている企業があるか判断してもらえます。売却可能か確かめたうえで、廃業を決定しても遅くはないでしょう。