詐害行為とは、債務者が債権者を害することを知りながら、故意に自己の財産を減少させ、債権者が正当な弁済を受けられないようにする行為のことを指します。
たとえば、債権者から差押えを受けそうになった場合、債務者はほかに資産がないにもかかわらず、差押えを免れるため財産を他人に贈与するようなことが、詐害行為にあたります。
詐害行為は、債務超過などに陥っている会社が、債権者に対する弁済を免れる目的で行われるケースが多いです。
この行為に対し、債権者は債務者に、債務者が行った詐害行為を取り消すよう裁判所に請求できる権利が民法第424条〜426条に定められています。これを「詐害行為取消権」といいます。
詐害行為取消権を行使するためには、以下の5つの要件があります。
①債権は、詐害行為前の原因に基づいて生じていたこと
②債務者が無資力であること
③債務者が債権者を害する行為を行い、その行為が財産権を目的としていたこと
④債務者が詐害行為時、取消債権者を害することを知っていたこと
⑤受益者や転得者が、取消債権者を害することを知っていたこと
M&Aにおいても、詐害行為とその取消権が認められています。
例えば、事業譲渡という形で債務超過案件のM&Aを行う際、買主側は債務を引き継がずに資産のみ引き継ぐことが可能です。しかし、売主(債務超過の会社)側の債権者からすると、M&Aにより資産のみ相手企業に移転するため、弁済を受けたくても受けられなくなる可能性があります。
そこで、もし債権者が弁済を受けられない状況であると判断したら、詐害行為取消権が行使され、M&Aの効力が無効となるケースもあり得るのです。もしくは、買主側が買収代金を追加で支払うように要求される場合もあるため注意が必要です。