飲食店の倒産とは
店を畳む意味で使われる「廃業」と「倒産」という言葉は、似て非なる言葉です。
廃業とは、個人的な理由で自主的にお店を畳むことを意味します。つまり、まだ資金が十分にあり、黒字経営を維持している企業であっても、廃業をする場合があるということです。
その理由のひとつとして昨今急増しているのが、少子高齢化社会による後継者、人材不足です。飲食店経営者の高齢化が進む一方で、生産年齢人口が減少して、飲食店は後継者や人材不足に苦しんでいます。
どんなに素晴らしいお店を経営していたとしても、後を継ぎ、そこで働いてくれる人がいなければ、店を畳まざるを得ません。
つまり、後継者や人材不足によって、業績の良否に関係なく閉店する状況が廃業なのです。
一方で倒産とは、経営を続けるのに十分な収益を獲得できずに、資金が底をついて店を畳むことをいいます。
業績が悪化してくると、どの飲食店も債務によって資金調達をします。しかし、債務が積み重なると、金融機関からの借り入れが難しくなり、最終的には運転資金が底を尽きます。その結果、取引先への支払いや借金の返済が滞り、飲食店は倒産に追い込まれるのです。
飲食店が倒産する理由5つ
次に、飲食店が倒産してしまう理由を5つ解説します。
資金繰りなど、経営管理の問題
最も根本的かつ一般的な原因は、資金繰りなどの経営管理に関する問題でしょう。具体的には、売上の低下や仕入の増加、修繕費などの大きな費用が発生するなど、資金が不足することで、経営を続けられなくなることが多いです。
そして、これらの資金繰りの悪化は、元をたどれば事業計画がきちんと策定されていない点にあります。現状を正確に把握し、「将来にわたって事業を継続するためには何をするべきか」の点について、論理立てて考えておくことが大切です。
人手不足
冒頭で、「廃業は人材不足によって引き起こされる」ことを説明しましたが、それは倒産を引き起こす原因にもなり得ます。実際に、飲食店で多い倒産の理由は人手不足であるとされているからです。
多くの飲食店では、アルバイトやパートなどの従業員が重要な人材です。しかし、これらの人手が不足すると、サービスレベルの低下、営業時間の短縮、インセンティブを与えるために人件費が高騰するなどの状況が起こり、収益性の悪化、ひいては倒産という結末を迎えることになります。
人材不足という問題は、サービス業である飲食店には死活問題となるのです。
開業前のマーケティング不足
飲食店の開業にあたっては、事前に店舗周辺のリサーチを行い、競合店舗やターゲット層について調べます。
しかし、このリサーチが不十分であったり、マーケティングがしっかり行われていなかったりすると、集客がうまくできなくなる可能性があります。当初の計画通りの集客ができないことで、売上及び利益が立たず、結果として倒産に追い込まれるのです。
開業する前に、自分の店舗がどういう客層を狙ったコンセプトなのかを定め、そのターゲット層を集めるにはどのような場所に出店するべきかなどの情報を、きちんと整理することが大切だといえるしょう。
経営戦略ミス
開業当初は順調に経営ができていても、その後の戦略によっては倒産という結果を招くこともあります。
例えば、業績が安定してきたことを受けて、急激な出店を続けたとしましょう。戦略通りにそれぞれの店舗が収益を上げることができれば良いですが、一方で投資に見合うリターンを得られないリスクは十分にあります。
新規店舗の売り上げが伸び悩む場合、早めに撤退せずに赤字を出し続けて、結果経営全体に影響が出てしまうこともあります。最悪の場合、資金繰りが悪化して倒産という結果に帰着することもあるのです。
飲食店経営はリスク回避を念頭に、将来を見据えた現実的な戦略に基づいて着実に経営していくことが重要です。
周辺環境・トレンド・社会情勢の変化
ここまではコントロール可能である内部環境について説明しましたが、コントロールしづらい外部環境によって倒産に追い込まれるケースもあります。
例として、近くにあった企業や学校等の減少、周辺に似たコンセプトの競合店が出現する、社会的なブームが過ぎてしまい全体的な顧客数が減少するなど、外部環境の変化を受けて売上が激減することも考えられます。また、新型コロナウイルスのような予測不可能な原因によって倒産する飲食店も多くありました。
周辺環境、トレンド、社会情勢といった外部環境の変化についていけず、倒産するケースも認識しておく必要があります。
飲食店の倒産を回避するための方法はあるか
飲食店の倒産の原因はさまざまですが、状況によっては倒産を回避する方法もあります。
まずは現状把握・分析から
まずは、正しい現状認識で赤字要因をつかむことからはじめましょう。
経営状況が悪いと、外部要因のせいにしてしまうオーナーもいます。確かに、自身ではコントロールできない原因もあるかもしれませんが、本当の原因は店舗内部にあるということも十分考えられます。
赤字の要因が内部にないかどうか確かめ、もし内部にありそうならば、「売上の減少によるものなのか」、「コストが高いからなのか」など、さまざまな角度から分析を行ないましょう。さらに、「売上の減少やコスト増の原因は何か」というように、原因だと思われる部分は徹底的に深掘りします。
改善策を考えるには、正しい現状認識が必要不可欠だといえるでしょう。
再建計画の作成をする
現状が把握でき、赤字要因をつかむことができたならば、分析結果を基にして再生計画を作成します。
例として、売上減少が原因なら、客単価の向上、客数の増加、回転率の上昇などの観点から改善策を検討します。また、コストが高いなら、人件費や水道光熱費などの固定費から見直し、その後は売上に比例する変動費の見直しなどを行うことができるでしょう。
このように、再建計画はさまざまな角度からアプローチを試み、達成する期限を設けて効果的に行うようにします。
再建計画の実行と見直し
再建計画が完成したら、計画に沿って実際に行動を起こします。ここで注意するべきことは、きちんとPDCAを意識する点です。行動を起こしたら、その効果を測定して、効果が見られるならば続行、成果が見られない場合は別の方法を考えるなど、常に振り返りを行うことが重要です。
M&Aで事業を継続できる場合があります
自身で経営を立て直すことが難しいと判断した場合は、M&Aによって事業を譲渡することも検討するべきでしょう。
倒産しそうな飲食店でもM&Aは可能
「倒産しそうな店舗や企業を買収したい会社はあるのか?」と思われるかもしれませんが、買収企業の経営資源によっては、経営を立て直すことができます。また、売手企業としては、不採算部門だけを売却し、採算の取れている部門に注力するといった選択と集中を行うこともできます。
民事再生を使ったM&Aとは
民事再生とは、業績が悪化した企業が、スポンサー企業に対して事業を譲渡することで事業を再生させる方法です。売手企業は事業を潰すことなく再生させることができ、買手企業は事業を復活させることで投資を回収して利益を得ることができます。
一方で、多くの中小企業の経営者は個人で債務の連帯保証をしている場合が多く、経営者の連帯保証の取り扱いについては注意する必要があります。
この詳細についてはこちらの記事でご確認ください。
このように、M&Aは複雑なプロセスがあるので、専門知識が必要です。専門家の助力を得ることで、スムーズにM&Aを進めることをおすすめします。
飲食店のM&Aについては、M&A Propertiesにご相談ください。
M&A Propertiesは、飲食業界専門のM&A仲介会社です。取り扱い総額が10年間で450億円という豊富な実績があり、飲食店のM&Aに詳しい経験豊富な専門コンサルタントが在籍しています。M&Aによる経営再建についても熟知していますので、お気軽にお問合せください。
まとめ
飲食店は、さまざまな要因で倒産する可能性があります。
経営者自身が再生計画を立てて事業を立て直す方法もありますが、M&Aによる経営再建の選択肢もあります。その場合はM&Aの専門家によるサポートが必要不可欠です。
自社にとって最良の方法を選んで倒産を回避しましょう。