事業承継の方法は3つ!それぞれのメリット・デメリットを解説

近年、多くの中小企業が後継者不足の問題に直面しています。 日本の全企業数のうち、中小企業が占める割合は実に99.7%となっています。(「中小企業白書 2019年版」より引用)そのうち、帝国データバンクの「全国・後継者不在企業動向調査(2019年)」によると、後継者不在の企業は65.2%に達しているようです。 全企業数の大部分を占める中小企業に後継者がおらず廃業が相次いでしまうとなると、日本経済にとっての大きな痛手となります。 そのため、政府も中小企業を支援する政策を出していますが、同時に中小企業の経営者も自社を存続させる方法を考えていく必要があるでしょう。 今回は、会社を存続させる方法として「事業継承」について解説します。


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【事業承継の方法・手続き1】親族内承継

そもそも事業承継とは、「現在の経営者が、自社や自社の事業を後継者に引き継ぐこと」を指します。現経営者が退いた後でも会社を存続させるために、事業承継によって会社の経営権や会社の持つ事業資産を後継者へと引き継ぎます。

事業承継には、「親族内承継」「親族外承継」「M&A」という、主に3つの方法があります。
まずは「親族内承継」について紹介します。

親族内承継とは、「経営者の親族に、事業を承継する」という方法です。ここでいう親族は、子供や配偶者のみならず、子供の配偶者、兄弟、姪、甥も含まれます。

具体的な方法としては、相続、譲渡、贈与などの方法によって事業承継が行われます。

相続で承継する場合、その後継者に会社を承継する旨を知らせるとともに、遺言として文書に相続の旨を記載することが必要です。

贈与で承継する場合、現経営者が存命中に株式や事業資産などの承継が行われます。しかし、存命中に贈与を行うことで、相続の際と比較して税金が高くなることもあるため、注意が必要でしょう。

譲渡で承継する場合、後継者が買い取り資金を準備した上で、現経営者から株式等を取得します譲渡によって取得した資産については相続の対象とならないという利点があります。しかし、後継者に十分な資金がなければ、この方法は現実的ではありません。

メリット

親族内承継のメリットは主に2つあります。

1つ目は、「早い段階から事業承継の準備が進められる」という点です。

親族を後継者として選ぶことで、ほかの事業承継の方法よりもスムーズに後継者を決定することができます。早い段階で後継者が決定することで、事業承継を行う前に、十分な準備を行うことができます。

2つ目は、「周囲の理解を得やすい」という点です。

中小企業の場合、同族経営が行われている場合も多く、親族が事業を引き継ぐことが望まれていることも多いです。早い段階から親族を後継者とするということを周知しておくことで、社内はもちろんのこと、社外の取引先や金融機関等の協力をスムーズに得られることもあります。

デメリット

メリットがある一方で、親族内承継にはデメリットも存在します。

1つ目は、「親族に経営者の資質をもつ者がいない」という場合です。

後継者となる者が親族内にいなければ、親族内承継は成り立ちません。子供に引き継ぎたいと考えたとしても、親族として会社の経営状況を理解していることで承継の意思がない場合も考えられます。また、経営者としての資質に欠ける者を後継者として選んでしまうと、承継後の経営にマイナスの影響が出る危険もあります。

2つ目は、「親族内でのトラブルが発生する」という場合です。

例として、相続で事業承継を行う場合、親族内で後継者争いが起こる可能性があります。後継者選びでトラブルが発生してしまうと、親族内の関係悪化にとどまらず、最悪の場合は経営に悪影響を及ぼすこともあるので、注意が必要です。

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【事業承継の方法・手続き2】親族外承継

次に紹介する事業承継の方法は「親族外承継」という方法です。親族外承継とは、「社内もしくは社外から後継者を選定して事業承継を行う」という方法です。

親族内承継を行う中小企業が多くある一方で、親族内に後継者としての適任者がいないという企業もあります。そのような場合に、従業員や役員など社内の人間、もしくは社外の人間を後継者として選定することもあるのです。

また、株式を後継者に承継するか否かで2つの種類があります。

株式は承継せずに現経営者が保持し、経営のみを後継者に任せるという方法は、「一時的に経営を誰かに任せたい」という場合に有効です。この方法であれば、経営者を実際に任せることで経営者としての教育をしながら引き継ぐことが可能です。もちろん、後継者に株式を承継させて、株式の対価を受け取った上で現経営者は会社から完全に身を引くという方法もあります。

メリット

親族外承継のメリットは、「経営者としての資質をもつ人間を後継者に選定できる」という点でしょう。

社内、社外関わらず、さまざまなビジネス経験があり、経営手腕に秀でている人間は多くいます。その中から、自社の存続と発展を実現してくれる後継者を選ぶことができれば、安心して経営を任せることができます。

また、社内の人間を選ぶ場合は、自社のことをよく理解し、従業員からの信頼も得ている可能性が大きいため、スムーズに事業承継を行えるというメリットもあるでしょう。

デメリット

親族外承継のデメリットとしては、「後継者は資金を準備する必要がある」という問題点があります。

親族内承継とは異なり、相続などによる事業承継を行うことができないため、現経営者の株式を承継する場合には株式や事業を買い取るだけの資金が必要となります。さらに、贈与によって事業承継が行われた場合は、贈与税等の税金の支払いを行わなければならないという点も留意しておきましょう。

また、「親族とのトラブルに発展することもある」という点にも注意する必要があります。親族の中には、事業の承継を期待している者もいるかもしれません。また、代々続く歴史のある企業を親族以外へ承継することに反対される可能性も考えられます。このような状況で親族外の人間を後継者にすることで、トラブルが発生する可能性もあります。

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【事業承継の方法・手続き3】M&A

最後に紹介するのが「M&A」です。M&Aとは、Mergers(合併)and Acquisitions(買収)の略であり、「複数の会社や事業を一つに統合する」という方法です。

M&Aには買手企業と売手企業が存在し、売手企業が自社の事業や会社全体を買手企業に売却することで承継が行われます。

深刻な後継者不足に悩む中小企業が多い中、M&Aによって信頼できる買手企業を見つけ、会社を承継するというケースは年々増加しています。

メリット

M&Aを行うことによるメリットはさまざまなものがありますが、今回は3つ紹介します。

1つ目は、「優れた経営ノウハウをもつ買手企業に承継することで、自社の発展を期待できる」という点です。

近年はM&Aが活発に行われており、他企業や事業に対してM&Aを実施することによって自社の事業を強化したいと考えている買手企業は多くいます。これらの企業は成長段階にあることが多いため、M&Aによる事業承継を行うことで、自社の業績を向上させ、発展に導くことが可能です。

2つ目は、「売却代金が手に入る」という点です。

M&Aは自社事業を他社に譲渡するのですから、その対価として売却代金、すなわちある程度まとまった金銭を手にすることができます。事業を無事承継出来たらリタイアを考えている経営者にとってはいわば退職金代わりとなりますし、新たな生活設計の元手としても役立ちます。

3つ目は、「現経営者は個人保証等から解放されるチャンスがある」という点です。

中小企業の経営者の多くは個人保証を行うことで資金調達を行っており、その負担を将来的にどうするかについて頭を抱えています。M&Aの種類や条件によっては、これらの個人保証を買手企業が引き継ぎ、現経営者は解放されるというケースもあります。

また、経営者にとってではないですが、買手企業が自社よりも福利厚生や雇用条件が良い場合、従業員の待遇が良くなる、買手企業の支援により慢性的な人手不足が解消される可能性がある、などの付加価値的なメリットも考えられます。

事業承継を目的としたM&Aを行う際は、M&A Propertiesにご相談ください。

飲食業界において豊富なM&Aの仲介実績があり、事業承継についても熟知しています。経験豊富な担当者がM&A成立までサポートしますので、初めてのM&Aでも安心してお任せください。

デメリット

M&Aによる事業承継を行う場合、希望条件を満たす買手企業を見つけることは非常に難しいです。また、買手企業の候補が見つかったとしても、M&Aを成約に導くことは簡単ではなく、複雑なプロセスをクリアしていく必要があります。

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事業承継を成功させるポイント・コツ

ここまでは3つの事業承継の方法について解説しました。
最後に、事業承継を成功させるポイントやコツを紹介します。

【ポイント】準備は早いうちから行う

どの方法で事業承継を行ったとしても、十分な準備期間を設ける必要があります。親族内承継の場合は、後継者の育成を行わなければなりません。

また、親族外承継の場合は、社内外から後継者を選定する時間が必要です、そして、M&Aを行う場合には、買手企業を選定し、成約に導く時間が必要となります。

事業承継に関係するスケジュールをきちんと把握し、早めの準備を意識しましょう。

【コツ】専門家のサポートを受ける

今回は概要のみ解説しましたが、事業承継は専門的な知識を要するプロセスが多くあるため、専門家に相談するのが基本です。

特にM&Aによる事業承継の場合、より高度な専門知識が必要なので、M&A専門の仲介業者などに相談するほうが確実です。

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まとめ

事業承継には主に「親族内承継」「親族外承継」「M&A」などの手法があります。
親族内承継は「経営者の親族に、事業を承継する」という方法、親族外承継は「社内もしくは社外から後継者を選定して事業承継を行う方法」、そしてM&Aは「売手企業が自社の事業や会社全体を買手企業に売却することで承継する方法」でした。

それぞれにメリットとデメリットがあるため、それぞれを吟味した上で、少しでも不安がある場合は専門家に相談しましょう。