廃業した飲食店経営者は、その後どうなる?
廃業した後に経営者が選ぶ道としては、大きくふたつに分かれます。
会社員として働く
まずは、経営者としての仕事を退き、会社員として働き安定した収入を確保する道が考えられます。
飲食店経営の多くは、月々の仕入代金や店舗の賃貸料、人件費などの固定費の割合が大きく、売上が少なく厳しい状況になった際に大きな不安を抱えることになります。
そのため、仕事をして安定した収入があることに価値があると考える人は、会社員として働く方が向いているかもしれません。
また、一度経営者としての業務を経験していることで、仕事における行動力が自然と備わっていたり、組織の一員となった際に自分が求められている仕事や役割を俯瞰的に捉えられたりするでしょう。
そうした意味でも会社員として働くことは、有効な選択肢のひとつです。
経営者として再起を図る
経営を一度失敗した経験を活かして、再度経営者として挑戦するという方法もあります。
飲食店にこだわるのであれば失敗の経験がある分成功に近づきますし、経営によって得た知識や経験をもとに新たな事業を始めてみるのも良いでしょう。
もし廃業を決断するタイミングがギリギリになってしまうと、それだけ借金などの負債が大きくなってしまい、早いうちに再スタートを切ることが難しくなってしまいます。
事業の引き際はしっかり見極めることが重要です。
【提出先別】飲食店の廃業時に行う手続き
飲食店を廃業する際には、あらゆる書類を関係各所に提出しなければならず、場合によっては開業したときと同じかそれ以上の手続きが必要です。
具体的には、以下の行政機関への届け出が求められます。
・警察署
・消防署
・保健所
・日本年金機構
・ハローワーク
・労働基準監督署
それぞれ複数の書類を提出する必要があり、提出期限も異なるため、事前に整理してから手続きに取り掛かりましょう。
届出用紙の多くは行政機関それぞれのホームページからダウンロード可能で、記載例なども掲載されています。不安なところがあれば問い合わせながら作成すると良いでしょう。
ここからは、提出先別に必要な具体的な手続きを紹介します。
税務署
税務署に提出する書類については、以下のとおりです。
届出名 | 対象者 | 提出期限 |
個人事業の開業・廃業等届出書 | 個人事業主すべて | 廃業した日から1月以内 |
消費税の事業廃止届出書 | 消費税の課税事業者 | 事業を廃止してから遅滞なく |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 従業員を雇用している人 | 廃業した日から1月以内 |
所得税の青色申告取りやめ届出書 | 青色申告者 | 廃業した年の翌年3月15日まで |
届出書を出し忘れた場合、罰則規定はありません。ただし、税務署からは事業を継続しているものと認識されるため、毎年確定申告書が送付され、場合によっては税務署から問い合わせがある可能性があります。
廃業の際はなるべく早めに手続きを行うようにしましょう。
警察署
深夜酒類提供飲食店営業の開始届を提出して深夜営業を行っている場合は、所轄の警察署にも廃止届出書を提出しなければなりません。
期限は、廃業をした日から10日以内です。
また、キャバクラなどの風俗営業許可を得ている場合は、返納理由書を提出しその許可書を返納しなければなりません。
提出しなければ罰則として30万円以下の罰金に処せられるケースもあるため、忘れないようにしましょう。
消防署
消防署には、開業の際に提出した「防火管理者選任(解任)届出書」を解任と記入をして提出することになります。
期限は特段定められてはいないため、明確に期限が定められている手続きを先に終えてから提出しましょう。
保健所
飲食店を廃業する際、開業時に取得した食品営業許可証の返還と廃業届を提出します。
自治体によって期限は異なりますが、東京都などの多くの自治体では廃業した日から10日以内となっているため、早めに準備をしておきましょう。
日本年金機構
健康保険や雇用保険に加入している場合、「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を所轄の年金事務所に提出する必要があります。
期限は廃業した日から5日以内です。
その際、添付書類としてハローワークに提出した「雇用保険適用事業所廃止届」のコピーが必要です。
税務署に提出した給与支払事務所の廃止届のコピーなどでも代用は可能ですが、段取り良く手続きを進めるための準備は怠らないようにしておきましょう。
ハローワーク
雇用保険に加入している場合には、それぞれ以下の書類を提出します。
届出名 | 提出期限 |
雇用保険適用事業所廃止届 | 廃業した日から5日以内 |
雇用保険被保険者資格喪失届 | 廃業した日から10日以内 |
雇用保険被保険者離職証明書 | 廃業した日から10日以内 |
期限自体に違いはありますが、同時に提出することが望ましいです。
提出しなければ、保険料を徴収され続けることになりますし、従業員も離職票がなければ失業給付を受けることができないため、すぐに手続きをできるようにしておきましょう。
労働基準監督署
雇用保険や労災保険に加入している場合は、所轄の労働基準監督署に労働保険料について「確定保険料申告書」と「労働保険料還付請求書」をそれぞれ事業の廃止した日から50日以内に提出する必要があります。
廃業ではなくM&Aという選択肢もある
事業を辞める=廃業というイメージが強いですが、せっかく形にした自分の店をなくしてしまうというのは抵抗があるかと思います。
お店を残して事業を継続したいという方は、M&Aによる事業承継も選択肢のひとつです。
M&Aとは企業の合併と買収のことを指します。うまくマッチングすれば売り手と買い手双方に大きなメリットが得られるでしょう。
売り手側のメリットとしては、事業をやめる際の設備や在庫の処分費などの負担を軽減することができますし、従業員の雇用も守ることができます。
また、買い手側の企業次第では高値で事業を売却し、余裕をもってその後の生活を考えることができる可能性もあります。
買い手側も0から新規事業を始めるよりも、すでに設備やノウハウが構築されている企業や店舗を買収した方が、スムーズに事業を拡大することができるというメリットがあります。
M&A Propertiesは、飲食業界を専門に取り扱うM&A仲介会社です。専門知識豊富なコンサルタントが最初のヒアリングから企業の選定、契約の締結までサポートいたします。
M&Aでの売却に興味のある方は、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ
廃業の手続きについて、ひとつひとつ間違いのないように書類を作成するのはとても労力がかかります。
不安や疑問が生じた際は、司法書士や税理士などの専門家の力を借りることも考えてみましょう。
店を残して事業を継続させたい場合は、M&Aで事業を売却することがおすすめです。時間に余裕をもって動くほど、より条件の良い買い手が見つかる可能性があります。
飲食店の経営を退いたとしても、これからも人生は続きます。自身にとって後悔のない道に進むために最善の選択をしましょう。