飲食店の多店舗展開が失敗してしまう主な要因
では、飲食店の多店舗展開が失敗するのはなぜなのでしょうか。ここでは、失敗する主な要因を紹介します。
経営管理の複雑化と必要経費の増加
店舗の経営管理は、1店舗のみであればオーナーが1人で行うことが多いでしょう。
しかし複数の店舗を経営していると、売上集計、仕入発注、金銭管理、労務管理など多岐に渡る業務を複数店舗分行わなくてはならず、オーナー1人では追いつかなくなります。
規模が大きくなれば、バックヤードに事務専用スペースが必要になったり、別に事務所を借りたり、経理や人事、店舗をまたいで活動する本部スタッフが必要になる場合もあるでしょう。それぞれの店舗の売上などを正確に把握するために、経営管理ツールなどの新たなシステムを導入することも考えられます。
規模が大きくなるのと比例して経営管理は複雑になり、間接経費が増加してしまうことがあります。
新店舗を任せられる人材が確保できない
飲食店の店舗運営の要は店長です。1店舗目はオーナーが店長を務めることも多くありますが、2店舗目以降は誰かに店舗の運営を任せなければなりません。
適任者はオーナーと同じ考えを持っていて新店舗を任せられるスキルがある人材ですが、見合った人材がいない場合もあります。いたとしても引き抜きや独立などの理由で退職してしまうこともあるでしょう。店長など幹部人材の確保は、多店舗展開において重要かつ難しい問題です。
新店舗ではオーナーの目が届きにくくなるため、店長のスキルが不足すると新店舗の経営自体が成り立たず、閉店に追い込まれる可能性が出てきてしまうでしょう。
また、新店舗オープンまでに必要な従業員が確保できない場合、新店舗の運営自体が困難になります。既存店においても優秀なスタッフの確保は日々苦労している課題であり、退職者が出れば、補充人員の採用、戦力化するまでには時間と労力がかかります。
そこに新店舗で、まとまった人数のスタッフが必要となるとその労力はさらに増えることになります。
商圏選びや立地選びにミスがあった
飲食店は「立地産業」といわれるほど、商圏選びや立地選びが経営の成否を握ります。
商圏選びや立地選びの見込みが外れた場合、多店舗経営におけるメリットであるシナジー効果を活かすことができません。
以下に、見込み違いをしてしまった場合の例を挙げます。
商圏選び
1店舗目の顧客層とは異なる状況の商圏に出店してしまうと、1店舗目と同じことをしても客数が増えないことがあります。
立地条件
回転率を重視するのであれば人通りの多い立地、客単価を重視するならば駅から離れても十分なスペースを確保できる立地など、1店舗目でのモデルに近い立地を選ばなければ、店舗運営やサービス内容にギャップが生じてしまいます。
店舗間の距離
距離が遠すぎると、認知度が高まりにくく、物流の効率性や人材移動の行いやすさも低くなります。
多店舗展開を成功させるポイント
ここまで紹介した失敗する要因をふまえ、飲食店の多店舗展開を成功させるポイントについて考えてみましょう。
①既存店舗が成功した理由を分析する
「既存店舗がなぜ成功したのか」その理由について分析を行うことは、多店舗展開の戦略を考えるうえで非常に重要だといえるでしょう。
サービス内容・ターゲット設定・経営方針・コンセプトなどを、「オーナーのセンス」という言葉だけで済ませず、成功した理由やポイントを言語化してまとめておくことが必要です。この言語化がうまくできるオーナーは、次の出店も、その次の出店のときにも、成功パターンを外すことなく運営していくことができるといえます。
同時に店舗運営のノウハウをマニュアルや手順書に落とし込むことで、安定した運営体制の確立や人材の早期戦力化につなげていくことができるでしょう。
また、商圏や立地の選択は重要なポイントです。収益が見込めるエリアであるかどうかという点だけでなく、既存店舗と新店舗が相乗効果を発揮できるか、また反対に競合してしまう場所でないかについて確認しておかなければなりません。その際には人口動静や競合店の状況などデータ面からも客観的な分析を行い、失敗する確率を減らすことが大切です。
②出店資金と調達法について確認をする
多店舗展開にはまとまった資金が必要です。多店舗展開を考えるうえでは、物件、設備、仕入れ、宣伝など、新規出店にかかる具体的な金額を明確にしておきましょう。同業他社の事例も参考にして、具体的な金額に基づいて事業計画を作成してください。
必要な金額がわかれば、資金調達の方法を検討しましょう。どのくらいを金融機関からの融資や補助金で賄うのか、自己資金をどのくらい用意するかなどを検討します。金融機関からの融資や助成金を受ける際に、具体的で実現性のある事業計画が作成されていると、資金の必要性に説得力を持たせることができます。
③専門家のサポートを受ける
多店舗展開を考えるときは、当然、出店する賃貸物件を探さなくてはなりません。空店舗を探す中で、初期費用が抑えられる居抜き店舗を活用して出店することを考える場合もあるでしょう。近隣の不動産会社に問い合わせる方法もありますが、居抜き物件を専門に扱う不動産会社を利用する方法がおすすめです。
また、居抜きとは別に、営業中の飲食店をまるごとM&Aで買収するという選択肢もあります。こちらの場合でも、M&Aを手助けしてくれる専門の会社があります。
すでに固定客がいて経営が安定している飲食店を手に入れることができれば、一気に店舗数を増やせます。また、買収先の従業員も雇用できるので、店長やそれに準じたスキルがある人材の確保が可能です。多店舗展開を検討しているなら、メリットがある手法といえるでしょう。
とはいえ、M&Aは買収候補先リストの作成、留意点の洗い出し、経営状態などを調べる精密なデューデリジェンスなどの入念な下調べと準備をし、実際に買収活するためのアクションを起こすことで行われます。しかしながら、買収候補先へ直接打診することも難しいですし、買収を進めていく中では専門的な知識も必要になるため、前述したように専門家の手助けを借りて行うことが成功への近道です。
M&A Propertiesは、飲食店専門のM&Aを手掛けており、創業以来、飲食業における取り扱い総額は10年間で450億円という実績があります。経験に基づいた確かな知識を備えたコンサルタントが、飲食店M&Aを手厚くサポートしますので、ぜひ一度ご相談ください。
多店舗展開を実行するタイミング
最後に、多店舗展開を実行するタイミングについて紹介します。
①既存店舗の経営が好調である
既存店舗の経営が好調で、十分な利益が出ていることが最低条件です。
1店舗目で利益が出ていないのに、2店舗目の出店にエネルギーを注いでは、経営資源の分散を招いてしまい、既存店舗・新店舗が共倒れになるリスクがあります。まずは既存店舗の経営が安定してから次に進みましょう。
利益が出るということと合わせて、もうひとつの目安は既存店舗のピークタイムにお客さんが満員であるかも大切でしょう。ピークタイムに満員であるということは、席数のキャパシティ以上に顧客ニーズがあるということであり、見方を変えると機会ロスが発生しているということでもあります。
器の外側に溢れているものを、新店舗で受け皿としてキャッチしていくことができれば、開店前から見込み客を積み上げていくことができるようになります。
②新店舗を任せられる人材がいる
新店舗を任せられる人材が十分に揃っていることは、多店舗展開を実行する重要なタイミングのひとつです。特に店長となるマネージャー職であればなおさらのことです。
新店舗を出すということは新しいポストが生まれることなので、それに任命された従業員のモチベーションを大きく高めることができます。
新店舗を任せてもいいというほどの実力ある人材が育っているのであれば、他社からの引き抜きや、独立開業を考えることがあっても不思議ではありません。
オーナーの右腕には、誰でもなれるわけではありません。優秀な人材の社外への流出防止にもなるため、新店舗を任せられる人材が育ってきたら、多店舗展開を実行するタイミングであるといえます。
まとめ
1店舗を成功させることと、複数店舗を成功させることは、異なったノウハウが求められます。多店舗展開を失敗しないためのポイントは以下のとおりです。
・成功した理由の分析と言語化
・新店舗を任せられる人材の確保
・具体的な事業計画の作成
また、多店舗展開を一気に行うにはM&Aを活用する方法があります。自分に合った手法を上手に活用し、多店舗展開を成功させましょう。