雇用調整助成金はアルバイトも助成対象?雇用を守るには

新型コロナ感染症の拡大で経済の停滞に収束が見えないなか、飲食業、宿泊業などでアルバイトを主要な労働力として雇用している事業者の中には、どうにかしてアルバイトの雇用を守りたいと思い経営に苦心している方も多いのではないでしょうか。 雇用調整助成金緊急雇用安定助成金制度、その他雇用を守るための手段を紹介します。


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雇用調整助成金(特例措置)とは

雇用調整助成金は、雇用調整を実施する事業主に対し、従業員の雇用を維持するために休業手当などの一部を助成する制度です。

今回のコロナ禍による特例措置で、あくまでも新型コロナウイルス感染症の影響で事業縮小を余儀なくされた結果、労使間の協定に基づいて休業などの雇用調整をすることが要件です。事業者の都合による雇用調整には適用されません。

雇用調整助成金はいつまで

雇用調整助成金は元々令和2年4月1日に始まり、同年12月末までを期限とした措置を講じていましたが、新型コロナウイルス感染症拡大が収まりを見せず、雇用状態の改善が見いだせないことから、令和3年6月30日まで期間を延長して実施されることになりました。

支給対象は事業主

アルバイトやそれ以外の従業員が雇用調整助成金を自ら申請したり、直接受給したりはできません。

雇用調整助成金の趣旨は、やむを得ず事業を収縮した事業主が従業員に支払う休業手当などを、雇用維持促進のために助成するところにあります。したがって、支給対象者となるのは従業員ではなく、休業手当を支払う事業主です。

1.新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が悪化し、事業活動が縮小している
2.最近1か月間の売上高または生産量などが前年同月比5%以上減少している(※)
※比較対象とする月についても、柔軟な取り扱いとする特例措置があります。
3.労使間の協定に基づき休業などを実施し、休業手当を支払っている

以上の条件を満たせば、全ての業種の事業主が助成対象となります。

助成対象の労働者

事業主に雇用された、雇用保険被保険者が対象です。

学生や主婦アルバイトなど、雇用保険被保険者ではない労働者への休業手当は、「緊急雇用安定助成金」の対象です。

緊急雇用安定助成金とは

緊急雇用安定助成金の趣旨は雇用調整助成金と同じで、休業により雇用調整を行う事業主に支援を行うものですが、助成対象の労働者が「雇用保険被保険者ではない従業員」となる点が違います。

具体的には、労災保険に加入しており、週20時間未満のパートやアルバイトに適用されます。助成内容や申請先などは雇用調整助成金と変わりません。

助成額・助成率は?支給限度日数は何日?

雇用調整助成金、緊急雇用安定助成金ともに、中小企業で、かつ従業員の解雇をしていないなどの要件を満たす事業主への助成率が100%と、最も高くなっています。

助成額は各企業の助成率に休業手当の支払い率を掛け合わせた額で、1人1日あたり15,000円を上限として支給されます。

本助成金の支給限度日数は原則として1年間で100日分、3年で150日分ですが、緊急対応期間中(令和2年4月1日~令和3年6月30日に実施した休業などは、この支給限度日数とは別に支給を受けることができます。

※2021年5月時点

支給フロー

支給までの手続きの流れは以下のとおりです。

休業内容を検討し、労使間で協定を締結する

休業の実施

休業実績に基づく支給申請

労働局の審査後、支給決定額が振り込まれる

申請方法

企業の規模や休業対象者(従業員かアルバイトか)などで多少変わりますが、申出書などの様式に沿った書類に売上データや休業実績の証明などの必要添付書類を揃え、事業所のあるエリアを管轄している労働局かハローワークへ提出しましょう。(郵送可)

雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の問い合わせ先

各都道府県の労働局およびハローワークまたは「学校等休業助成金・支援金、雇用調整助成金コールセンター」(0120-60-3999)で問い合わせを受け付けています。

引用・参照:雇用調整助成金(新型コロナ特例)|厚生労働省

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アルバイト従業員が申請できる「新型コロナ対応休業支援金」とは

事業主ではなく、直接休業をさせられた労働者に休業手当が助成されるのが「新型コロナ対応休業支援金」制度(以下「休業支援金」)です。休業中に事業主から賃金や休業手当を支給されなかった労働者が自ら申請することで、支援が受けられます。

休業支援金はいつまで

休業支援金の申請期限は休業していた期間により変わります。休業期間が令和2年4月~6月であれば令和3年1月8日~令和3年4月であれば同年7月31日がそれぞれ締め切り日です。
※2021年5月時点

支給対象は労働者

先に説明しましたが、休業支援金は事業主ではなく、休業手当が受け取れない労働者に対し助成されるものであることに注意が必要です。

支給額下記の計算式で行われ、一律です。また、1日の上限額は11,000円です。

休業前の1日当たり平均賃金×80%×(各月の日数-就労した又は労働者の事情で休んだ日数)

事業主は支給要件確認書の記入に協力する

休業支援金の申請には事業主の協力が欠かせません。しかし、面倒だという理由や、支給額を労働局から請求されるのではと懸念し、確認書の記入に消極的な事業主もいるようです。

しかし、記入しないで申請すると事業主に対し労働局から調査が行われます。また、事業主がこの休業支援金に実施に関し金銭を負担することはありません。そのため、従業員が申請への協力を求めてきた場合は速やかに協力しましょう。

引用・参照:新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金|厚生労働省

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アルバイト・パートなど従業員の雇用を守るためにできることは何か

上記の助成金制度の利用以外にも、従業員の雇用を守るために次のような方法があります。

資金調達

政府主体の給付金などの制度を活用したうえで、事業継続や雇用維持のために資金がさらに必要であれば、金融機関の融資を受けるのも選択肢のひとつでしょう。

日本政策金融公庫や各民間金融機関・信用保証協会はコロナ禍による事業所の売上減少幅に応じて数種類の支援策を提供しています。返済条件も従来の融資と比べ、元本返済期間の据置期間や貸付期間が長いなどかなり条件が良く、手続きも簡単なので検討してはいかがでしょうか。

参照1:新型コロナウイルス感染症特別貸付|日本政策金融公庫

参照2:経営に支障が生じている方|一般社団法人 全国信用保証協会連合会

ビジネスモデルの変更

来店のみであった飲食店が料理のテイクアウトや宅配を始めるなど、必要に迫られて行ったビジネスモデルの変更で売り上げを伸ばしている企業もあります。

そのほかの業種でも、ECを利用した新たなサービスを始める企業が増えています。この機会に、新たな試みを考えるのも良いでしょう。

売上確保に向けた新たな取り組みを支援する団体もあります。例えば、東京都では「東京都中小企業振興公社」が業態転換支援を行っています。

参照:業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)事業|東京都中小企業振興公社

M&A

事業継続のためさまざまな支援を利用しても、休業が続けば経営は苦しくなります。融資を受けても、このままでは返済の目途がつかない状況が続くと考えて、やむを得ず事業を畳むことを検討する方もいるでしょう。

そのような場合は、M&Aによる事業譲渡という選択肢もあります。他社があなたの事業を譲り受けてくれれば、これまでの従業員を雇用継続してくれることも期待できます。

ただし、雇用を本当に継続してくれるかなど、譲渡側は買手が信頼に足りる相手かをしっかり見抜かなければなりません。だからこそ、信頼できる買手を探すためには、M&Aの専門家に相談し、仲介を依頼することをおすすめします。

飲食業の譲渡であれば、弊社、M&A Propertiesにご相談ください。飲食業界専門のM&Aを多数仲介した豊富な経験と実績で、あなたの売却を成功に導きます。

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まとめ

従業員やパート、アルバイトの雇用を守りたくとも、店が休業し売上げがなければ事業主としても術がないため、助成金の申請をおすすめします。

雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金は、事業主が支払う休業手当を、要件を満たせば全額支援してくれる制度です。給付される期間は元々2020年12月でしたが2021年6月までに延長されており、今後の状況でさらに延長される可能性もあります。
※2021年5月時点

また、雇用維持は休業手当の支給だけではなく、ビジネスモデルの見直しでの雇用継続という方法もあります。闇雲に飛びつくのは禁物ですが、ピンチをチャンスと捉え、新たな路線に活路を見出し、積極的な事業継続に希望が持てるようになれば、それに越したことはありません。さまざまな方法を検討し、最適な方法を見つけ出しましょう。