「アルバイトが店の印象を決めることもある」と聞くと、多くの人が驚かれるのではないでしょうか。
しかし、現在は基本業務のほとんどをアルバイトに任せているところも少なくありません。特に飲食店の場合はアルバイトで回している、というところも多いのではないでしょうか。そうなると、お客様がまず真っ先に目にして、接するのはアルバイトということになります。
アルバイトの印象が悪ければ、お客様はお店自体にも悪印象を持ってしまうことでしょう。
ここでは、良い飲食店のアルバイトと、そうではない店のアルバイトについて実例を挙げて紹介していきます。
不愛想、案内が遅い、反応が鈍い、これらはマイナスの印象が強い
まずはあまりよくなかったお店のアルバイトについて触れていきましょう。
来店時にはコールが鳴るタイプのお店だったのですが、それが鳴っても出迎えもありません。しかし「お客側が勝手に席につく」というタイプのお店でもありません。忙しいのならばまだしも、アルバイト同士が雑談をしているのが入口から丸見えになっていました。
また、店内は常軌を逸したレベルでうるさく、子どもが叫び声と金切声をあげてほかの人の席にまで入り込んでいます。しかし店員がそれを注意することもありませんでした。また、対応も非常に不愛想で応対も遅かったことをはっきりと覚えています。
確かに、アルバイトには社員ほどの訓練は求められないかもしれません。また、お客様のお子さんの場合は咎めにくいというのもあるでしょう。しかし雑談にかまけていて、やるべき仕事をまったくやらないというのは感心できません。
アルバイトの域を超えた接客もある
ただ、このようなお店ばかりではないことも知っておいてほしいと思います。
どんな忙しい環境のなかでも笑顔を忘れず、お客側が望んでいる接客をしてくれるアルバイトも当然います。
以前行ったお店では、2種類のソースから好きな物を選べるようになっていました。ただ私はどちらも食べたことのないソースでしたから、とても迷っていました。そのときに、そのお店のアルバイトの方から提案してもらったのが、「2つのソース、どちらもつけましょうか」というもの。
「迷ったら両方食べたくなりますよね」と笑顔で対応してくれたことが、今でも印象に残っています。
これは本当に「ちょっとした気配り」です。ただ、選ぶ方の人間としてはとてもありがたい申し出ですし、とても心がほっこりするもの。
このような接客は、時間が経っても忘れずに心のなかに残り続けます。
デパートでは短期のアルバイトであっても教育を受ける
「品物の値段が高い」ということでよく知られているデパートではありますが、デパートはその分教育にお金と時間をかけています。
あくまで一例ではありますが、デパートのなかには、短期間のアルバイト(たとえばクリスマスシーズンの増設展示場のアルバイトなど)であっても、「デパートとしての研修」を行っているところもあります。
デパートは接客に対してお金を払ってもらっている、という価値観から、1日みっちりとデパート側からの研修を受けるのです。これに加えて、その増設展示場のお店の講習も受けるケースがあります。研修だけで2日かかりますし、その分の時給も支払われます。
このように、「接客態度が良い」と言われているところは、その分研修にも力を入れています。何が良いのか何が悪いのかをアルバイト自身が知らなければ、そもそも「良い接客」というものはなかなか生まれないとも言えます。
もっとも、上で挙げた「良い接客・悪い接客」の場合、実は良い接客のお店の方が客単価は低いのです。そのため、「商品の値段があがるにつれて求められる接客レベルは高くなる傾向にあるが、商品の値段が安いからといって接客レベルが低いとは限らない」とも言えます。
アルバイトの意識を作るのはお店全体の空気
もう一つ、飲食店を経営する人には忘れてほしくない注意点があります。
それは、「アルバイトの接客態度は、お店全体の空気の鏡である」ということです。
社員や店長の接客技術が高いところは、おしなべてアルバイトの接客技術も高い傾向にあります。反対に、社員や店長が接客に重きを置いていない場合、アルバイトの接客技術もそれに倣ったものになります。
私たちは何かを学ぶとき、「お手本」を参考にします。アルバイトが参考にするお手本は、先輩であり社員であり店長です。この「お手本」がしっかりしていないと、続くアルバイトの質も低くなってしまいます。
あなたが店長の立場にいて、かつお客様から接客についてのクレームをよく受ける、ということであれば、まずはお店全体の雰囲気や、自分自身の接客態度を顧みてみるとよいかもしれません。アルバイトの質を向上させるためには、先輩諸氏の「振り返り」も非常に重要なものだと言えるでしょう。