飲食店が予約の「ドタキャン」を防ぐには

飲食店が予約の「ドタキャン」を防ぐには

飲食店を経営していくなかで、経験したくはないけれど、一度は経験することになるのが「ドタキャン」なのではないでしょうか。今回はこれについて見ていきましょう。


この記事は約5分で読み終わります。

飲食店を経営していくなかで、経験したくはないけれど、一度は経験することになるのが「ドタキャン」なのではないでしょうか。今回はこれについて見ていきましょう。

「ドタキャン」がもたらす影響とは

ドタキャンを一度経験した人ならばその問題を身に染みてわかっているかと思いますが、「まだ経験したことはないけれど、後学のために学んでおきたい」という人もいるでしょう。そんな人のために、まずは「ドタキャンが飲食店に及ぼす影響」について見ていきます。

ドタキャンをされてしまうと、まず席が空いてしまいます。繁忙期などの場合は、その予約を受け付けるために、ほかのお客様を断った、ということもあるかもしれません。直前のキャンセルの場合は席が埋まらず、その分のもうけが確保できなくなります。

もっと大きいのは、「食材の無駄」です。飲食店、特に居酒屋などの場合は、そのお客様のために大量の食材を仕入れることになります。「コーヒーだけ」「お酒だけ」のお店の場合とは違い、食べ物を出す飲食店の場合はこの「食材のロス」が大きく経営に響いてきます。
飲食店の原価率は店によってまったく違いますが、一つの目安である「30パーセント」で計算しましょう。飲み放題がつかないプランで3500円の価格設定をしているコースに30人で申し込まれ、そしてその予約がキャンセルとなってしまった場合、それだけで31500円の損失です。空席になってしまったうえ、これだけのマイナスが課せられるのです。

「お客様がたくさん来るから」と、通常よりも従業員の数を増やしていた場合は、その従業員の給料も保障しなければなりません。時給が1000円だとして3人を増員、3時間シフトで働いてもらっていたとしても、これだけで9000円の損失です。

このように、ドタキャンは飲食店にとって大きな痛手となります。

ドタキャンに対する損害賠償請求について

このようなドタキャンが相次いでしまっては、飲食店の経営自体が崩壊してしまいます。しかし安心してください。民法の416条という強い味方があります。

これは、「契約が不履行だった場合は、損害賠償を請求できる」というものです。「契約」というと、「書面に書かれた書類にサインをして、印鑑を押さなければならない」と考えるかもしれません。しかし実際には、電話のやりとりだけでもこれは成立します。

この民法416条の規定があるため、飲食店側は、客側の勝手なドタキャンによって一方的に泣かされる、という理不尽な状況に陥ることは避けられます。

いったいどれを、どのくらい求められる?

では、実際にはどれくらいのキャンセル料を求めることができるのでしょうか。

これについては、実は一概には言えません。
たとえば予約時間の10分前にいきなり「キャンセルで!」と言われたときと、3週間ほど前に「キャンセルをお願いします」と言われたときとでは、飲食店側がこうむるダメージは大きく違うからです。(また、3週間ほど前の場合は、それまでの間にほかのお客様を確保できることから、ドタキャン扱いにするのは難しいでしょう)

加えて、「どんな料理であったか」も関わってきます。たとえば上で挙げたような、コーヒーやアルコールといった保管期間が長いものを中心としている場合は、キャンセル料も少なくなるでしょう。法律によって認められているのは、あくまで「通常生ずべき損害の賠償」であり、それ以上の金額を請求することはできないのです。このため、満額を求めることはかなり難しいと思われます。

どれくらいの金額を請求するかは飲食店によって違いますし、キャンセル料を求めること自体はまったくおかしなことではありません。

しかしその請求額が、「通常生ずべき損害」を上回っていた場合、お客様の方からの抗弁があることも予想されますし、場合によってはその損害を立証しなければいけなくなる可能性もあります。

この点については特に注意が必要です。また、ホームページなどにもキャンセルについて書いておいた方がよいでしょう。

ドタキャンを防ぐために

では、一歩進んで、「ドタキャンを防ぐためにはどうしたらいいのか」を考えましょう。

まず大切なのは、「連絡先の確保」です。相手のフルネームや電話番号をしっかり聞いておきましょう。会社での忘年会や新年会、歓送迎会の場合は、会社名も聞いておくと良いですね。

また、事前の連絡も大切です。予約された日の数日前に電話で確認しましょう。これはお客側にもメリットがあります。なんとこの電話で、「同系列の近場のお店と勘違いしていた!」ということが判明したケースもあります。(もちろんこの場合は、もともと予約していたお店の方が優先されました)なおこのときは、当然ですが、「ドタキャンを疑っている」というスタンスではなく、あくまで「確認のため」というスタンスをとってください。

ドタキャンは、飲食店にとっては致命傷ともなりうるものです。
しっかりと対策を知っておきましょう。