飲食店主も理解しておきたい融資の返済方法とそれぞれの使い方

飲食店主も理解しておきたい融資の返済方法とそれぞれの使い方

返済方法を見直すだけで資金繰りが安定し経営に余裕がうまれます。そこで今回は融資の返済方法に焦点を当てて解説したいと思います。


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事業主が融資を借りると早ければ融資実行日の翌月から返済が始まります。融資が借金である以上返済は避けられませんが、その返済方法にも多くのバリエーションがあることをご存じですか?また返済方法を深く理解することは事業主にとって何かメリットがあるのでしょうか?

事業主にとって一番大事な点は売上を伸ばすことよりまずは事業の継続のために毎月の資金繰りをいかに安定させるかだと筆者は考えています。資金繰りさえできていれば事業は簡単にはつぶれません。そして銀行から融資を受けている会社の資金繰りにはその借金の返済方法が深く関わっています。

返済方法を見直すだけで資金繰りが安定し経営に余裕がうまれます。そこで今回は融資の返済方法に焦点を当てて解説したいと思います。

元金均等返済方式

元金均等返済方式

事業資金融資の代表的な返済方法と言えば元金均等返済です。これは長期融資に用いる返済方法のひとつで返済期間中、毎月の融資元金を均等に返済する方法です。

例えば、融資金が3,000万円、金利年2.0%、返済期間5年の融資だとすると、毎月の返済元金は3,000万円÷5年(60ケ月)=50万円となります。これに毎月返済日の融資残高に応じて金利が返済額に加わります。この返済の特徴は当初は返済金額が大きく、段々と返済金額が小さくなっていくことです。

なぜ事業資金の代表的な返済方法かというと、これが健全な返済方法だからです。事業先に取って毎月元金の返済は元々の銀行融資を分割して返しているだけで、金利分については事業活動から得た利益分から返済することになります。

当初元金+利息の合計返済額が大きい分当面の支払いは大変ですが、金利分を上回る利益が出ている限り、確実に元金は減っているので融資残高は確実に減っていきます。融資残高が減れば銀行は次の追加融資にも応じやすくなります。堅実に融資を減らしていくという意味では元金均等返済が健全な返済方法と言えるでしょう。

銀行も事業主に融資をする場合、まずはこの返済方法をすすめてきます。

元利金均等返済方式

元利金均等返済方式

一方、元利金均等返済という返済方式があります。これは毎月の返済額を最初から最後まで均一・定額で返済する方式です(ただし端数調整が当初か最終の支払月であります)。文字通り元金と利息込みで返済額を一定にして返済する方式です。

簡単に毎月返済額を出してみます。ただしこれは簡便法です。なぜ簡便法かというと、著者も元銀行員の時、営業の場面でローンを検討している顧客からよく「で、要はいくら支払ったらいいの?」と質問を受けたからです。その場合、回答は概算でこの簡便法を使ってその場で電卓を叩いて結果を出していました。また、計算事例は元金均等返済と同じ事例を使います。

5年間の金利支払額は(3,000万円×年2.0%×5年)÷2=150万円
5年間の金利含む総支払金額は3,000万円+150万円=3,150万円
毎月の元利金均等返済額 3,150万円÷60ケ月(5年)=52万5千円(今回は端数調整不要)
事業主は融資実行日翌月から返済最終日まで元利金込みの返済額を毎月52万5千円定額で払えばいい計算になります。

またこれを実際の計算式が組み込まれたローンシミュレーションで元利金均等返済額を出してみると、毎月の返済額は525,833円となりました。差は約800円です。簡便法と大きな差はありません。事業主の方も元利金均等返済でローンの毎月支払額について目安を立てる時に電卓で簡単に計算できますので覚えておいてください。

この方法では毎月定額なので返済計画が立てやすいメリットがあります。

一方、図に示したように返済当初は返済額の中で元金より金利部分に優先的に多く充当されるので元金の返済がなかなか進まないのがこの返済方法の特徴です。返済期間の半ばで初めて元金返済分が金利返済分を上回るようになります。また元金均等返済と比べても金利を含む総支払額が多くなるのもこの支払方法の特徴なので、事業主にとってはデメリットの多い返済方法とも言えます。

実際、上記の事例を使って支払総額の差をローンシミュレーションで計算してみると、元金均等返済では31,549,968円、元利金均等返済では31,525,000円となり、その差額は24,968円と元利金均等返済が多く支払う結果が出てきます。金利が高くなり、返済期間が延びればこの差がさらに開いてきます。

なおこの支払方法は返済額が定額なので毎月の決まった給与から返済が行われる住宅ローン等個人ローンの返済方法に使われることが多く、事業資金の返済方法として使われることは少ないです。ただし事業資金の返済に使えないわけではありませんし、毎月の返済額が元金均等返済に比べて少ないので、資金繰りがやや厳しい経営者にとっては利用価値の高い返済方法のひとつだと著者は考えています。

据え置き期間

返済には据え置き期間という考え方があります。文字通り融資の返済を一定期間据え置いて支払いをしないという方式です。例えば返済期間10年の融資の場合、最初の6ケ月あるいは1年間、元金は支払わず金利のみ支払う、あるいはその両方の返済をしないという方法です。なぜこのような考え方があるかというと、融資を受けてもすぐには事業でその効果が出ないので一定期間過ぎて利益が出るようになってから返済をしたいという一定数の事業主の要望があるからです。事業で利益が出るようになるまで銀行は据え置き期間を置いて返済を待ってあげるということです。

据え置き期間が必要とされる具体的な事例を上げてみます。
①新規事業で融資を受けたがなかなか売上が上がってこない場合
②融資を受けて新しい設備を導入したがその効果が事業に反映されるのに半年、1年間掛かる場合
③融資を受けて事業を転換したけど、その転換した事業で売り上げが安定するまでしばらく時間が掛かる場合
などです。

事業主は返済期間に据え置き期間を設けることでその間、返済に心を配ることなく事業に専念できるメリットがあります。実際の銀行の現場では融資で顧客の希望でこのような据え置き期間を設けることも多く融資客から重宝されていいます。ただメリットだけでなく、デメリットもあり据え置き期間を置くことでその間支払いをストップすることになり、いざ返済が始ったら毎月の返済負担額が予想以上に増えるということにもなりますので据え置き期間の設定には慎重な検討が必要です。

一括返済と分割返済

これまでは主に長期運転資金や設備資金に関連した長期融資の返済方法について説明してきましたが、これから1年以内に返済期限を迎える短期資金の返済方法について解説します。

短期資金といえば仕入れ資金や納税・決算資金などの季節資金があります。通常3ケ月~6ケ月程度で返済しますが、銀行での基本は3ケ月です。できれば決済日に確実に返済をしてほしいのですが、突発的な別の支払いが発生し資金繰りがうまくいかない場合もあります。決済日に返済できない見込みが事前に立つようなら、事業主はできるだけ早く事前に銀行に申し出て期限の延長を依頼するようにして下さい。そうすれば銀行も応じ易くなります。返済期限直前に申し出るのは銀行を混乱させるのであまり得策とは言えません。

長期資金に比べると短期資金は融資残高がある期間だけ金利を支払えばいいのでコスト的には割安です。ただし一括返済には一度に多額の資金を要しますので資金繰り面から言えばマイナスに作用します。安定した資金繰りから言えば事業主は運転資金は長期で調達して、短期資金はできるだけ納税資金・賞与資金など目的が決まったものにだけ限定して利用したほうがいいと思います。

リスケジュール(返済条件の変更)

事業は調子が良い時ばかりとは限りません。売上がダウンし利益がなかなか出ない期間が続く時もあるでしょう。そうすると当初銀行から融資をしてもらって余裕のあった運転資金も底を付き始め、やがて銀行融資の返済も苦労するようになります。そのまま何も手を打たずに放置していたらやがて資金ショートして倒産です。何としてもここは打開策を見つけねばなりません。

その方法のひとつが銀行融資の返済方法の変更、リスケジュールです。(以下リスケと省略します)

具体的に言えば、今まで支払っていた返済金額をリスケによって軽減してもらう、あるいは一定期間支払いを銀行に猶予してもらうなどです。そしてリスケが実現したらその間に何としても事業を回復させねばなりません。銀行も早めに事業主から業況の報告を受けリスケの依頼を受けたら、融資を引き揚げて事業を潰すのが銀行の目的ではありませんので可能な限り協力すると思います。

返済条件の緩和にはいくつかの方法があります。

比較的銀行が応じ易い方法から並べると
①返済期間を延ばして毎月返済額を軽減する
②元金返済を一時据え置いて業況の回復を待つ(ただし金利のみ据え置き期間も払ってもらう)
③元金・金利とも支払いを据え置いて業況の回復を待つ

ただし据え置き期間にも限界というものがあります。いつまでも銀行が待ってくれるというものではありません。
またこのようなリスケは銀行に取り支払条件の悪化なので、その融資先の取引銀行の支店では単独決済ができません。リスケ案件は全て本部の承認が必要となります。

その場合、銀行がリスケに応じる代わりに事業主がいくつか追加負担を強いられることがあります。

例えば
①融資金利の引き上げ
②リスケ期間中追加融資が不可
③担保もしくは保証人の追加
④最悪融資の担保物件の売却(事業主の自宅等)
などです。

もちろんこのような事態に至ってから慌てて事業主が他行に融資の依頼に行ってもなかなか応じてくれる銀行は少ないでしょう。早め早めの対応が必要なことは言うまでもありません。

まとめ

あらためて返済方法についてまとめてみます。
①長期の融資の返済方法は元金均等返済がベスト
②短期資金の返済は利用を納税・賞与資金等目的が明確なものに限定する
③リスケは業況が悪化する前に早めに銀行に相談すればきちんと応じてくれて資金繰りが楽になる
④資金繰り安定のためには経営努力で売上を上げてきちんと利益を確保する
事業主は一人ひとり経営状態や融資の借入状況が異なります。しかし事業主がこれらの返済方法をうまく使いこなすことで安定した資金繰りが可能になり経営の安定に寄与すると著者は考えています。