飲食店では日々さまざまなトラブルが起きます。もちろんトラブルは起きないに越したことはありませんが、「起きた時にどうするべきか」を考えておくことは非常に大切です。
今回はそのなかでも、大きなトラブルとなる「異物混入」、それも「髪の毛や虫」についてです。
髪の毛や虫の混入は、ほかの「異物混入」とはワケが違う
「髪の毛や虫が料理に入っていた」という文字だけを見ても、眉をひそめる人が多いのではないでしょうか。
その「嫌な感じ」は、この「髪の毛や虫の混入」というトラブルを読み解いていくうえで非常に重要なキーワードになってきます。
髪の毛や虫の混入は、ほかの異物混入とはその性質が大きく異なります。なぜなら、ほとんどすべての人がこれらの混入には強い不快感を持つからです。「飲食店におけるトラブル~異物混入、誤ってほかの食材が入ってしまった」でも触れますが、「ほかの食材が入ってしまっていた」という場合は、アレルギーや極端な好き嫌いがある人でなければ穏便に済ませられることが多いと言えます。たとえ食材が違っても、それは「食べ物」だからです。
しかし、人間の髪の毛が舌にまとわりついたり、小さいウジ虫や羽虫が入り込んでいたりした場合の嫌悪感は計り知れません。「その部分を食べなかったからいいだろう」という問題ではなく、「そのようなものが入っていた料理」を食べていたこと自体に吐き気を催す人もいるでしょう。
基本は謝罪
お客様から「髪の毛や虫が混入していた」と訴えがあった場合は、まずは丁寧に謝罪をします。
お客様が訴えかけていた相手が責任者でない場合は、まずは対応したスタッフが謝罪し、その後責任者に取り次ぎます。責任者も丁寧に謝りましょう。
このときに絶対にやってはいけないのは、「外から入ってきた虫なんじゃないですか」「お客様の髪の毛なんじゃないですか」などの対応です。後述しますが、あきらかに相手側がサギ行為を目的としていると断定できない場合は謝罪に徹した方がよいでしょう。
しばしば飲食店側の視点に立ち、「虫はどうしても混入する」「虫がつかない野菜など逆に怖い」「小さなことを気にし過ぎだ」という意見も見受けられます。しかし自分自身がその立場になったとき、あなたは同じように言えるでしょうか。もしくは、あなたの同行者が非常に気味悪がっているのに、同じことが言えるでしょうか。これらは、被害をこうむったお客様側からの言葉ならまだしも、飲食店側が口にしてよいことではありません。
下げたお皿は、厨房で撮影をします。そしてこのような問題があったことを、従業員全体で共有することがとても大切です。
加えて、「どの過程で混入したのか」を突き止めましょう。また、衛生管理に問題はなかったか、ということも、あわせてチェックをする必要があります。
また、保健所に店側から電話をするのも大切です。場合によっては保健所から指導が入る可能性もありますが、「即時営業停止」とまでされることは可能性としてはほとんどありません。
料理の作り直し、もしくはお代をいただかないというやり方が普通
このような訴えがあった場合は、同じ料理を作りなおしてお出しする、もしくはその料理の分の料金をいただかないという対策をするのが一般的でしょう。
「同じ料理を作りなおします」とした場合は、ほかの料理を差し置いてでも、真っ先に作りはじめてできる限り早く提供してください。また、その際もお詫びは忘れずに。
「気分が悪いのでもういらない」
「時間がないのでもう食べていられない」
「お腹がいっぱいなので、作りなおしてもらっても困る」
という場合は、代金をいただかないかたちで対応します。
相手がサギ目的の場合はどうすればよいのか
今までお話してきたのは、お客様に悪意がない場合です。
ただ、このような「髪の毛や虫が入っている」というクレームは、昔からしばしばサギ行為と結びつきます。実際はお客側が故意に持ち込んだものであるにも関わらず、それを店側のせいにして飲食費を浮かせたり、あるいは慰謝料という名目でお金をとろうとしたりするケースです。
「異物の混入」はどちらのせいかというのが非常に判断がしにくいため、このようなことが起こりうるのでしょう。
相手がサギ目的かどうかを判断するのは、極めて難しいと言えます。ただ、いずれの場合にせよ、「慰謝料をその場で払って終わりにする」というのは、極めて悪手だと言わざるを得ません。これをしてしまうと相手はさらに恐喝してくる可能性がありますし、何度も繰り返す可能性もあります。そのため、慰謝料などを要求してくる場合は毅然とはねのけましょう。保健所に自ら電話をしたり、場合によっては警察に話したりすることも大切です。
また、自店舗がチェーン店であるのなら、必ず上部に報告をし、自分のお店だけで抱え込まないようにすることも大切です。
髪の毛や虫の混入は非常に厄介なもの。それを理解したうえで、対処したいものですね。