お客様が快適な時間を過ごすために、店側は空調に気を配らねばなりません。
お店の温度としては何度くらいが望ましいのか、それにあった従業員の洋服はどのようなものなのかについて考えていきましょう。
一般的な温度は夏が28度、冬が20度
環境省が提唱しているエアコンの設定温度の目安は、「夏が28度、冬が20度」というものです。ただ、体感的にはこれはかなり「暑い」「寒い」と感じられる温度かもしれません。実際に、マクロミルがとった調査によれば、もっとも「過ごしやすい」という回答が多かったのは25度のときであるということです。
一方、「飲食店の冷房が強すぎる」と述べる人は、女性は40パーセント、男性は19.4パーセントです。
そのため、極端に温度を下げ過ぎるのも望ましくありません。
電気料金の話
店舗に使われる電力量のなかで、もっとも消費量が多いのは、実は照明器具ではありません。厨房で使う機械の電気料金もそれほど高くはなく、消費電力のうちの半分近くは空調(エアコン)で占められています。温度を1度あげると消費電力は1割ほども下がると言われているので、電気料金が経営の負担になっているという場合は、一度見直してみるとよいでしょう。上でも話した通り、お客様にとっても寒すぎる温度になっている可能性があります。
また、日差し避けなどを上手に使って日差しをカットし、店内の空気をあげすぎないように注意することも大切です。
冬場の対策はとにかくしっかり!お客様にも影響します
ここまでは「夏の空調」についてお話してきましたが、冬場のことも考えなければなりません。
まずは私自身の実体験からお話しましょう。
私は以前、非常に寒さが厳しい土地で飲食店の従業員として働いていました。冬場に外で働こうものならば、本当に命の危険が感じられるような土地です。
ある日、その飲食店の空調システムが壊れました。なにしろ雪も深い土地ですから、暖房が壊れるとお店自体が立ちゆきません。そのためすぐに店長に連絡をしました。しかしそれから1か月以上経っても、エアコンは壊れたままでした。再三にわたる従業員からの説明要求の結果、店長が私たちに「地区長からの認可が下りなければ暖房は直せない」と説明しました。
チェーン店であったため、まず従業員が店長に報告をあげ、その報告を地区長が受け、地区長が認可と手配をしなければ暖房は直せない、というわけです。そのときの店内の温度は氷点下になっており、お客様からも多くのクレームをいただきました。
「寒すぎる」
「暖をとろうと思って入ってきたんだけど…」
「ごめん、パフェを頼んだけど寒くて食べていられない。キャンセルをして」
というような訴えを、毎日必ず聞いていました。ちなみに、お客様の滞在時間も非常に短くなってしまったため、売り上げも激減してしまいました。私がお客様の立場でも、二度と来ないと思います。
連絡系統を守ることは、組織を運営していくうえで非常に重要です。また、予算の組み方もあるでしょう。しかしこのようなことでは本末転倒です。自分が飲食店を経営することになったのなら、まずは「空調は大切なものである」ということをしっかりと認識しましょう。
人それぞれ「望ましい温度」が違う場合の対処方法
ただ、どれだけお客様に気を使っていても、「どれくらいの温度が心地よいか」は人によって違います。一人ひとりの要望に合わせた空調管理は、なかなか難しいでしょう。(以前私たちしかお客がいなかったときに、「お客様の御希望で温度調整をしますね!」と言ってくださったお店もありましたが、これは例外的な事例だと思われます)
そのため、「お店側でできる対策」を考えることも重要です。
一番一般的な解決策としては、ひざ掛けなどを用意することでしょう。漫画喫茶などでも用意しているところが多いと思われます。大判のものを用意しておけば、適宜肩掛けなどにも使えます。
それでも「まだ寒い」ということであれば、風量などを調整したり、湿度の見直しを行ったりすることをおすすめします。
従業員の制服も季節に合ったものを
「従業員の制服は一年を通して同じだ」というお店が大半なのではなのではないでしょうか。新しく制服を作ろうとするとその分コストもかかるからです。また飲食店の場合、「料理に袖が触れては不衛生だ」ということで半袖にしているところも多いと思われます。きちん空調が管理されているお店ならば、寒いこともありません。
ただ、これも実例ですが、寒い時期や寒い地方などは、お客様から「寒そう……」「見ていて不安になるんだけど」というお声を掛けられることもあります。また、厨房などは暖房を効かせられない、というケースもあるでしょう。そのようなときのため、上着やベストを用意しておくのも一つの方法かもしれません。
「温度」は、食欲にも影響するもの。しっかり管理しておきたいですね。