「欠勤」は大きな問題です。シフト制でお店を回すことの多い飲食店の場合、突然の欠勤は店の運営自体に影響を及ぼします。人が1人足りなかったことで、お客様をお待たせしてしまったり、サービスが行き渡らなかったりすることはよくあります。また、「夜中なので、厨房1人、ホール担当1人で回している」という場合は、店を開くことすら難しくなるでしょう。
従業員の欠勤に対しては、どのように向き合っていくべきなのでしょうか。
欠勤の場合の賃金の支払いについて
まず知っておいてほしいのは、原則として、「欠勤をされたからといって、それを理由に、罰則金を支払わせることは認められていない」ということです。
労働基準法では、「働かなかった分の金額は支払う必要はない」とされています。このため、もちろん出勤してこなかった従業員に対しては、その報酬を支払う必要はありません。
しかし、経営者側としては、「シフトに穴をあけられ、残されたスタッフが大変な思いをした(もしくは急きょ他のスタッフに出てきてもらった)。それなのに、ペナルティなしはおかしい」と言いたくなるのも自然のことです。
労働基準法では、このような場合に対して、「減給」というかたちで、経営者側の利益を守る方法が認められています。
これは労働基準法第91条に定められているもので、
・1回の減給が、その人の1日分の平均日給の50パーセント未満であること
・減給された金額が、その人の1回分の支払い総額の10パーセントを超えないこと
を守っていれば合法として認められます。
これにより、経営者の利益もある程度までは認められているわけです。
こんな規則は認められない
上の話をよく読めばわかるのですが、「無断欠勤1回で3万円の罰金を徴収する」「欠勤をしたら、1か月の給料の25パーセントをカットする」というような、労働者にとって著しく不利になるような契約は認められていません。また、この実質上の「罰金」は、就業規則に定め、それが労働者との間で合意に至っていなければいけません。特に、経営者側のなかには、「店側に不利になる休日は許さない」「見せしめのためにも罰金をとらなければならない」「こう書いておけば、勝手に休むことはなくなるだろう」と考える人もいますが、このようなことは違法行為であると理解しておく必要があります。
労働者側にとっては、「無理な罰金は請求されない」というメリットがあり、経営者側にとっては「まったくペナルティを与えられないわけではない」ということで、このような就業規則は意味があるものだと言えるでしょう。
無断欠勤と解雇について
ここまでは、「1日だけを休む」という方向の話をしてきました。実際、たとえ急に休みをとるにしても、「病気で38度の熱がある」「事故を起こしてどうしても行けない」というような連絡が入った場合は、罰金などはとらない会社が主流なのではないでしょうか。また、社会通念上もこのようなスタイルで行くのが普通です。
ただし、「無断欠勤をずっと繰り返している」「無断欠勤の期間があまりにも長い」という場合は話は別です。
たとえば、無断欠勤の場合でも、「突然倒れてしまい、気が付いたら病院だった。会社に連絡もしないまま1週間もたっていた」というような場合は、その人を解雇することはとても難しいと言えます。このような不測の事態では、「連絡をしろ」ということ自体無理ですし、一人暮らしの場合は気づかれるのもとても遅くなるからです。
ただし、「健康な状態であり、かつ何度も『出勤せよ』と督促状を出しているにも関わらず、2週間以上も出てこない」「特段の理由がないにも関わらず、何度も何度も無断欠勤を繰り返す」といった場合には、懲戒解雇することも可能になってきます。
注意してほしいのは、その「期間」です。
「1週間以上の無断欠勤」というと、非常に長く感じられます。飲食店の場合は特に、来るか来ないかわからないその人のために、ほかのスタッフを増員するべきかどうかも迷われることでしょう。
ただ、実のところ、厚生労働省では、「無断欠勤が2週間以上にわたること」が一つの受験とされています。この通知はかなり重く、就業規則によって、「無断欠勤が3日以上続いた場合は解雇する」とされていても、この通知の方が優先されます。
また、上でも述べたような「督促」は絶対に必要だと言われています。「飲食店側が、早く出てこいと請求しているにも関わらず、まったくそれに応じなかった」という、一つの「実績」が、解雇をするときには重要なのです。
飲食店においては、従業員の欠勤トラブルはよくあることです。しかし、法律的な解釈をしっておかないと、経営者側にとって不利なことが起こる可能性もあります。認められる罰則規定や解雇条件をしっかり把握しておきましょう。