飲食店は従業員による食器の破損を弁償させられるか?

飲食店は従業員による食器の破損を弁償させられるか?

飲食店で従業員が食器を割ってしまった場合、その損害に対するお金は、いったいだれが払うのでしょうか。


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飲食店を経営するなかで、欠かすことのできないアイテムの一つに「食器」があります。紙コップやプラスチックの器を使って料理を出す、というところは原則としてありませんから、食器は陶器製や磁器製となるでしょう。

これらは非常にすてきなものですが、同時に、「破損」の可能性も秘めています。飲食店で従業員が食器を割ってしまった場合、その損害に対するお金は、いったいだれが払うのでしょうか。

「什器」は非常に大きな割合を占める

飲食店において、「什器(食器)」はとても重要な部分です。開業資金全体の20パーセントを、このような「備品」が占めていると言われています。もっともこの「備品」には什器以外にも機械なども含まれていますが、それでも、かなり大きい割合であることは間違いありません。

特に、「器にこだわっている」「フレンチの店なので、よい食器を使っている」「一品物の什器を使っているので、割ったら取り返しがつかない」というような飲食店を経営している人にとっては、「食器が割れること」は大きなリスクだと言えます。

たかが皿一枚、されど皿一枚。1日に1回だれかが、1枚1000円の食器を割ってしまうとすれば、30日間で30000円です。これは決して少ない金額ではありません。

原則として、従業員が食器を割っても弁償はさせられない

「何度も食器を割ってしまう従業員がいる」
「非常に高額な食器を割られてしまった」
「ほかには代えがない食器がかけてしまった」
ということであれば、従業員に対して損害賠償を要求したくなるのは当然のことです。何度も食器を割られてしまえばそのたびごとに買いなおしのための経費がかかりますし、高額な食器も欠けてしまえば使えません。代えがない食器を傷つけられたのならば、気持ち的にもおさまらないでしょう。

こんなとき、食器を割ってしまった(欠けさせてしまった)従業員に対して、損害賠償をすることはできるのでしょうか。

これについてですが、残念ながら、損害賠償を求めることはできないと考えるのが基本です。

飲食店で働いていれば、「食器を割ること」はある程度予想されたトラブルですし、その責を従業員に帰することは難しいと考えられているのです。たとえかたちのうえでは「過失」であったとしても、従業員の給料から天引きしたり、従業員から金銭を受け取ったり、従業員に買いなおしを求めたりすることはできません。食器では考えにくい話ではありますが、これは「機械だ」と考えるとわかりやすいでしょう。非常に高額な、それこそ何千万もする機械を従業員が壊したからといって、その責任を従業員に求めてしまえば、その人の人生自体が狂ってしまいます。

もっとも、従業員の方に、重大な過失があった場合はこの限りではありません。
ただしこの場合であっても、損害賠償の全額を求めることは難しいと思われます。契約書に、「損害を起こした時はその賠償を求める」とあれば、多少は払われる可能性がありますが、これも100パーセント認められることはあまりないと思われます。

損害賠償を求めるケースの場合の注意点

仮に、従業員に「重大な過失」があった場合でも、それを給料から天引きすることは認められていません。

労働基準法により、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その金額を支払わなければならない」という決まりがあるからです。そのため、損害賠償を求める場合は、まずは給料をすべて支払った後で、また新たに損害賠償を求めるかたちをとる必要があります。一応、「従業員本人が天引きされることをよしとした」という場合は天引きすることができますが、これは後でもめることがあるのでやめておきましょう。

そもそも食器を割らないようにするためには

では、そもそも食器の破損をさせないためにはどのようにすればよいのでしょうか。

可能な限り、割れにくい素材のものを使いましょう。ただし、プラスチックなどの素材は安っぽく見えてしまうこともあるため、よく比較検討をして選ぶ必要があります。

また、割れやすい部分が多い食器については、事前に意識を共有しておきましょう。

一つお伝えしたいのが、「食器が割れたからといって、それが必ずしも従業員のせいとは限らない」ということです。食器は摩耗していくため、きちんとした手順で食器洗浄機にかけていたとしても、食器洗浄機の水圧で割れてしまうことがあります。また、食器のなかには、そもそも食器洗浄機にかけてはいけないものもあります。同じ種類の食器の破損がどの時間帯でも続くようならば、これについても見直しを行いましょう。

飲食店のなかには、「食器を割ったらメモに残しておくこと」というスタイルをとっているところもありますが、このような方法をとる場合は、単なる「さらしあげ」にならないように注意することも必要です。これが行き過ぎると、「破損したけど書かないでおいて、次の時間の人に責任を押し付けちゃえ」という従業員が出てくることも・・・・・・。