飲食店でのトラブルでよくみられるトラブルの一つが、「お客様が騒がしい」というものでしょう。従業員同士のトラブルや、お客様からのクレームの場合は対応がしやすいのですが、このケースの場合、なかなか対応がしにくいということで悩む人も多いかと思います。どうやって対応していけばよいのでしょうか。
「お客様がうるさい・騒がしい場合」の対処が難しい理由について
「お客様が騒がしい場合」の対処の難しさは、「不快に思うのも、不快にさせているのも同じ立場(お客様)である」ということです。お客様→従業員へのクレームの場合、基本的には丁寧に接し、お客様の言い分をよくお聞きすればそれですみます。もちろん度を越えた要求や見当違いのクレームを飲む必要はありませんが、「言う側」と「言われる側」の立場に上下関係が存在するので対処がしやすいのです。
しかし「お客様が騒がしい場合」はそうではありません。迷惑を掛けられているのも、お店側からすれば大切な「お客様」であり、同時に迷惑をかけているのも、お店側からすれば大切な「お客様」です。
店側からの取り組み、周りのお客様からの言葉
1つのグループがあまりにもうるさいと、周りのお客様から、「あのグループがうるさいのだけど」と従業員側にクレームが来ることがあるでしょう。このようなクレームを受けた場合、従業員は必ずそのグループに働きかけなければなりません。また、当たり前のことですが、注意をしに行くときには、絶対に「あちらのお客様からうるさいとお声があがりましたので」のようなことは言ってはいけません。あくまで「お店側から」というスタンスでお声をかけなければなりません。
「どこまでを許容して、どこまでをアウトとするか」という見極めは、かなり難しいと思います。たとえば極端な話、「店自体のバックミュージックもうるさく、そもそも大勢の人が大声で会話をしているお店」の場合、たとえ1つのグループが大声で騒いでいたとしても、それが許容されるでしょう。逆に、静かな落ち着いた空間を旨とするお店の場合は、前者のお店では許容範囲内だった声の大きさがNGになってしまうこともあります。
ただ、周りのお客様の反応や表情を見て、「うるさいと思っているかどうか」というのは実はある程度見分けが付きます。あからさまに眉を顰める人もいますし、そのグループに注目をする人、片耳を塞ぐ人……このような動作が見られたら、たとえクレームがなくても、お店側から行動を起こすべきです。
基本の対応、まずは優しく
では、このようなときにはどうすればよいのでしょうか。
最初にやりたいのは、「お声かけ」です。
お客様が騒がしい場合、それにはいくつかの理由があります。まず一つめは、「騒がしくする意図などまったくなかったのに、たまたま場が盛り上がり、知らず知らず大きな声を出していた」というケース。
2つめのケースは、「そもそも、大きな声を出してもよいようなお店である、ということを知らなかった」というケース。たとえば、居酒屋で容認される声の大きさと、フレンチのフルコースが出てくるようなお店では、「許容される声の大きさ」も「求められるマナー」も違います。
3つめのケースは、「周りが迷惑に思おうが、自分たちも客なのだから、騒がしくしてもよい」と考えているケースです。
1つめのケースの場合、最初から強く言ってしまうと、騒がしくしていた方のお客様に恥をかかせてしまったり、怒りを買ってしまったりするケースがあります。また、2や3のケースであっても、「静かにしてください」と頭ごなしに言ってしまうと、反感を買ってしまうことでしょう。
そのため、最初はまずは優しく注意を促します。
「お楽しみいただけていて、とても嬉しく思います。ただ、少し声が響いてしまうので、お声を落として頂けると幸いです」のような言い回しです。悪意がないグループの場合、こう伝えれば、「ああ、声が大きかったんだな」「このお店では、あまりはしゃぎすぎてはいけないんだな」と感じて少し声を落としてくれることでしょう。
それでも引かない場合は少し強めに
ただ、悪質な2のケースや3のケースの場合は、これでひかないこともあるでしょう。その場合は、「周りのお客様のご迷惑にもなりますので」と強めに注意をします。
この言い回しは、「(あなたと同等の立場の)お客様が迷惑をしている」ということを伝える言葉であるため、かなりの効力を発揮します。
ただ、非常に悪質な場合は「そんなことを言っているのはだれなんだ」と言われることもあるかもしれません。このあたりは使い分けが難しいのですが、その際は、「先ほども申し上げましたが、お声が響いておりますので……」と続けるようにしましょう。
いずれにせよ、お客様が騒いでいるときに、それを放置するのはよくありません。「あそこの飲食店は、騒いでいる客にも注意をしない」ということになれば、お店はどんどん騒がしくなりますし、マナーのよいお客様の脚は遠ざかってしまいます。