お客様と対応するのは、料理を作っているコックではなく、ホール担当者です。ホール担当者の印象がお店全体の印象を大きく左右します。そのため、ホール担当者には、きちんとした接客態度でお客様をおもてなしすることが求められます。
まずは言葉遣いに注意しよう、その心配り
ホール担当者にとってもっとも大切なもののうちの一つが、「言葉遣い」です。
ホール担当者は、常に丁寧な態度でお客様に接しなければなりません。「言葉」はその象徴でもあります。ですます調での会話を基本として、正しい言葉遣いを心がけるようにします。
私は基本的には「お客側」として行ったとき、常に敬語でお店の人に話しかけます。しかし何度か、こちらが丁寧語で話しているにも関わらず、「○○だから××だよ!」「▼▼がいいよ」のような案内をされたことがあります。もちろんお店の雰囲気にもよると思うのですが、お客側が丁寧語で話しかけているのであれば、従業員もそれに倣わなければなりません。
また、挨拶を忘れないようにします。「いらっしゃいませ」「お待たせしました」のような言葉は、接客の基本となるものです。
加えて、この言葉に「表情」を持たせるようにするとよいでしょう。「いらっしゃいませ」「お待たせしました」も、まったくの仏頂面、まったく抑揚がない感情のこもっていない声であったのなら、お客様は決して気持ちよくはなれません。マニュアルを棒読みされていることを、愉快だと思う人はいないからです。
ただ、お店の雰囲気によってはある程度砕けた言葉遣いが許されることもあります。基本は丁寧語で感情豊かに接しますが、ケースバイケースで加減してもよいでしょう。
なかなかマニュアル化しにくい「気配り」ができれば
一段上のホール担当者になれる
「気配り」は、非常に言語化やマニュアル化しにくいものです。人それぞれで求める気配りが違いますし、状況によって大きく異なります。
一例として、一つのエピソードを紹介しておきましょう。
大人と同じ料理を食べられる、しかしまだ箸使いがうまくはない小学校低学年の子がいました。従業員は、「骨がたくさんあったら食べにくいだろう」と考えて、魚の身を骨から外しておきました。
しかしそれを見たご両親は怒ってしまいます。「自分で何でもやりたい年頃だし、こちらもそういうことを経験させたい。それなのに、勝手にほぐすとは何事だ」というのがその理由でした。
従業員は、間違いなく「気配り」からこのような行動をとったのだと思われます。しかしそうであっても、場合によっては逆に怒られてしまうこともあります。このようなことがあるため、「気配りのマニュアル化」は非常に難しいのです。
ただそれでも、やはり「少しでもお客様に快適な空間を作りたい」と考えることは大きな意味があります。
たとえば、水。お客様の水のグラスが空になっているのに、まったく気づかずに放置をしているということはありませんか。またコードレスチャイムのないお店の場合、お客様が手を挙げているのに気づかなかった、ということは大きなクレームにもなり得るので注意が必要です。
忙しくなると、一つ一つのテーブルへの目配り、心配りがおろそかになってしまいがちです。これは従業員の立場から考えれば、無理からぬことだと言えます。
ただ、「お店が忙しい状況」というのは、お客様もイライラしている状況だということを忘れないでください。なかなか料理が出てこない、水のおかわりがこないなどの些細なことが少しずつストレスとなってお客様の心に積もっていくのです。そんなお客様のストレスを和らげることができるのは、やはり、店員の気配りなのです。
「一声かけること」ができるかどうかが重要
「心配り」とも繋がるところがあるのですが、ホール担当者に求められる資質の一つとして、「ためらわず人に声を掛けられること」が挙げられるのではないでしょうか。
お店が混んできて、コードレスチャイムで呼ばれてもすぐにはうかがえないこともあるでしょう。順番にテーブルをまわるので、たった今呼ばれたテーブルの横をすり抜けて、ほかのテーブルに注文を聞きに行かなければならないこともあるかもしれません。
そのような場合、すり抜けていくテーブルのお客様に一言、「すぐにお伺いしますのでもう少々お待ちください」と声をかけられるかどうかで、そのホール担当者の評価はわかれます。
一言声をかけてもらえれば、お客様は、「聞こえていないのかな」「無視された」と感じないでしょう。実はこのお声かけをすることは、お店側にもメリットがあります。「聞こえていないのかもしれない」と感じたお客様にコードレスチャイムを連打される、という事態を回避することができるからです。
一例として「声かけ」を挙げましたが、「忙しいときでもお客様に配慮できる」というメンタリズムは、それ以外のところでも必ず生きてきます。