消費税と総額表示
消費税とは国内で販売される商品やサービス全般に課せられている税金で、現在税率は8%、政治的判断で2017年4月の実施が延長されたものの近い将来10%に引き上げが予定されています。
事業主が商品・サービスを販売する時にその商品・サービスの本体価格に消費税を上乗せして販売価格を設定し、販売後、消費税込みで売上代金を回収するので、いわば事業主は消費税を国に代わって一時的に消費者から「一旦預かる」形になります。そのため、事業主はその消費税を最終的には毎年確定申告によって国に治める義務が生じます。
また事業主はその消費税の取り扱いについて商品・サービスを顧客に販売する前に看板やメニュー、POP、ホームページなどに大きく表示して掲示する義務を負っています。
表示は支払う消費者の観点に立ち「総額でいくら支払うか」という「総額表示」が基本であり、以下のような表示になります。(税額は8%で試算)
9,180円 (税込み)
9,180円 (税抜き価格8,500円)
9,180円 (内、消費税680円)
免税事業者・課税事業者
全ての事業者が消費税納税の義務を負うわけでなく免税事業者と言われるグループがあります。前々年度の課税売上高が1千万円以下の場合、その事業者は消費税の納税義務を免除される「免税事業者」となります。
基準が前々年度の課税売上高なので、特に新規開業初年度、及び2年目は基準となる前々年度売上高がないので、自然と消費税納税義務は免除となり、さらに3年度目以降も前々年度売上高が1千万円以下なら引き続き免税事業者として取り扱われます。顧客から徴収した消費税はもし個人事業主ならその所得として計上されることになります。
一方、前々年度の課税売上高が1千万円超の場合、その事業者は「課税事業者」として取り扱われ、翌年度確定申告して消費税の納税義務が発生します。飲食店の個人事業主のケースだと、その納税は翌年度の3月31日が期限となります。
消費税計算方法 その1・原則課税方式
消費税の計算方法には2通りあります。そのひとつが原則課税方式で、これは個々の取引ごとに消費税を計算して最終的に消費税総額を計算する方法です。
事業者は販売先に商品・サービスを消費税込みで販売する一方、仕入先から仕掛品や材料を消費税込みで購入するので消費税の計算式は以下のようになります。
売上代金 × 8% - 仕入代金 × 8% = 消費税額 (納付税額)
この方式は個々の取引ごとに消費税を計算するので正確なのですが、一方作業の煩雑さにおいては事業主にかなりの負担になるデメリットがあります。
消費税計算方法 その2・簡易課税方式
原則課税方式のデメリットをカバーするためにもうひとつ、消費税を計算する方法が簡易課税方式です。この方式は売上高が少なく経理スタッフもいない個人事業主中心に適用される方法で、現在年間売上高が5千万円以下の事業者に限り認められています。もちろん5千万円以下の事業者が原則課税方式を採用することもできます。
簡易課税方式では仕入にかかる消費税を「みなし仕入率」という数字を使って出すことが認められていています。みなし仕入率とは売上に関する消費税のうち、どれ位が仕入に関わる消費税かを示した割合のことです。現在そのみなし仕入率は業種ごとに5つのグループに分けられています。飲食店の場合、その第4グループに所属し、みなし仕入率は売上の60%と定められています。
そこで簡易課税方式を使った消費税の計算式は以下のようになります。
売上代金 × 8% - (売上代金 × 8% × 60%) = 消費税額 (納付税額)
飲食店の個人事業主が選べる課税方式
さきほど述べたように簡易課税方式は現在年間売上高が5千万円以下の事業者に限り認められている方式ですが、同時に原則課税方式を選ぶこともできます。
飲食店の個人事業主はほとんどこの現在年間売上高が5千万円以下の事業者になると考えられますが、それではどちらの方式が飲食店の個人事業主にとってよりメリットがあるでしょうか。
結論から言えばケースバイケースです。事業者ごとに納税総額が変わることもあるので、どちらの方式がいいと簡単に結論は出せません。ただし一度簡易課税方式を選ぶと最低2年間は原則課税方式に戻せない制約があるので、担当税理士とよく相談して課税方式を選ぶ必要があります。
総額表示 (内税表示)・外税表示
消費税がスタートした時は値段の表示について、総額表示 (内税表示)するか、外税表示するかでかなりの議論がありました。現在は両者の表示方法が混在して運用されていますが、この運用も平成29年3月31日までと言う期限付きで、以降は全て総額表示 (内税表示)で表示することが法律で定められております。そのため、これから飲食店を開業しようとしている事業主もそれを意識して準備を始める必要があります。
総額表示(内税表示)とは支払う消費者の視点に立って消費税込みで販売代金を掲示する方法です。
(税額は8%で試算)
9,180円 (税込み)
9,180円 (税抜き価格8,500円)
9,180円 (内、消費税680円)
一方、外税表示とは消費税を実際の価格とは分けて表示し掲示する方法です。(税額は8%で試算)
8,500円 (税別)
8,500円 (税抜き価格)
8,500円 (本体価格)
この外税表示は表面的な販売価格を小さく見せることができるので、値上げや売上減少に神経質な事業主には人気のある表示方法で依然として利用されている表示方法です。
飲食店の消費税表示
しかし、すでに平成29年3月31日を期限として総額表示(内税表示)に全事業主が移行することが定められているので、事業主はその前提で看板やPOP・メニューなどには総額表示(内税表示)で準備するほうが変更に伴う表示ロスが少なくていいと考えます。
さらに今後、消費税率そのものも10%からさらに上乗せも考えられますので、都度、看板やメニューを頻繁に変えなくてもいいような対策も求められます。著者の提案としては税率の表示はやめて、例えば税込みの販売価格のみ張り替えることで簡単に価格変更ができるような対策を取ることがいいのではないかと思います。たとえば9,180円(税込み)のようにです。これだと旧価格の上に簡単に新しい価格を張り付けるだけで済みますので省力化できます。
消費税表示の例外・レシート
一方、消費税の表示では総額表示(内税表示)の例外なのが飲食後に顧客に交付するレシートの取り扱いです。筆者もコンビニやいくつかの商店で確認しましたが、これは現在もほぼ外税表示となっています。
なぜかというと、事業主が商品・サービスを「販売する前」に価格に総額表示 (内税表示)で消費税を掲示しなければなりませんが、レシートは顧客が価格を見て納得して商品・サービスを購入した後に発行する「領収書」なのでこの規定の制限を受けないからです。
将来このレシートの表示がどのように取り扱いされるかはまだ不明ですが、それも含めて飲食店の事業主は将来の消費税の動きや価格の表示方法には万全の注意を払っておく必要があります。