飲食店の「煙草」をどう考える?~禁煙、分煙、喫煙可

飲食店の「煙草」をどう考える?~禁煙、分煙、喫煙可

飲食店の経営者にとっては、「煙草」をどう考えるべきか、というのは一つの課題です。今回は、飲食店と煙草の関係とそのあり方について見ていきましょう。


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飲食店の経営者にとっては、「煙草」をどう考えるべきか、というのは一つの課題です。今回は、飲食店と煙草の関係とそのあり方について見ていきましょう。

煙草の喫煙率と周囲の考え方

お店を禁煙にするか分煙にするか、それとも喫煙にするかを考えるのであれば、現在の日本の喫煙率の状況を把握しておきたいものです。

平成元年は、男性の喫煙率は55.3パーセントでした。また、女性の喫煙率は9.4パーセントでした。しかし平成25年のデータでは、男性の喫煙率は32.2パーセント、そして女性の喫煙率は8.2パーセントとなっています。

女性の喫煙率はどの年でも10パーセント前後であり、大きな違いは見られません。「8.2パーセント」という数字は、25年間のなかではもっとも少ない数字ではありますが、誤差範囲内です。

注目したいのは、男性の喫煙率の変化です。わずかな増減はあるものの、基本的には男性の喫煙率は年々減少傾向にあります。現在は煙草の害や値上がりも問題になっているため、今後も喫煙率はどんどん下がっていくと思われます。

また、周りの人の目も、年々喫煙者に厳しくなっています。

「飲食店では分煙すべき」と答える人が○パーセント

保険クリニックのPRTIMESが2015年に成人~60歳までの500名を対象としてとったアンケートがあります。そのなかでは、「レストランなどの場において、分煙をする必要はあるかどうか」という設問が設けられていました。この解答として、男性の67.5パーセントと女性の80.3パーセントが「分煙すべきだ」としています。「分煙をしなくてよい」と答えた層は、女性の場合は5パーセント以下、男性の場合でも15パーセント以下にすぎません。

また、東京都が実施した「飲食店の受動喫煙防止に向けた取組状況調査」でも、非常に興味深いデータが出ています。これは平成25年にとられたデータですが、平成20年には「全席禁煙である」と答えたお店はわずか8パーセントであったのに対し、平成25年の段階では21.3パーセントに増えていた、とあるのです。また、分煙を実施しているところも、14.6パーセントから21.1パーセントに増えました。

平成25年の段階では、「分煙も禁煙もしていない」と答えた割合の方が少しだけ多いと言えます。しかし上記であげたデータとあわせて考えれば、「現在はまだまだ煙草を吸えるところも多いけれども、多くの人が分煙を望んでいる。そのため、今後も分煙や禁煙を徹底しているお店が増えていくし、支持されていく」と言えるでしょう。

分煙の取り組み~分煙の形態はどのようなものか

「今はまだ喫煙席ばかりだが、いずれは分煙にしていきたい」「自分で飲食店を開くときには、分煙したい」と考える人に知っておいてほしいのが、「分煙の形態」です。

分煙のやり方はいくつかあります。

まず1つめは、「喫煙エリア」と「禁煙エリア」をわけるという方法です。L字型のお店などと相性がよい形式であり、喫煙スペースと禁煙スペースを分けるようにします。このタイプの場合、エリアが近すぎると煙が流れ込んでくるので、喫煙スペースと禁煙スペースの間にドリンクバーの設備やレジスターなどを置いて物理的に距離をとるようにする形が一般的です。

この方法の場合、分煙効果自体はそれほど高くはないものの、ローコストで展開できるのが魅力です。また、既存の店を分煙方式にしていく、というときにも使えます。

「喫煙ルーム」として、周りをすべて囲いで覆ってしまうタイプの分煙もあります。このやり方は分煙効果がとても高く、非喫煙者にとってはとても快適です。しかし「隔離部屋」という印象が強く出るため、飲食店にはあまりなじまないかもしれません。

外に喫煙スペースを設けるところもありますが、腰を落ち着けて食べるタイプのお店の場合はおすすめできません。ただ、同じような考え方で、「同じ店内のなかで、ガラスの壁などで喫煙スペースと禁煙スペースを分けてしまい、入り口をそれほど大きくはとらない」という方法を使うことは有効です。壁のすべてを仕切るわけではなく、あくまで「同じ店内のなかで仕切りを作る」という方式であるため、閉塞感があまりありません。

2階建て以上の飲食店の場合は、フロアを分けるという方法が極めて有用です。下の部屋は禁煙スペース、上の階は喫煙スペースとして分けるのです。分煙効果が高いうえに、「隔離されている」という感覚を覚えにくく快適です。

このやり方を採用する場合は、1階部分を禁煙スペースにしましょう。扉をあけた瞬間に煙草の香りが流れてくると、たとえ「店内は分煙です」と案内されても引き返してしまうこともあるからです。

煙草の煙や香りは、料理の味や香りを損ねるものとして嫌う人もとても多いものです。そのため、分煙を考えることはとても大切です。ただ、煙草を吸う人が客層に多い居酒屋などを営む場合は、「全席喫煙可」というのが逆にウリになることもあります。現在は居酒屋でも禁煙のところが増えているので、愛煙家にとっては「全席喫煙可」のところは貴重なオアシスとなり得るでしょう。

自店の客層と資金を考えて設定していきたいものです。