飲食店を経営するなかで気にしたいことの一つに、「お客様をお入れする場所の広さ」があります。
今回はこれについて見ていきましょう。
飲食店を経営する場合、経営形態にもよりますが、基本的には、「厨房+客席」で店を構成します。「お金が潤沢にあり、広い敷地を買える」「ほかのところで料理を作り、客席に運ぶ」といったような特殊なケースではない限り、厨房の面積を広くすれば客席が狭くなります。このあたりの兼ね合いをどう考えていくかが非常に重要です。
一般的な面積の比率とは
「どれくらいを厨房にして、どれくらいを客席にするのか」は、お店の形態によって大きく変わってきます。ただ一般的には、「レストラン」と呼ばれるところは、厨房の面積を広くとる必要があります。なぜならレストランというのは、ある程度複雑な料理を作り、飲み物を作り、デザートを作り供する、という役目を持つからです。厨房でしなければならないことが増えれば増えるほど、厨房には広い面積が求められます。
反対に、「飲み物」に重点がおかれればおかれるほど、必要になる厨房の面積は小さくなります。複雑な作業が必要ではなくなるからです。そのため、一般的なレストランの場合は、厨房の面積は約4割が普通ですが、カフェなどの場合は2割程度でも納められると考えられています。
ただこれはやはり考え方によっても多少変わります。カフェであっても、「食べ物」に重点を置くところならば、3割程度の面積を確保すべき、という考え方があります。
このあたりは、「何人くらいで店を回すのか」「店のメニューをどうするのか」によっても多少は変わってくるでしょう。
席数を考える
次に考えたいのが、「席数」です。「ホール部分の広さ」は、レストランの場合は敷地面積の約60パーセント程度です。このなかに、どれくらいのイスをおくのかも考えなければなりません。では、1つの席を確保するためにはどれくらいの広さが必要なのでしょうか。
これについてはいろいろな意見があります。「1坪あたり、2.5席ほどおいても構わない」という意見もあれば、「1坪における席は1.3席くらいだ」という意見もあります。この意見は、もちろんどちらも間違っていません。「どんな店づくりをしたいのか」によって変わってくるからです。
たとえば、ファストフード店のように、「そもそも長居すること」を前提としていないお店の場合は、1つの客席あたりの面積はそれほど大きくなくてよいでしょう。駅にある、バーカウンターだけのソバ屋などはその典型例とも言えます。あのように、「時間がないなかで食事だけを済ませてすぐに出ていく」という店の場合は、くつろぐための空間ではなく、「できるだけ待ち時間を少なくして、すぐにほかの人に変われること」「一人でも多くの人が腰かけられること」が求められるからです。
対して、雰囲気を大切にするカフェなどの場合は、1席あたりの面積が広くなります。ちょっと豪華なイスや座り心地のよいソファーをおいてゆっくりくつろいでもらうのも、カフェの特徴だと言えるでしょう。このような場合は、1席あたりの面積に余裕を持つべきです。それこそ、「1つの席をおくために1坪ちかくの面積をとる」というような贅沢な使い方が求められることもあるでしょう。
この「1坪にどれくらいのイスをおくか」というのは、経営者が「この飲食店をどのような店にしたいか」にも大きく関わってきます。
テーブルをいくつにするか?
これに加えて、「テーブル席をいくつにするか」も考えなければなりません。
現在の飲食店では、「相席」を頼むことは極めてまれだと言えるでしょう。4人掛けの席しかなくても、2人のお客様がくれば4人掛けの席にご案内することになると思われます。そうすると、テーブルが足りず、後からきたお客様を断らなければならなくなるかもしれません。
しかしだからといって、1人掛けの席、2人掛けの席だけでお店を構成するのがよいかと言われるとそうではありません。
「自由におかけください」というスタイルをとっているお店と仮定しましょう。そこには2人掛けの席が4つあるとします。
そこに、2人連れのお客様が2組来たとします。その場合、最初のグループと次のグループは、ほぼ確実に、真ん中の席をあけて座ります。
この状態で後から4人連れのお客様がきたとしたらどうでしょうか。
「2人ずつバラバラに分かれて座らなければならないのなら、ほかの店を探す」というお客様も多いでしょう。
このため、「2人掛けの席ばかりで構成する」というのも少々考えものでもあります。
客席には、なかなか「正解」はありません。ただ、大きな敷地面積を確保できないのであれば、経営者は、より計画的に客席を運営していかなければなりません。
ちなみに地方の飲食店は、都会の飲食店に比べて、客席間がずっとゆとりのある設計になっています。土地代の安さの影響でしょう。