「お酒をつぐ機会」というのは、ファミリーレストランや喫茶店ではそれほどありません。通常これらのお店では、すでにつがれたお酒を持っていくか、もしくはお客様ご自身でついでいただく形をとるからです。
ただ、「お酒をつぐことも仕事のうちの一つ」というお店もあるでしょう。たとえば、フレンチやイタリアンのレストランなどがそうです。また、場合によっては、ビールなどをつぐ機会もあるかもしれません。
こういう機会が多いお店においては、「きちんとお酒をつげないこと」は、お店のイメージダウンにまでつながります。そこでここでは、正しいお酒のつぎ方について見ていきましょう。
ワインのつぎ方について
お酒は、種類によって正しいつぎ方も異なります。まずはワインから見ていきましょう。
ワインをつぐ際にもっとも注意しなければいけないのは、「ラベルの位置」です。ラベルは必ず上側に向けて注ぎます。こうすることによって、「このワインはどんなワインか」をお客様に伝えることができますし、万が一ワインが垂れてしまってもラベルを汚すことはありません。
これは「受ける側」にも言えることなのですが、ワイングラスは手に持った状態でそそぐことはしません。テーブルの上においたワイングラスに静かに注いでいきます。
また、ワインの場合は、香りや色を楽しむという観点から、グラスいっぱいに注ぐようなことはしません。どれくらいが目安か、というのはグラスの大きさなどによっても変わってきますが、グラスの半分のラインを超えることはあまりないのではないでしょうか。
ワインを持つときは、底を右手で包み込むように支えて傾けます。このままワインボトルを傾けてお酒を注いでいきます。ただ、この「片手注ぎ」は、慣れていないと不安定になってしまいワインをこぼしてしまう可能性があります。無理そうならば、細くなっている部分に左手を軽く添えて入れるとよいでしょう。お客様の洋服やテーブルにはねてしまってはいけませんので、無理はしないようにします。ただ、女性であっても、慣れれば750ミリリットル入りのワインボトルくらいなら片手で給仕できるようにはなります。(もちろん個人差はありますが)
しずくのたれが気になるようならば、給仕した後に、白いふきんでそっと注ぎ口を支えます。
ビールは泡の量に注意して
ビールの注ぎ方は、一般常識として知っている人も多いのではないでしょうか。
ビールの場合も、ワインと同じようにラベルを上側にして注ぎます。ただし、ワインのときと違うものに「手の添え方」があります。ビールの場合はビールボトルの上部分(首の付け根当たり)を下から持ち、底部分を上から支えます。そのままビールを注ぐのですが、最初は高めの位置から入れていきましょう。徐々に勢いを落としていくと、泡がとてもきれいにでます。
ビールにとって大切なのは、「泡の割合だ」と言われています。あまり多すぎてはいけませんし、逆に少なすぎてもいけません。ビールはコップ一杯に注ぎますが、泡の割合がグラスの30パーセント程度になるようにするのが理想的だと言われています。
ビールは、ワインや日本酒に比べて「あふれ出るリスク」が高いのでこの点に注意が必要です。泡があふれてお客様の手やテーブルを汚してしまった……ということにならないように、何度か練習をしておきたいものです。
日本酒はどんな出し方にするかによっても異なる
日本酒は、「どんな出し方をするか」によって多少異なってきます。居酒屋などでよくみられる、「桝の上にコップが置いてある」という出し方の場合は、コップに日本酒を注ぎ、わざとあふれ出るようにします。これによってお客様はちょっとした「お得感」も得られますね。
桝などを利用しない場合は、もちろんあふれ出ないように調整が必要です。とっくりの持ち方は基本的にはビールと同じですが、はじめはごく細く出します。徐々に注ぐ量を増やし、注ぎ終わりは細くなるように調整します。また、最後のときは、少しとっくりの口を回転させましょう。それによって「しずくだれ」が防げます。
日本酒の場合は、おちょこが意外と小さいこともあり、なかなか調整が難しいかもしれません。特に日本酒を飲みなれていない、という人は少し苦戦する可能性もあるでしょう。これも、慣れないうちは何度か練習するといいですね。
ちなみにどのお酒を注ぐ場合でも、グラス(コップ・おちょこ)とボトル(瓶・とっくり)は接しないように注意します。特にワインボトルは重く、取り回しに慣れていないと当ててしまう可能性が高いので気を付けてください。
これらの「お酒のつぎ方」は、飲食店だけでなく、「大人の常識」としても知っておきたいもの。お店で教えるだけでなく、自分で晩酌をするときに練習してみてください、と従業員に通達するのもいいかもしれませんね。