有給を認める?認めない?労働基準法と飲食店のシフト運用

有給を認める?認めない?労働基準法と飲食店のシフト運用

「シフト制」をとることが一般的である飲食店では、シフトに影響を与える「有給」についてはきちんとした理解をしておかなければなりません。今回はこの、「有給」について、労働基準法から見ていきましょう。


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「シフト制」をとることが一般的である飲食店では、シフトに影響を与える「有給」についてはきちんとした理解をしておかなければなりません。今回はこの、「有給」について、労働基準法から見ていきましょう。

労働基準法に見る有給について~日数

「年次有給休暇(以下「有給」)」とは、一定時間働いた人に認められる労働者の権利です。「何日間与えられるか」ということは、働いている期間によって異なります。最短は、6か月勤務を経過した後に与えられる10日間の有給です。これが1年半になると11日になり、2年半になると12日になり、3年半になると14日となります。それ以上は、勤務期間が1年増えるごとに2日ずつ増えていき、6年半以上の勤務で有給20日以上、となります。

飲食店の場合、ほかの業務と比べて、「正社員ではない労働者(パートタイマーなど)」が比較的多めです。パート労働者の割合はほかの業種と比較したとき、4位にランクインしているほどです(1~3位は、卸売り・小売業、医療・福祉、製造業)。そのため、飲食店経営者は、パートタイマーにも有給が発生することをしっかり覚えておかなければなりません。

パートタイマーの場合は少し決まりが複雑です。「週に働いている時間が30時間未満」というのは共通していますが、「週に4日、もしくは1年の勤務日数が169日~216日間である」という場合は半年間の就業期間で7日間の有給が発生します。これが、「週に3日、もしくは1年の勤務日数が121日~168日」の場合は5日間、同様に「週に2日、1年の勤務日数が73日~120日」の場合は3日間となっています。一番少ない人であっても、「週に1日以上、もしくは1年で働いた時間が48日~72日」であれば、1日だけですが、有給が認められます。

このような「有給」は、経営者の独断において、与えたり与えなかったりできるものではありません。労働基準法に定められたものですから、これを却下する権利は、経営者にはないのです。

「忙しいからダメ」「繁忙期だからダメ」は通るのか

ここからが特に大切なのですが、飲食店では、「忙しい時間帯」というものがあると思われます。そんなときに有給の申請をした場合はどうなるのでしょうか。

実はこれは、原則として断ることはできないのです。
有給は労働者の権利であるため、経営者が、「忙しいから受けられない」「この時間帯は混むから、有給は認められない」とされています。原則として、経営者は、有給を申請された日はそれを受け入れなければなりません。

ただ、経営者には「時季変更権」というものが認められています。
これは、「労働者が申請した日程に休みを与えてしまうと、業務上、正常な運営ができなくなる」というときに認められている権利です。ただ、これは乱用できるものではありません。「きちんと工夫して、配慮しても、それでもやはり休まれると正常な運営ができなくなる」という場合に限って使える措置です。

ちなみに、余った有給は翌年度に繰り越しされます。ただし、2年を過ぎたものの請求権は、労働者にはありません。

理由を問うたり、有給をとったことで不利益が起きたりしてはいけない

もう一つ覚えておいてほしいのは、使用者は、「なぜ有給を使うのか」ということを問い、その理由の如何によって有給の許可・不許可を決めてはいけないという縛りもあります。
たとえば、「病気や忌引き、冠婚葬祭ならば有給の取得を認める。ただし、スキーに行ったり旅行に行ったりするために有給を使うことは認めない」ということはできません。

また、「この忙しい季節に有給をとる気? 別に構わないけど、帰ってきたら給与を下げるよ」「皆勤賞はあげないから」などのようなこともできません。有給をとったことによって、労働者が不利な立場に立たされるようなことはあってはならない、とされているのです。

このように、有給に対する決まりは、経営者にとってはなかなか厳しいものがあります。しかし自分が「働く側」となったとき、このような決まりは非常にありがたいと言えるでしょう。

現在は、「有給の消化率を高めるために」ということで、企業が強制的に有給をとらせるようにしている、というところもあります。これは会社の規模や業界によっても違いますが、「仕事があるのに有給をとらなければならなくてつらい」と嘆く人もいるのだとか。
飲食店の場合、ギリギリの人数でシフトをまわしているとなかなか厳しいものがありますが、有給は労働者の権利です。これを経営者側が一方的に拒絶することは法律上許されていませんし、もしそうしてしまった場合、動労基準監督署からの勧告が来ることもあります。クリーンな経営をしていくためにも、有給についてしっかり理解しておきましょう。

・有給は、パートタイマーにも与えられる
・原則として、有給を申請されたらそれを断れない
・有給の理由は問えない
・有給をとったことで給与などを下げてはならない

この4点は特に大切です。