【失敗から学ぶM&A】飲食店を例に紹介

まずは、飲食店におけるM&Aの代表的な失敗例を5つ紹介します。具体的な内容について、ひとつずつ確認していきましょう。 M&A失敗のリスクを低減させるためには、買収対象の事前の入念なチェックが必要です。


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飲食店のM&Aにおける失敗の例

まずは、飲食店におけるM&Aの代表的な失敗例を5つ紹介します。具体的な内容について、ひとつずつ確認していきましょう。

①買収後に経営状態が悪くなった

買収後に経営状態が悪くなれば、当初見込んでいた売上・利益を得ることができず投資回収ができなくなります。具体的には、下記の3つのケースなどの場合が当てはまります。

・災害や金融危機の影響など、店舗だけの問題でなく、業界環境の変化により業績悪化してしまう場合。

・買収後に店舗の運営方法や仕入先を変更することにより、客からの評判が悪くなり、客離れが止まらなくなってしまった。

・買収後も経営を続けてくれた店長が、病気により急に引退してしまい、ノウハウを引き継ぐ時間が足りずに味が落ちてしまった。

売り手側の企業文化・風土・従業員と合わなかった

買い手側と売り手側の企業文化や企業風土が合わない場合、売り手側の従業員との関係が悪化してしまいます。

従業員や取引先からM&Aへの反発が起こることもあり、優秀な従業員が辞めてしまうことも起こりえます。特に従業員が料理プロセスのコアな部分を担っていた場合、代わりとなる人材を見つけることが困難となってしまい、買収後に買収前と同じクオリティのサービスを提供することができなくなります。

長期的に見た場合、来客数にマイナスの影響を及ぼしてしまうでしょう。

売り手側にコンプライアンス違反があった

「コンプライアンス」とは法令順守のことを意味していますが、コンプライアンス違反があった場合、訴訟や行政処分などのトラブルに発展する可能性があります。

また、近年では飲食店においてハラスメントやサービス残業が問題となるケースが多く、一度問題となってしまえば、解決することができない場合もあり、お店の存続にも大きく関わってしまうでしょう。

簿外債務があった

簿外債務とは貸借対照表に記載されていない債務のことをいいます。買収後に簿外債務が見つかった場合、その債務を実質的には買い手側が弁済しなければならず資金繰りが悪化してしまいます。たとえば、店舗を経営しているA株式会社を買収した場合に、A株式会社に店舗運営とは全く関係のない借入金が見つかった場合などです。

想定していたシナジーが出なった

飲食店のM&Aはシナジーを見込んで実施しなければ、あまり意味がありません。シナジーとは、提携した際の相乗効果のことです。たとえば、M&Aにより規模が大きくなることで、仕入量が増え仕入先に仕入単価の値下げを交渉することができるなどのコストメリットが挙げられます。

当初は仕入単価の大幅な値下げが可能と見込んでいたにも関わらず、買収後に断られてしまった場合には、この飲食店のM&Aが成功したとはいえないでしょう。

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M&Aで失敗しないためにも買収対象を入念にチェックする

ここまでは、飲食店の失敗事例についていくつかの例を紹介してきました。では、何をすればM&Aの失敗を防ぐことができるか、具体的に確認すべきポイントをみていきましょう。

買収対象のチェックポイント

M&A実施前に行うべき、買収対象の主なチェックポイントは以下になります。

月次推移、月次KPI

店舗の月次損益計算書と対応する期間の客数推移は、必ず確認するようにしましょう。
異常な月次増減があった場合は、経営者のインタビューなどにより原因を把握しておくことが必要です。

また、売上面だけではなく、売上原価、経費の明細を確認し、コスト構造を理解し何をすれば利益を増やせるのかといった計画を立てておくことも大切です。

店舗立地、店舗内設備

飲食店のM&Aにおいて、「店舗がどこにあるのか」ということは、来客数に直接的に影響する要素であるため詳細調査が必要です。

店舗のある現地に赴き、周りに競合店などがないか、人の流れはどうか、どのような人が周りに住んでいるのかといった点も確認しておくようにしましょう。

店舗立地だけでなく、店舗内の設備や席数の確認は当然ですが実施します。特に店内の設備が古すぎた場合は、買収後に取り換えの必要性が生じ、予想外の出費にもつながります。

顧客層

顧客層とは、ターゲットとなる客の年齢、性別、家族連れ、住んでいる場所(近所なのかどうか)、のことです。客のニーズにあった料理やサービスを提供できているのか、固定客はどのくらいかをポイントにして確認するようにしましょう。

店舗の評判

インターネット上の口コミは、事前に目を通しておくようにしましょう。新規の顧客獲得のためにはインターネットを使った集客が必要となります。仮に評価が高すぎたり、低すぎたりした場合は、原因分析は必須です。

従業員、役員などのキーパーソン

M&Aの前に、引き継ぐ従業員や役員などのキーパーソンについて、経歴やスキルの確認が必要です。特に重要なキーパーソンである場合は、契約締結後にインタビューを行うこともあり、また、契約書に買収後数年は働くといったキーパーソン条項と呼ばれる条項が盛り込まれることもあります。

企業文化

売り手の企業文化も気にしておくべきポイントです。言語化して確認するのは難しいですが、企業文化が合わなければ、買収後にきちんと経営することが困難になるでしょう。企業文化を理解できるよう売り手である経営者と納得するまで話し合うようにしましょう。

専門家によるデューデリジェンス

M&Aを実行する前は、専門家によるデューデリジェンス(買収監査)を行うことが通常です。もちろん、案件の金額などの重要性によってはあえて行わないという買い手もいますが、リスクを低減させるという意味では、実施することが望ましいです。

専門家によるデューデリジェンスの範囲は、会計、税務、法務が主要な領域です。会計・税務デューデリジェンスは公認会計士や税理士に、法務デューデリジェンスは弁護士に依頼するケースが多いです。デューデリジェンスに必要な期間は2週間~1カ月程度の時間が必要となります。

そのため、M&Aのプロセスが始まったら、きちんと事前にスケジュールを立て全体のグランドスケジュールと整合するように、専門家のデューデリジェンスも期限管理をしなければなりません。

M&A Propertiesでも、売り手側への打診、資料リストの作成、留意点の洗い出しなど、飲食店のデューデリジェンスについてトータルなサポートを行っています。業界特有のポイントを押さえた、精度の高いサービスが売りである、飲食店のM&Aに強いをもった専門家集団です。

初めてのM&Aでも失敗しないように、状況に合わせた適切なアドバイスを行います。これから事業戦略の一環としてM&Aを検討中の経営者の方は、ぜひ一度M&A Propertiesへお気軽にご相談ください。

M&A Propertiesのアドバイザリーサービスについては、こちらで確認してください。

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まとめ

今回は、飲食店のM&Aにおける失敗例について紹介してきました。これだけの失敗例があるので、自分も同じ失敗をしてはいけません。M&A失敗のリスクを低減させるためには、買収対象の事前の入念なチェックが必要です。

買い手自身によるチェックももちろん必要ですが、公認会計士、税理士、弁護士などデューデリジェンスも必要になります。

何から始めればよいか分からない、といった場合はまずは頼れる専門家に相談してみることがお勧めです。M&A Propertiesでも、飲食店のデューデリジェンスも含めたトータルなサポートを行っていますので、M&Aに関する質問はいつでもお問い合わせください。