店舗の閉店に伴う手続きとコストの削減方法

店舗の閉店が決まった際に必要な手続きや工事、閉店コストの削減方法をご紹介します。


この記事は約10分で読み終わります。

店舗の閉店が決まったら、まずは解約届けを提出

書類はイメージです

 店舗の閉店の決断をしたらまず初めに行う手続きは、物件の管理会社やオーナーへ閉店の旨を伝えることです。
契約書にも書いていますが、解約届は解約予定の数か月前までに書面での提出が必要です。
契約書を確認し、何か月前までに書面での通知手続きを行わなければいけないのかを確認しておくことをお勧めします。

店舗都合であれば、基本的には3~6か月前には閉店の旨を伝えなければいけないため、来月には閉店したいと思ったとして、店を閉めることは可能でも、管理会社や物件のオーナーへの支払いは続くということです。これは店舗の移転を行う際も同じになります。

目次へ

閉店コストを削減したいなら「居抜き退去」

 閉店コストを抑えるための手段の一つが、「居抜き退去」です。
ただ、居抜き退去するためには、管理会社や物件のオーナーの許可が必要です。

では、居抜き退去ができる場合と、原状回復工事をしてスケルトン物件にする場合とでは何が違うのかというと、退去するときの工事の範囲です。
スケルトンの場合、店舗を借りた時の状態に戻さなくてはいけないため、店舗を行う際に施した内装をすべて取り外し、壁や床なども元の状態に戻さなくてはいけません。場合によっては、居抜きで店舗を借りていることもあるでしょう。
ですが、管理会社や物件のオーナーに返すときには、スケルトンで返さなくてはいけないため、元の状態がどういうものだったのか確認が必要です。

それに対して、居抜き退去の交渉ができた場合は、原状回復工事が不要なため、閉店コストを抑えることができます。
壊れているものや汚れているものなどの修繕は必要ですが、設備などの取り外しを行わなくてよくなるためです。
また、使用していた設備の一部を造作譲渡するということもできますので、管理会社や物件のオーナーと、居抜き退去ができないか交渉してみるのもひとつです。
目次へ

閉店が決まったら、リース品は精算が必要

 次に行う手続きは、店舗内にあるリース品の清算です。リース品はリース会社に商品を戻せば支払いをしなくてよくなるわけではありません。

一般的にリースの契約期間は4~7年というものが多く、さらに途中解約ができないという問題があります。
なので、万が一、4年のリース契約をしていた大型冷蔵庫を2年でリース会社に返した際には、残額を一括で支払わなければなりません。

ただし、多店舗展開をしていて、同じ契約者が他の店で使用するのであれば「物件保管場所変更届」を提出することで一括返済しなくて良い場合もあります。
これはリース会社との契約内容によるので、事前に確認をしておきましょう。

さらにリース契約をしている商品の持ち主は、支払いをしている側ではなくリース会社のため、まだ使えるからと言って第三者に売ることはできません。
店舗を居抜き退去することが決まった時でも、リース契約をしている大型冷蔵庫をそのまま置いていくこともできないということです。

目次へ

閉店の際に行う原状回復工事の範囲

 管理会社や物件のオーナーと居抜き退去の交渉が成立しない、もしくは賃貸期間内に居抜きでの借り手(後継テナント)が見つけられなかった際には、原状回復工事を行う必要があります。

また、工事は原則、解約日までに終了させる必要があるため、工事スケジュールを解約日ギリギリに終わるように組んでしまうと、トラブルが起きた際に解約日を過ぎてしまうこともあります。

解約日を40日過ぎると、2ヶ月分の賃料を支払うことになるので、余裕を持った閉店スケジュールを組みましょう。

また原状回復工事を行う業者は、契約書によっては指定業者がいる可能性があるため、工事業者の相見積を取る前に、管理会社や物件のオーナーに確認をしましょう。
ただし、指定業者がいたとしても、工事費用の見積もりが適正かどうか、別の業者に相見積もりを取った上で費用の交渉をすることは可能です。

貸主側に任せてしまうと、高額な費用を請求されることもありますので、貸主側との交渉次第では安くできたり、工事業者を自分で選べる可能性があります。
原状回復工事は、業者選定、工事スケジュールを含め、早めに取り掛かると、何かトラブルが起きても対処ができるので、余裕を持った行動が大事です。

店舗を閉店する際の原状回復工事はどこまで必要か

目次へ

取引先への閉店連絡

 飲食店を経営している場合は、食材やお酒の仕入先もあるはずです。
店舗を閉店する際には、こういった取引店に対しても事前に連絡を入れるようにしましょう。

連絡をするタイミングは、閉店をする月ではなく、管理会社や物件のオーナーと解約日が正式に決まった後に様子を見て連絡をする方がいいでしょう。
こういった連絡も、丁寧に行うことで信用問題につながります。また、取引店によっては、仕入れ月の翌月払いだったものを、当月払いに変えてくれと言ってくるところもあるかもしれませんが、それはこれまでの信頼関係であったり、未払いのまま消えたりはしないということを伝えて信用してもらうしかありません。

どうしても当月払いや現金と引き換えにしてほしいと言われたら、それを受け入れるのも一つの手です。

では実際に閉店の挨拶のメール文の例を載せておきます。
――――
件名:〇〇店 閉店のご挨拶
本文:
株式会社〇〇 〇〇様

いつもお世話になっております。
〇〇店の店長〇〇です。

弊社はこれまで地域の皆様、取引先の皆様のお力添えもあり、10年にわたりこの地で営業してまいりましたが、
この度諸般の事情により閉店いたす運びとなりました。
来る〇月〇日をもちまして本店を閉店いたします。

これまでの皆様のご支援、心より感謝いたしております。
ありがとうございました。貴社のますますの発展をお祈り申し上げます。

メールで恐縮ではございますが、
とり急ぎご挨拶申しあげます。
――――

以上のような内容で取引先にメールを送り、閉店の旨を伝えます。
ただし閉店ではなく移転の際は、移転後も取引を続けることができるのかを聞いて交渉してみましょう。
目次へ

閉店の際の各行政機関への届け出について

 店舗を閉店する際に忘れてはいけないのが各行政機関への届出です。
「保健所」「消防署」「警察署」「税務署」へ指定の期間までに必要な手続きを行うようにしましょう。

保健所:飲食店であれば開業をする際には届出をしたと思いますが、閉店の際には意外と忘れてしまう人が多いようです。保健所には店舗の解約日とは関係なく、営業をしなくなってから10日以内に届出が必要です。

消防署:消防署には開業時に「防火管理者選任届」と「防火対象設備使用開始届」を出しているかと思います。この2つの解任日として届けることが決められています。これらは店舗廃業日以降に出すものですが、いつまでに出さなくてはいけないという決まりは無いので、忘れないようにしましょう。

警察署:深夜にお酒を提供している飲食店であれば「深夜酒類提供飲食店営業の開始届」を出しているかと思います。これに対しての届出は、廃止をしてから10日以内に届けるように決められています。また、スナックやキャバレーなどを営業していた場合の風俗営業許可に関しては、遅延なく許可証の返納を所轄の生活安全課に行うことが義務付けられており、遅延すると30万円の罰金になることがあるので気を付けましょう。

税務署:飲食店の経営を個人事業主として行っていた場合、閉店から1か月以内に所得税の申告に関しての廃業届を出す必要があります。ただし、複数店舗を運営していたり、他の事業も行っている場合は廃業では無いので例外もあります。

また、消費税など課税事業者の場合には、事業廃止届出も必要です。こちらは閉店した後すぐに出しましょう。青色申告の承認を受けている場合には、取りやめの申請も必要です。こちらは青色申告を取りやめる年の翌年の3月15日までになります。他にも従業員の雇用保険などの申請をしていた場合には、手続きを行うようにしましょう。

この他にも電気、ガス、水道などの公共機関への届出も必要です。
目次へ

閉店が決まったことを従業員へ知らせる

 店舗が閉店となると、そこで働いていた従業員も全員解雇となります。
多店舗経営をしていたり、移転をする場合は、解雇ではなく移動になる従業員もいるかもしれませんが、ここでは解雇となった際の手続きの流れをお伝えします。

従業員に対しては、解雇予告通知書というものを全員に出します。しかし、事前の会話無く、いきなり文書での通知は揉める可能性がありますので、まずは各従業員と面談をして状況を理解してもらってから書面を発行するほうが良いでしょう。

この解雇予告通知書は解雇をする30日前までに渡すということが労働基準法で定められています。文面の中には店が経営上続けられなくなったこと、雇い続けることができなくなったことなど細かく記載する必要があります。

従業員によっては、閉店が決まった後ですぐに就職活動を行い、閉店日前に辞めてしまう人も出てくるかもしれませんし、閉店が決まったためにモチベーションが上がらずいい加減に仕事をする人が出てくるかもしれません。そういった人が出ないようにするには、従業員への配慮が必要不可欠です。

もし解雇予告通知書を30日に満たない日数で出して解雇をする場合には、不足する日数分の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要が出てきます。
さらに1か月のうちに30人以上の従業員の解雇を行うと「再就職援助計画」「大量雇用変動届」をハローワークに提出し、手続きを行う事になっていますので、厚生労働省のホームページで確認しましょう。

閉店後、従業員の解雇が終わった後もしなければいけない手続きがあります。
「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」や「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を所轄の年金事務所に、廃止から5日以内に提出したり、「労働保険確定保険料申告書」を事業の廃止又は終了の日から50日以内に労働基準監督署へ提出したりする手続きが必要です。

「雇用保険適用事業所廃止届」「雇用保険被保険者資格喪失届」「雇用保険被保険者離職証明書」も、廃止日の翌日から10日以内に公共職業安定所に提出することが義務付けられています。
目次へ

お客様に閉店を知らせるタイミング

 店舗を閉店するときには、その店舗に通ってくれているお客様にも閉店のことを伝えなければいけません。
知らせるタイミングは特に決まってはいませんが、常連客などには頃合いをみて話をしたり、なんとなく察して常連客から聞かれた時に答えるということをしている店もあります。

知らせる方法としては、ホームページと店内のチラシです。もし閉店ではなく移転や多店舗経営をしていて店長が移動になるだけであれば、それも伝えてあげると、お客様も移転先に足を運んでくれる可能性がありますので、お知らせする際には語弊のないように伝えましょう。

閉店までに行うインフラ周りの解約手続き

 最後に、インフラ周りの解約手続きの方法についてもご紹介します。
閉店する際には電気・ガス・水道局にも解約の旨を伝える必要があります。店舗の解約日が決まったら、電気・ガス・水道局それぞれに電話もしくはインターネットで店舗の解約日を伝えればそれで手続きは終了です。
ただ、手続きが簡単なため、後回しにしがちです。店舗の解約日までに解約を済ませておきましょう。

また、インフラ周りとは違いますが、「店舗総合保険」に入っている方は、店舗の解約日が決まったら保険会社に連絡をして解約の申請手続きをしておきましょう。
解約をすることで返金されることもありますが、反対に未払い保険料を請求されることもあります。保険料の支払い方法は解約の事由によって異なってきますので、保険会社に相談しましょう。
目次へ