基本からわかる事業承継対策!3つの方法とステップ

経営が順調な会社であっても、後継者不足や資金面の問題など、事業承継に関する悩みを抱えることは珍しくありません。飲食店のオーナーとして自身の引退後も事業を続けていくためには、早めの対策が必要です。 しかし、事業継承対策をしようにも何をすればいいのかわからない方も多いでしょう。そこで今回は事業継承対策の基礎知識を紹介していきます。


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事業承継対策が必要な理由

近年、事業継承対策がじゅうぶんではなかったために、経営状況に関わらず廃業を余儀なくされる会社や店舗が増えています。中でも次の条件に当てはまる会社は、できるだけ早いタイミングで対策を取るべきです。

・後継者がみつからない会社(経営承継の問題)
・後継者への教育が不十分な会社(知的資産承継の問題)
・経営者に複数の相続人がいる会社(資産承継の問題)

では、こうした会社はなぜ事業承継対策が急務なのでしょうか。この項目では事業承継対策が必要な理由を解説していきます。

事業を存続させるため

そもそも事業承継とは、現経営者が後継者に経営の全てを引き継ぎ、事業を存続させることです。経営トップとしての資質を備えた人物をみつけることが、事業承継における最初の壁となるでしょう。

また、事業承継は単に経営者が交代するだけではありません。これまで経営者が培ってきた多くの経営資源を後継者に引き渡す必要があります。

人材や会社の資金、設備、ノウハウなど、どれかひとつでも欠けてしまうと経営は傾く可能性があります。事業継承後も円滑に経営を行い、事業を持続・発展できるように、経営交代に向けて事業計画を練ることが大切です。

経営理念を共有する、経営者としての視点を養う、現場を知るなど、後継者に事業承継後の経営を安心して任せられるように綿密にプランを立てましょう。

事業承継対策としてこうした事業計画を作っておくと、後継者も安心して事業を引き継げます。

相続問題を避けるため

事業承継で注意すべきなのが、相続に関するトラブルです。相続問題を放置しておくと、経営者の人選が滞ったり、親族と対立して経営権が分散したりと、事業承継に悪影響を及ぼすことが考えられます。

特に自社株については、後継者が議決権を得るために50%以上を有している必要があり、事業承継の成功を左右します。

経営者に相続人が複数いる場合は、あらかじめ誰に何をどのくらい相続するのかを定量的に提示するのがおすすめです。

相続トラブルの長期化は、会社の経営に悪影響を及ぼします。経営が不安定になれば社会的信用が失墜し、銀行から融資が打ち切られるといった事態も考えられます。

トラブルを回避できるよう、相続対策と事業承継対策は同時に準備しておきましょう。

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基本的な事業承継の3つの対策方法

事業継承は、自社に合った方法で対策を取ることが重要です。事業継承には大きく分けて次の3つの対策方法があります。

・親族内承継
・親族外承継
・M&A

それぞれの対策方法を確認していきましょう。

親族内承継(経営者の親族への承継)

親族内承継は、その名のとおり、事業を子どもや血縁関係者などの親族に承継させる対策方法です。

親族内承継のメリットは、後継者が見つかりやすい点です。また親族内から理解を得やすく、資産の引継ぎもスムーズに進められます。

ただし、対象となる親族が複数人いる場合には、後継者候補の多さからトラブルの火種になりかねません。

親族だからといって、必ずしも経営者の資質があるとは限らないでしょう。後継者候補に事業承継の意思がないといったケースも考えられます。また、従業員ではない親族から後継者を選ぶと、社内外からの理解を得にくいでしょう。

また、リーダーシップある創業者から事業を引き継いだ二代目社長は、経営に失敗することが多いとされています。事業への理解に加え、前経営者の理念を理解する、従業員からの信頼を得るといった努力が後継者に求められます。

親族外承継(従業員など親族以外への承継)

親族外承継とは、たとえば長期間働いている役員や従業員など、親族以外への人物への事業継承のことです。

会社の事業方針や内情に詳しい人物や、血縁に関係なく経営者として資質のある人物を後継者に選ぶため、承継後の事業を進行しやすいというメリットがあります。

注意点としては、親族と後継者の関係性が挙げられます。親族の了承がなければ後々トラブルを招くこともあります。円満な事業継承を達成するためには、関係者との事前の面談や相互理解が重要になってくるでしょう。

さらに、後継者の資金力不足から譲渡手続きが難航すれば、議決権のない経営者としてリーダーシップを取るのが難しくなることも考えられます。自社株の譲渡が進まなければ、リタイア後の資金を手にできず、現経営者にとってもデメリットになります。

また、事業資金の融資を受ける際、経営者や親族が連帯保証人として債務を負うことはよくあります。この場合、後継者は債務も引き継ぐことになりますが、親族外承継であれば現経営者の親族である連帯保証人からの理解を得るのは難しいでしょう。

M&A

最後に紹介する事業承継の対策方法は「M&A」です。第三者である会社に株式を売却することで事業を承継します。

M&Aは事業承継の成功と売却時の売却代金の獲得を同時に達成できるのがメリットです。

しかし、買い手が表れ、買収条件に合意しなければ、M&Aは成立しません。長期にわたって承継先の会社が見つからないことも十分に考えられます。そのため、M&Aによる事業承継を考えているなら、早期から関心を示す会社を探しておくことが重要です。また、買い手企業から「魅力のある会社」と判断してもらうため、事業の強化などを図っておく必要もあります。

M&Aで事業承継を行うには、買い手探しから相手との交渉や契約といった煩雑な作業をこなすことになります。最適なアプローチや手順を踏むために、プロのM&Aコンサルタントに相談することをおすすめします。

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事業承継対策を成功に導く3ステップ

ここからは事業承継対策を成功に導く3ステップを確認していきます。大まかなステップは以下になります。

「現状の分析」→「後継者の選定」→「事業承継計画書の作成」

これらの段階に沿って進めれば、スムーズに事業承継対策を行えるでしょう。以下、具体的な方法をお伝えします。

1.現状の分析

まずは会社の資産と負債を分析し、事業の現状を明らかにしていきます。
現状の分析で何より重要なのは、事業承継が円滑に進められる経営状態かどうかの把握です。事業に赤字が出ている、多額の負債を抱えているなどの状況にあれば、事業承継に先立ってその解消に努めるべきです。

また、店舗経営の場合、店舗の修繕費や従業員との関係、取引先の経営状況など、様々な要因が事業承継の障壁になることもあります。後継者に負担を与える課題があれば、計画的に改善を目指すようにして下さい。

そのうえで、後継者にとって、そして会社の将来にとって最適な事業承継計画を立てましょう。

2.後継者の選定

次に、上述した親族内承継・親族外承継・M&Aのいずれかを用いて後継者を選定していきます。

どの方法にもメリットとデメリットがあるため、先ほどの経営状況や経営者の希望するリタイア時期など多角的に判断しましょう。親族内、親族外の従業員、M&Aの順で後継者を探すのが一般的ですが、経営状況からM&Aを選ぶ会社も増えています。

いずれの方法にせよ、後継者の選定は早ければ早いに越したことはありません。事業承継を円滑に進めるためには、後継者教育や社内体制の整備にじゅうぶんな時間を割くことが大切です。

3.事業承継計画書の作成

会社の現状分析と後継者選定を終えた時点で、事業承継計画書の作成に移ります。

事業承継計画書の作成には、後継者、親族、従業員や取引先など関係者から事業承継の理解を得やすくなる、2018年に導入された事業承継税制の特例を利用できるようになるといった多くの利点があります。

事業承継は5~10年もの多大な時間を要します。そのため、事業承継計画書は中長期的な視点をもって作成を前提とし、年次ごとの細かな目標設定と定期的な見直しを行うことが大切です。

事業承継計画書の作成方法については、中小企業庁のホームページにも詳しく書かれていますのでご参考下さい。

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事業承継対策の相談先

事業承継対策は経営者ひとりが担うには負担が大きく、信頼できる相談先が必要です。資金面から相続まで、各分野のエキスパートによる知識や経験が大きな助けとなるでしょう。

ここからは、事業承継対策についての具体的な相談先を紹介します。

金融機関

銀行などの金融機関は、財務のエキスパートとして頼りになる存在です。長年付き合いのある金融機関なら、取引先として会社の財務事情に精通しており、相続対策など具体的な相談をしやすいでしょう。

最近は事業承継対策に積極的に取り組む金融機関も増えています。まずはなじみのある銀行を訪ねるのがおすすめです。

税理士

事業承継には税金問題も欠かせません。そこで税理士に相談すれば、税金対策を実施しながら事業承継を行えます。

さらに会社の内情を理解する顧問弁護士であれば、経営者の希望を理解した上で、最適な対策を考えてくれるでしょう。

相談先が事業承継に明るくない場合でも、税理士のネットワークから新たな相談先や他企業の動向を入手できる可能性があります。

弁護士

弁護士には専門分野があり、事業承継対策はもちろん、家族や親族の相続についての相談にも乗ってもらえます。

事業継承を進めると同時に遺言書の依頼をあわせて依頼しておくと、安心して後継者に会社を託せるでしょう。

M&A仲介会社

M&Aによる事業承継を検討しているなら、M&A仲介会社へ相談しましょう。

M&Aには専門的な知識や経験が必要ですから、相談を通してプロの知見を得られるのが魅力です。特定の業界の事業継承対策に熟知したM&A仲介会社を利用するとなお充実した相談となるはずです。
多くのM&A仲介会社が税理士や弁護士を社内に常駐、あるいは外部と提携を結んでいるので、事業承継対策をまとめて行える可能性もあります。取引先の銀行や顧問弁護士、税理士へそれぞれ相談するよりも、事業承継の全体像をイメージしやすくなるでしょう。

M&A Properties では、店舗型ビジネス(特に飲食業界)を中心にM&Aの成約実績が豊富です。10年間で取り扱い総額450億円とM&Aを熟知したプロが集結しています。

豊富な実績と知見から、お客様の悩みに寄り添い、適切なアドバイスを行います。もし事業承継にお悩みがあれば、ぜひM&A Propertiesへご相談ください。

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まとめ

今回は、事業承継の対策方法について解説してきました。事業承継には「親族内承継」・「親族外承継」・「M&A」があり、自社の状況に合った方法を選ぶ必要があります

どの事業承継の方法にもメリットとデメリットが存在します。しっかりと計画を練るとともに、金融機関や弁護士などの専門家に相談するといいでしょう。事業承継の展望が見えない状況であれば、各専門家とも連携し、豊富な知識と経験を持つM&Aの専門家に話を聞くのがおすすめです。