親の会社を継ぐ際に知っておくべきポイント

親が社長、または個人事業主として会社や事業を切り盛りしていた姿を見て育ち、自分がその後を継ぎたいと思えるのは素敵なことです。しかし、本当に自分が親の事業を継ぐべきか、後を継いで大丈夫なのか心配な人も多いでしょう。「後継ぎ」になることの意味やメリット・デメリットなどを事前に知ったうえでじっくり検討しましょう。


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そもそも「親の会社を継ぐ」というのはどういうことか?

会社の経営権や資産などの一切を引き継ぐことを「事業承継」といいます。承継先についてはいくつかの選択肢がありますが、子が親の会社の後継者となるケースも少なくありません。すなわち、「親の会社を継ぐ」のは事業承継の方法の一つなのです。

親子間で行う事業承継

親が築いた会社、或いは代々引き継がれてきた事業などを子が引き継ぐ「親子間の事業承継」の手段としては以下の3つがあります。

・生前贈与
親が自ら子を後継者と決め、子が受け入れれば親の生前に会社や事業(以下、まとめて「事業」とします。)を譲渡する形を取ります。
事業用財産の価額により、贈与税がかかってくることに注意します。
・相続
親の死後に子が親の事業の権利義務をすべて引き継いで行う形です。相続税の対象になります。相続は親の死後当然に発生しますが、後々トラブルにならないよう、遺言で後継者を誰にするかを書いておき、子にもその旨を予め伝えておく必要があります。特に相続人が複数いる場合、遺言書作成は不可欠です。・売却
子が親の事業を金銭などの対価により手に入れる形です。親子間だとあまり行われていない方法だと思いますが、親は利益を得ることでリタイア後の生活が楽になります。なお、売却益は親の所得税の対象になります。

事業承継で受け継がれる財産

事業承継により子が実際に受け継ぐ財産には以下のものがあります。

・資産
現金預貯金や会社であれば株式、事業用の機械や設備、車両、土地建物などの目に見える財産のことです。・従業員との雇用契約
従業員も立派な財産です。個人事業の場合だと子が改めて雇用契約を結び直すことになります。
・取引上の債権債務
売掛金・買掛金、融資などの借入金などがあります。財産にはマイナスの財産もあり、全ての財産を引き継がなければならないことに注意が必要です。・知的財産
特許権などの具体化された財産のみならず、事業を切り回すノウハウや経営理念、人脈、顧客情報なども知的財産に含まれます。承継後の事業の安定に欠かせない大切な財産ですが、経営者個人の度量にかかっている部分も少なくありません。

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親の会社を継ぐことのメリット

親子間における事業承継には様々なメリットがあります。

親の立場であれば血の繋がった子に自分の事業を渡せる安心感と達成感、承継先が早くから決まっているので準備期間が十分にとれるなどのメリットがありますが、子の立場では以下のようなメリットが考えられます。

仕事の裁量権が大きく柔軟に働ける

長く親の事業を見て、自分が継ぐつもりで既に親の下で仕事を覚えた後の承継など、子が自らトップに立つことを選んだのであれば、事業に関する全ての責任感が糧となり、更なる展開を自身で決定する経営の面白さを肌で感じた仕事ができ、やりがいを感じられることでしょう。

また、雇用される側ではないので、比較的若いうちから柔軟に働くことが可能なのも魅力です。

従業員や経営者取引先から信用を得やすい

親が(あるいは代々)築いてきた数々の知的財産には、前述したものに加え取引先からの信用も含まれます。これからも関係を続けていきたいと思ってもらえれば、一から事業を起こすより経営ははるかに楽なので大きなメリットです。

ただし、もちろんその信用を裏切らないよう努力を怠らないことが肝心です。

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親の会社を継ぐことのデメリット

一方で、親子間の事業承継にはデメリットもあります。親の場合だと、承継者が子なので、譲渡後も経営が気になったり、子に頼られたりとなかなか気が休まらないところがあげられます。一方、子の場合は以下のようなデメリットが考えられます。

経営者としての責任が重い

雇用される側であれば、仮に会社が倒産しても失業保険などの保障がある程度受けられます。また、職を失うことで自分自身が直接債務を被ることはありません。

しかし経営者側はそういうわけにいきません。被雇用者でないので失業保険はなく、事業で負った債務は自身で返済しなければなりません。(会社が負った債務であっても自身が保証人になっていれば返済義務を免れることはできません。)

自身だけならまだしも従業員がいれば彼らに対しても給料保障や再就職先を探すなどの対応責任が求められます。実に重い責任を負うという覚悟が必要です。

退職や転職を簡単にできない

被雇用者であれば仕事内容や環境が合わなければ転職することもできますが、自身が経営者の場合、何かあっても経営から降りたり廃業したりと無責任に事業をやめるわけにはいきません。ましてや親からの事業承継であれば、自分の代で潰すのではとても申し訳が立ちません。

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親の会社を継ぎたくないならどうすればいいか

親から事業を継ぎ、自分がトップになるということは正に両刃の剣です。性格的に経営に向かない、他にやりたいことがあるなどで事業引き継ぎはしたくない、親の代で事業を終わらせるのは惜しいが、しかし他に継いでくれそうな親族はいない…といった場合には別の事業承継の方法を検討してみてはいかがでしょう。

親族外承継

親族以外の第三者に事業を譲渡する方法です。

信頼できる従業員に継いでもらう、まったくの第三者に譲るなどいくつかのパターンが考えられますが、いずれにせよ経営力、現在の事業実務をこなす能力、さらには人を束ねる力を持つ人材を探すのは簡単ではありません。

譲り受ける側が株式やいわゆる「のれん」を買い取るだけの資力が必要なこともあるので、もし子の方で親の事業を継ぐ意思がないのであれば、その旨を親へ早めにきちんと伝えておきましょう。

M&A

M&Aとは自分の事業を他の企業に買い取ってもらうことをいいます。必ずしも会社対会社ではなく、個人対会社、個人対個人でもM&Aは行われています。

事業の後継者がいない、見つからないというケースは多く、個人・中小企業の重要課題の一つとなっていますが、たとえ代々引き継がれなくとも自分の事業が継続してほしいと望む経営者であればM&Aは有効な選択肢といえます。もし親の事業を継ぎたくないのであれば、一度提案をしてみてはいかがでしょう。

売却先はさまざまですが、大手の企業が多角経営を考え、新たな事業として買ったり、企業を考えている個人が買い手となったりすることもあります。

事業を売却できればある程度の利益を得られるので、事業譲渡後の人生設計に役立てることができます。

特に独自の技術やノウハウを持つ事業であれば高額譲渡も期待できますが、

逆にこれといって魅力がない、今後の発展が望めないと評価されればなかなか買い手がつかないということも十分あり得ます。

M&Aはインターネット上に多くのマッチングサイトがあり、事業や条件に応じて利用できます。

飲食店の経営者であれば飲食業界を専門とするM&A Propertiesにお任せください。

全国展開で4万社以上の顧客と関係性を持っているので、希望に沿う譲渡先を早期に見つけやすく、長年飲食を専門にM&Aの実績を積んでいることから信頼して売却のための立案を任せられます。

また、相談はもちろん着手金や月額報酬も不要で、成約するまで手数料がかからないのも安心です。

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まとめ

親の事業を子が継いで継続発展させていくのは理想的な形といえます。もし親の事業を継ぎたいと思うのであれば、事業内容だけでなく経営や取引先などにつき総合的に学び、親や従業員など関係者の信頼を得ておくことが大切です。

自身が経営者になると、大きな裁量権があり、己の才覚で道を切り拓いていくやりがいがある一方で、親の築いた事業財産を自分の代でなくすことはできない、うまくいかなくても放り投げることができないという重圧と責任も背負うことになります。

子が継がなくとも親の事業を承継する方法はあることを前提に、現在の経営状況や債務の状態を把握したうえで、子として親の事業を継ぎたいか、継げるのかをしっかり考えるようにしましょう。