【事業の無償譲渡】かかる税金の種類について解説

近年、株式譲渡や事業譲渡の譲渡は中小企業を中心に広く行われているM&A手法です。このような取引では金銭での売買が行われているので、税金を納税する必要があります。 一方、無償で価値ある事業を譲渡する方法が「無償譲渡」です。買い手が買い取り資金を準備する必要のない無償譲渡は、主に親子間や親族間で事業承継を行う際に用いられます。 では無償譲渡であれば、税金はどれくらい発生するのでしょうか? 今回は、無償で事業を譲渡した場合にどのような税金がかかるのかについて具体的に解説します。また無駄な税金を払うことのないように留意すべき点も確認しておきましょう。


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無償譲渡で「譲渡側」にかかる税金

無償譲渡でも譲渡側・譲受側、個人・法人で税金の内容が異なります。もし無償譲渡を検討している場合、譲渡側に関連する税金は、「法人税」、「所得税」の2種類です。

法人税

法人が、法人・個人へ無償譲渡する場合、実質的な内容によって税務処理が変わります。

・役員賞与・・・役員への利益供与としての譲渡
・交際費・・・仕入れ先や取引先への譲渡
・寄付金・・・第三者への無償譲渡

法人が上記の対象者に譲渡をする際は、このような税務処理が行われます。それぞれの処理方法により、損金算入限度額が異なっているため、利益が出ている法人であれば損金算入限度額を超えた部分に関しては法人税が課されることとなります。

所得税

もし個人が無償譲渡する場合、相手が法人か個人かで税務処理が異なります個人から個人への無償譲渡する場合では所得税は発生しません。本来、株式の資産価値があるものなどを譲渡している場合、個人としては所得税が発生し損をしてしまいます。しかし、ほかの給与所得などと損失を合算して節税することはできない点は留意しましょう。

個人から法人への無償譲渡のケースでは所得税が発生します。法人側で受贈益が認識される関係上、個人へも所得税が課されます。無償譲渡であっても時価で売却したものとみなし、所得税を納める必要があります。発生する所得税の計算式は以下です。

【売却益×20.315%】

例えば、個人が時価1億円の事業を法人へ無償譲渡した場合、個人に対して約2,000万円の所得税が発生します。この場合、無償譲渡しているため譲渡した個人には一銭も入ってきていないにも関わらず、所得税だけ納める必要があるため、計画を考えなおすなどの対策が必要です。

なお、所得税の発生は毎年の確定申告により申告納税するため、例年であれば3月中旬くらいに所得税の納税義務が生じることとなります。

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無償譲渡で「譲受側」にかかる税金

無償譲渡で譲受側に関連する税金は、所得税、法人税、贈与税の3種類です。

法人税

個人または法人から、法人へ無償譲渡が行われた場合、譲受側である法人で法人税が発生します。受け入れた資産を時価評価し、会計及び税務上で受贈益が計上されます。そして、この受贈益×法人税率分、法人税が増加することとなります。法人税の支払時期は会社の決算期後、原則として2カ月以内の申告納税が必要です。

無償譲渡を受けている場合は、決算期前に顧問税理士と相談をし、どの程度の法人税が発生するか把握しておくようにしましょう。

ここで、事業の時価評価をいくらにするかで法人税の金額も変わってくるため、評価額は重要な要素になります。税務上、適正な時価評価を行うことを求められますが、ケースによっては会計事務所などから株価算定書を取得した方が良い場合もあります。

無償だからといって何も考えずに受け取ってしまうのは、想定外の税金が発生してしまう可能性があるため、事前に専門家へ相談しておくことが望ましいです。

所得税

法人から個人へ無償譲渡が行われた場合譲受側である個人で所得税が発生します。法人と個人の雇用関係で課税関係が変わってくる点に留意が必要です。

相手先の法人が雇用主である場合実質的な給与にみなされる可能性が高く、「給与所得」に分類されます。給与所得の場合、累進課税方式のため、ほかの所得と合算した所得金額が大きくなればなるほど所得税が高くなります。

給与所得の最高税率は45%で所得が4,000万円以上の場合に該当します。通常の株式売却益の所得税は20.315%であるため、株式の評価額によっては税務面で不利になってしまいますので、慎重な検討が必要です。

もし相手先の法人が雇用主でない場合、「一時所得」に分類されます。一時所得は下記の計算式により課税所得が計算されます。

【(総収入金額-収入を得るために要した費用-(一時所得の特別控除額 50万円)×1/2】

一時所得は給与所得と同様に、ほかの所得と合算する累進課税方式です。そのため、給与所得に分類されたケースと同様に、税務面で不利になってしまう場合があることに留意しましょう。

税率は給与所得に分類されても一時所得に分類されても変わりはありませんが、基礎控除の金額に違いが生じるため、同じ税額となることはありません。

贈与税

個人から個人へ無償譲渡が行われた場合、譲受側の個人は贈与税の支払が必要となります。贈与税は毎年、1月1日~12月31日の間に発生した贈与に対して課される税金です。贈与税計算の基礎となる課税価格は下記の計算式で計算します。

【贈与を受けた金額―基礎控除額110万円=課税価格】

基礎控除110万円がありますので、仮に無償譲渡する株式や事業の時価が110万円以内であれば課税価格がゼロとなり贈与税は発生しません。課税価格がゼロ以上ある場合に、贈与税の税率を乗じて贈与税額を計算します。

贈与税の税率も累進課税となっており、最大税率は55%、その時の課税価格は4,500万円以上となります。なお、基礎控除110万円を利用して毎年110万円以内の贈与を毎年繰り返すことで贈与税を節税できる可能性があります。しかし、「定期贈与」とみなされてしまうと贈与初年度に一括して贈与税が発生してしまうケースがあるので、事前によく確認をしておきましょう。

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複雑な税務は専門家にサポートしてもらう

これまで解説してきたとおり、無償譲渡では譲渡側、譲受側が個人か法人かによって税務関係の手続きが変わってきます。

また、未上場株式や事業の時価評価手法にも細かく税法上の定めがあり、税金の対象となる金額も複雑であるため、正しく税金を計算するためには、専門的な知識が必要です。税務リスクを抑えるため、事業の無償譲渡を行おうと考えている際は、専門家にサポートしてもらうことがおすすめです。

また、税務面でだけでなくM&Aを成功させるためには、M&Aの多数の経験とノウハウ、加えて業界の経営事態の知識も必要不可欠です。

飲食店のM&Aに特化したM&A仲介会社である、M&A Propertiesであれば、事業の無償譲渡の際に留意すべき点を含めて、トータルでプロジェクトをサポートします。M&Aコンサルタントがお客様に寄り添い、お悩みを解決します。

ひとりで悩まずにまずは一度無料相談にお越しください。全国どこからでも相談可能です。カウンセリングの流れや実績などを紹介しているため、実際にご相談されるときのイメージが付きやすく、安心してお申し込みいただけます。

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まとめ

無償譲渡の組み合わせは、4パターンあります。その4パターンごとに発生する税金や税金の計算方法、税率など細かく規定が異なっているため、無償譲渡のスキームを考える際には十分に配慮しておく必要があります。

特に、個人→法人への無償譲渡の場合は、個人→個人では発生しなかった所得税が、【譲渡側】である個人にかかってきてしまうため、留意が必要です。

以上のように、事業の無償譲渡を行う場合は、税務面でも非常に複雑な手続があるため、総合的に頼れるM&A仲介会社に頼ることがおすすめです。飲食×M&Aに特化したM&A Propertiesであれば、飲食店の無償譲渡のような特殊なパターンにも、適切なアドバイスをもとにプロジェクトの成功へと導きます。