飲食店を経営する上で問題になるのが、この「顧客目線と店舗目線」の問題だ。顧客目線とは、文字通り顧客の視点に立って経営における問題点や改善点を見つめ、経営を行う視点のこと。トヨタ自動車の代表取締役である豊田章男氏が使い始めたと言われている。対して店舗目線とは、店舗の経営目標などを重視し、店舗の利益を最重視する店本位の運営を行うことだ。もちろん、利益を度外視して顧客に寄り添う必要はない。しかし、顧客と飲食店を取り巻く環境が刻一刻と変化していることも視野に入れて考えるべきだろう。
現代では、市場に出回る商品の量や種類は日々増え続けている。マスメディアだけでなくインターネットやSNSなどの発達によって、消費者個人がそれぞれの嗜好に合わせて商品を比較、選択することができるようになった。企業が商品を売っていた時代は終わり、顧客が自分で商品を選び、買う時代になったのである。
店舗目線での経営には、マーケティングでも使われている「4P」が重要である。「Product・商品」「Price・価格」「Place・場所」「Promotion・販促」の4要素であり、経営戦略を練る上でも重視されるものである。
対する顧客目線の経営において重要なのは、「4A」なるものだ。その内訳は「Attractiveness・魅力」「Affordability・値ごろ感」「Availability・手に入れやすさ」そして「Appeal・選択する理由」となっている。顧客が商品を選択する際の判断基準となりうる要素を集めた形だ。
必ずしも顧客目線と店舗目線は相反するものだとも言えない。顧客目線で経営を見直すと、店舗が抱えている問題を別の角度から確認することもできるのだ。