飲食店における造作譲渡代金とは、居ぬき物件を利用する際に前の店舗主が使用していた厨房設備・エアコン等の空調設備・いすやテーブルなどの家具・カウンター・壁・床・天井に付けられている器具などをそのまま利用する際に必要となる代金のこと。居ぬき物件の場合はこういった器具や家、設備などをそのまま無料で引き継げることが多い。しかしまだ前の借主との契約が残っている場合は、設備などを買い取るための造作譲渡代金が必要となる。
通常は店舗を手放す際はお店にある設備等を外し、元の状態に戻さなければならない。何もない空の状態の店舗のことを「スケルトン」という。しかし設備を処分したり取り外してスケルトンにするためには費用が掛かってしまう。この費用を抑えるためにも設備を売却したいと考えている場合は、管理会社や貸主に交渉して「造作譲渡」で物件の新しい借主を探してもらうことができる。しかし貸主が「現状戻しをしてほしい」と希望した場合は造作譲渡ができない。
設備を残したまま新しい借主を探す際には「造作譲渡代金」を設定する。通常は解約の半年前から遅くとも3か月前までには「造作譲渡をしたい」と伝えておく。貸主が了承すれば造作譲渡代金を付けて新しい借主を募集することとなる。解約日までの期間が短くなればなるほど、造作譲渡代金は安くなっていく傾向にある。場合によっては値段交渉をうけつけてくれることもある。
解約日を過ぎてしまうと設備の所有権が貸主に移るため、造作譲渡代金が発生せずに無料で前の借主が使っていた設備を譲り受けることができることもある。撤去する費用がかかるため無料で譲ったほうがいいと判断されれば、造作譲渡代金は発生しない。しかし設備や内装がまだ新しく、問題なく使える場合は資産価値がまだあると判断され、貸主と新しい借主との間で造作譲渡代金が発生することもある。
物件を契約する際に「造作譲渡代金」が設定されている場合は、物件の賃貸契約を結ぶと共に、前の借主(既に退去している場合は貸主)との間で造作買取の契約を結ぶ必要がある。造作譲渡代金が発生していても、1から設備を揃えるよりも安く済む場合が多い。しかし業種が違うと必要な設備も違ってくるため必ずしも安くなるとは限らない。必要のない設備や家具を買い取ることになると損をしてしまうこともあるため、その設備が本当に必要なものかどうか、造作譲渡代金は適性がどうかなどをきちんとチェックしておくべきだ。
譲り受ける設備がリースだった場合は、所有権がリース会社に移っている場合もある。この場合は別途リース会社と契約をする必要もあるため確認しておこう。