株式会社 フジオフードシステム 取締役 九鬼 祐一郎氏インタビュー 〜M&Aで本業の成長を加速させ、世界へ〜

大阪を地盤に大衆セルフ食堂 “ まいどおおきに食堂 ”や串揚げ食べ放題 “串屋物語 ” などを営むフジオフードシステムは2015年頃から積極的にM&Aを活用してきた。 最近ではステーキハウスや蕎麦など新業態をグループ化し続け、現在約40もの自社ブランドと子会社8社を傘下持つ。 昨年2019年1月には東証第一部へ市場を変更、その年末には株式分割をおこなったばかりだが、その理由を伺うと「うちの株の価値が上がったから、みんながもっと買いやすい値段にした。」と、さらっと語るのは東京支社:取締役 久鬼 裕一郎 氏。 着実に成長を続けるフジオフードのM&Aの取り組み姿勢や動向、次に何を目指すのか?などさらに詳しく伺ってきた。


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基本の本業関連を成長させていくためのM&Aの考え

―会社としてのM&Aの取り組み方針とは?

 

M&Aもいろんな種類があるんですけどね。そこには本業を強化するような資本提携や、規模を拡大させる同業の買収もある。

われわれがおこなってきたことの基本は本業関連で、余分なものをやらないんです。

例に上げると、知る人ぞ知る明太子ブランド「博多ふくいち」でね。

40%の資本業務提携によって、モンドセレクション最高金賞13年連続の明太子を安い値段で仕入れることが可能となり、天婦羅「えびのや」で、それを食べ放題につけて人気を博しました。

まず、こういった注目の商品でお客さんを一気に集めるというブランド強化策の M & A と、後は、同業の買収でも目的が2つあります。

 

1つ目はすでに持っている業態でも自社ブランドが30店舗しかなければ、もう30店舗買収して倍にする。すると運営上では大量仕入れが可能になり1個あたりの単価を下げる交渉ができるんですね。いわゆる規模の経済による買収です。

 

2つ目は、われわれが持っていないブランドの買収ですね。世の中的に非常に人気のあるブランドなどで、われわれがそういった新業態を手早く進めるための M & A ということですね。

 

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日本の未来の食文化を見通して、事業を展開していく

―持っていないブランドの買収というのはどういった業態をお考えでしょうか?

 

最近の日本人の食の消費についての統計では、魚よりも肉が初めて上回ったんです。少子高齢化で人口全体は減っているものの年寄りは元気になり、みんな肉を多く食べるようになった。そこで、われわれは肉を中心とした店舗のブランド化を進めていこうと思っています。

 

たとえば今回買ったばかりですが、これまでわれわれが扱っていなかったのが、お蕎麦の専門店と、M&A Propertiesに仲介してもらった沖縄のステーキハウスですね。

 

取締役の藤尾は日本全国の飲食に精通していて、ブランドの好き嫌いがはっきりしています。嫌いなブランドといえば今一瞬だけ利益が出ていても、先が見えないな・・・というところは興味を示しません。

 

ステーキハウス“ SAM’S ”は、沖縄好きの藤尾が好きで通っていて、たまたま中村社長(M&A Properties代表)のところから売りたいという情報を耳にしてすぐに買いました。

その前に、同じく沖縄のローズガーデンの話もありましたが、その時はもっと早かったですよ。

 

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今の飲食業界は陣取り合戦が始まっている

―「大衆食のカテゴリーで日本一の外食企業になる」ことを目指しておられますが、そこを踏まえてM&Aを積極活用されている?

 

そうですね。一つは時代の背景があります。まず日本の人口が減るってことですよ。

その一方で日本ほど飲食店が多い国は例を見ません。だから外食産業では新たな店舗が生まれ、またすぐに潰れていく。

 

一般的に厳しいと言われるラーメン店は、自分で店を作って10年持つ確率は1割か2割。

良いように言えば新陳代謝が早い。悪くいうとちゃんとしたオペレーションを確立しない限りは、継続して利益が上がらない業界でもあるんです。

 

それでも店舗数が増えるのは、すぐ真似できるから。

たとえばいきなりステーキが出て手軽なステーキハウスが一気に広まったじゃないですか。もちろんあれは、いきなりステーキが自分でたくさん店舗を出したのもありますが、あっという間に真似るところがいっぱい出てきた。和民が流行れば魚民が、塚田農場が流行れば山内農場が出る。鳥貴族が流行ると鳥次郎や鳥メロなど、とにかく同じようなものが、ワッと出てくる。

 

こうした非常に厳しい競争の中で、尚且つ日本の人口が減り胃袋の数が減っているわけですから、競争がさらに厳しくなっていくわけです。また人口が減るということは、当然のことながら労働力が減るということですから、企業は働き手の奪い合いになってゆきます。特に外食産業というのは昔でいう3Kで、きつくて汚くてといった具合で人気のある業態ではないからですね。

 

それでもリーマンショック後の2010年辺りは、働き口のない人たちが外食企業には来てくれていたんです。 しかしアベノミクスなどで、経済に活気が出てくると有効求人倍率が高くなってきて、今度は求職者の売り手市場になってくる。すると人々はより条件の良い業界へ流れてしまいます。外食産業の中では人の獲得競争になっています。

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M&Aでは人材確保も大切なニーズのひとつ

― では如何に人材を確保するのでしょうか?

 

この時代、人を採用しながら1店舗ずつ出店している場合ではなく、一気に領土と人を取るためにM&Aが行われるのです。5年前までは、先ほど申し上げた規模の経済や業態展開を増やすM&Aだけだったのですが、今は時代に応じて、人材を確保するためのM&Aも企業が考える大切なニーズです。

 

ですから、我々が買うのは赤字企業でも良いんですよ。逆にその方が安く買えるので良いくらいです。もし赤字の原因が店舗に人気がないという理由であれば、業態を変えれば良いじゃないですか?人を採用するためのコストは高くなっているご時世で、M&Aで陣地を確保すれば、同時に働く人もちゃんとそこについてくるんです。

 

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先に角を陣取れば有利になるオセロの戦略に似ている。

― これから先のM&A戦略は?

 

今、若者はお酒を飲まなくなりビールの消費も少なくなってきているので、居酒屋などは特色を持たないと厳しくなってくると思います。われわれは「かっぽうぎ」という居酒屋を持っていますが、ロケーションをきちんと定めシティーホテルの1階やオフィスビルの地下などに展開しています。

 

ホテルのロケーションは外国のお客さんが結構居て、インバウンド消費が高く狙えますし、1階だから外からのお客さまも立ち寄れる。オフィスビルでは 自分で好きなものを取るスタイルのランチを提供して、企業食堂のように使ってもらい人気を集めています。

夜はサラリーマンしかいないのですが、さっと綺麗に飲んで帰って頂けるといったような形なので、他の街中の居酒屋とはバッティングしないですよね。

 

僕は今、街中にある大きな居酒屋は買収しても伸びないと思っているんですよ。

どちらかというと淘汰されていくと思っています。メインでアピールできる特色、たとえば焼き鳥ですとか串カツですとか専門居酒屋でないと流行らないと思っています。

特別な切り口がないと居酒屋の存続は無理という感じがします。

 

しかし特色を持っていたとしても、先にお話ししたように飲食の業態はすぐに真似される。真似されないことはたったひとつ。それがロケーションなんですね。

われわれが居酒屋をホテルやオフィスビルなどにしか出さないのは、そういう理由からなんです。

 

ただオフィスビルやホテル自体の建設はそうニョキニョキ増えるわけではないので、

全体としては、これから先は肉系の業態が伸びると睨んで、次の仕掛けを考えています。

 

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過去の振り返りと今後の展望など

― 過去、一番大成功したM&Aはどちらになりますか?また、次の展望は?

 

成功したのは、やはり2015年の「博多ふくいち」との資本業務提携が、一番ですね。

最初にもお話ししましたが、ふくいちの明太子食べ放題という武器を手に入れた天婦羅「えびのや」が物凄く伸びたんです。「えびのや」は5年ほど前に1号店が出たばかりのまだ若いブランドなのですが、これが天ぷら業界では第2位の店舗数までいっきに増えました。

また2018年に子会社化を図った「サバ6ラーメン」も徐々に増やしていこうと思っています。まだ大阪中心で10店舗程度しかないのですが、エースコックと組んでカップラーメンを作り、38万個の数量限定×ファミリーマート限定で販売し、ネームバリューを高めたりしているところです。

ラーメンは競争が厳しい世界ですが、鯖節という独特の風味は好きな人にはヒットすると思います。まだ買ったばかりの企業なので、すぐどうこうというより、徐々に人気が広がれば良いと考えています。

 

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2020年は世界のフジオフードを目指すための第1年目

―フジオフードの2020年の抱負を教えてください。

 

大衆食のカテゴリーで日本一になるということが根底にありますから、それを実現するために何をやらねばならないかということを、色々とピックアップしていて、それをベースにビジネスモデルを組んでいます。2020年はそのビジョンを実行する元年としています。将来的に社長の藤尾は世界中で1万店舗の出店を目指しています。手の内を明かすと外食はすぐ真似されるので、ここぞという時期になったら発表します。

 

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M&Aの專門業者も優劣が分かれる時代

 

―M&A Propertiesを利用されていかがでしたか?

元々僕は金融畑出身でかつてM&Aの経験もあるので、専門コンサルタントの状況によっては「自分でやった方が早い!」と思ってしまったり、コスト面が気になったりと色々な問題点が見えてくることがあります。でも上場企業としてガバナンス上、第三者のM&A専門業者の採用が、大切なプロセスにもなります。

 

M&A Propertiesは社長自らが、しっかりと動き回ってくれましたね。それにセンスが良いので、とてもスムーズに進められました。

 

陣取り合戦の中では、こうしたM&Aの専門業者も優劣がハッキリしてくる時代でもあるんです。その中でもM&A Properties社は信頼できる企業として、今後さらに大きく伸びていくと思います。

 

M&A Properties社を通じて買収した沖縄の有名ステーキハウスレストラン”SAM’S”と、本格的なアメリカの家庭料理を提供する老舗レストラン ”ローズガーデン&アメリカンキッチン” は2020年、うちで新たな動きを見せますよ。

 

SAM’Sは沖縄にさらにもう一つ出店が決まっていますし、後者はローズガーデンカフェというちょっと違った形態で、大阪のヨドバシ梅田タワーに新しくできた複合商業施設LINKS UMEDAに初出店しますので今後の展開を楽しみにしていてください。

 

―ありがとうございました