記者)御社のプロデュース店は現在では何店舗ぐらいあるのですか。
田川社長)400店舗ぐらいですね。ただ、どの店舗も「町田商店」の屋号で店を持っているところはありません。「〇〇商店」という名前が全くないというわけではないですが、基本的には別の名前を付けてもらっています。
記者)お店の味は均一なのでしょうか。
田川社長)そうです。昔は違っていてもいいという考え方だったのですが、今はスープの味を直営店で日々洗練させているので、それを使った方が成功率は高いと思っています。営業スタイルはオリジナルでいいのですが、味に関しては揃えたいですね。
記者)先ほどお話を聞いていて思ったのですが、確かに初期の段階であれば同じ屋号を付けるメリットは少ないと思うのですが、今の町田商店の規模になると十分出てくるのではないかと思います。この辺りも方針としては変わっていないのでしょうか。
田川社長)チェーン店として展開するか個人店として運営するかによります。
直営店の町田商店はロードサイドが中心で、本格的なラーメンをご家族が安心安全召し上がって頂く為にチェーン店として認識して頂いた方が良い。
一方プロデュース店は、地元に愛される個人店がコンセプトなので、町田商店の屋号を使わない方が良いと判断しています。
直営店が町田商店という同一屋号で店舗展開しているのは、ロードサイドを中心に、職人が作ったラーメンをご家族でも楽しめるチェーン店を作ろうという思いから生まれています。創業当初はこだわりの専門店を目指していましたが、いまは本格的なラーメンを安心・安全に食べていただくことを大切に考えています。
記者)さきほど、プロデュース店は個人経営のところが多いとおっしゃっていましたが、直営店とプロデュース店ではどれぐらい売り上げに差があるのでしょうか?
田川社長)店舗によってばらつきはありますが直営店では平均700万〜800万、中には1500万ぐらい売る店もあります。
プロデュース店はばらつきがありますが、平均は月商400〜500万ぐらいです。企業化しているところはもっと多いですが、地方で夫婦で経営しているプロデュース店もあるので、平均するとそのくらいです。
記者)これから町田商店のプロデュース店として経営をしていくのであれば、どれぐらいの売り上げを見込めるイメージでしょうか。
田川社長)家賃や投資額にも変わりますが、700万から800万くらいの売り上げも可能です。ただ300万ぐらいでも、この家賃だったら生活できるというところもありますね。ただ、あくまでそれは夫婦で経営しているところで、儲かっているかと聞かれればそうとは言えないようなお店もあります。色々な店舗の例を、店舗に了承を得て、プロデュース店になる方にはお伝えしています。
記者)売り上げを大きく伸ばしている店舗だけではなく、そういった店舗の例もお伝えしているというのはすごいことだと思います。
記者)ところで、コロナ禍の現在、御社がプロデュース店として求めている方はどういう方でしょうか。こういう仕事をしている人が、今ラーメン屋を始めるといいとか、反対にこういうところはしない方がいいとかありますか?
田川社長)とくにないですね。どなたでも受け入れています。ただ、しいて言うのであれば、投資家感覚でラーメン店を経営しようと考えているならしない方がいいと思いますね。私はラーメン屋は自分で汗をかいて行うものだと思っているので、片手間程度で考えている方は厳しいと思います。飲食運営の経験がある、しかしコロナの影響で苦しんでいる居酒屋業態をやられてる方などはとても相性が良いと思います。
加盟店さんが増えることは本当にありがたいことなのですが、現状都心部は直営と既存オーナーの増店でいっぱいなので、地方で展開をしたい、という方がいたら是非一緒に取組させて頂きたいです。
記者)地方エリアであれば、まだチャンスはあるということですね。
記者)話を少し戻しますが、プロデュースを行ったお店で、田川さんご自身が、立地を決めたり、教育を直接行っていたのは何店舗目ぐらいまでですか?
田川社長)立地に関しては、今でも行っています。
記者)物件…立地重視ということでしょうか?
田川社長)そうです。どうしても立地だけは1度決めたら変えられませんから。うまくいかなくなったラーメン屋さんを過去に何度も見てきていますが、ほとんどが立地選定のミスによるものです。
記者)田川社長のように職人側からアプローチされた方は、なかなか物件が成功のカギを握っているとは考えないと思います。
記者)普通の方は味の問題という結論にしがちなので。それを分析して立地が問題だったとジャッジできるのはやはりすごいことだと思います。
田川社長)それは修業時代のラーメン屋さんでの出来事が大きいですね。私が入社した時は4軒だったのが、6年後に退社するころには10軒になっていました。つまり、年に1回出店していたのですが、同じラーメンを出しているのに、売り上げが全然違うんです。下手をすると倍違うこともありました。そういうのを見て、味以外に原因があるはずだと考えるようになったところがあります。
それに、最初の1店舗目で立地を間違えてしまうと、そこで経営は終わってしまいますし、5店舗目、10店舗目までに失敗を1店舗でもしてしまうと、やはりその後、その事実が足かせになります。資金もそうですが、社長の信用も失いますし、負け癖がついてしまうのは危険です。会社には勝ち癖をつけさせないと、働いている人の労働環境も改善できないので社員のやる気にも影響が出てきます。だから全店舗で勝っていないといけないと考えています。
1号店は売れる場所でないといけませんし、2号店は1号店よりももっと売れる場所を探すというように開発してきました。弊社の場合ですと、町田の次が代々木、その次が網島、そして横浜です。初期に出店した店舗は今でも高い売上を継続しています。飲食店は商品力×サービス力×立地力の掛け算で売上になりますが、立地だけは後から変えることが出来ないので慎重に決めないとならないと考えています。
記者)実際、直営店は何店舗になられているのでしょうか。
田川社長)今は直営で130店舗です。今期の目標として発表しているのは135店舗ですね。教育の仕組みも、物流、マーチャンダイジングも整ってきていますので、このコロナ期間中でも、店舗の負担を以前より少なくお店が展開出来てきています。
記者)コロナの影響はどの程度受けていますか?
田川社長)ありがたい事に時短に伴う売上減以外の影響は大きく受けておりません。コロナの影響が出始めた時、思い出したのは創業当時のことです。創業当時はちょうどリーマンショックがあり、その3年後が震災でした。この時、全くと言っていいほど影響を受けていません。エネルギーコストが上がって、材料費が高騰したということはありましたが。
震災当日は、15時半ぐらいに地震が起きてガスが止まったので、一度店を閉じました。このまま今日は休もうかと思ったのですが、結局17時に再開しました。本店も代々木店もずっと行列で、最後は売り切れてしまうほどでした。
緊急事態になると、みなさんお酒は飲まないものの、ご飯は食べたくなるんだということを知りました。非常事態においても、人には食事が必要です。ご飯を食べることに対して批判する人なんていません。だから非常事態において、うちは強いと思っています。非常事態になればなるほど、採用・物件において伸びるチャンスはあると考えているんです。
コロナで大変になると聞いた時も、不謹慎ではありますが、これは伸びるチャンスが来たと感じていました。
記者)コロナ禍の中で、前年比はどれぐらいでしょうか。
田川社長)まず初めに弊社の場合、しっかり営業した日としっかり営業した日を比較しています。そのため、時短をしていたり、休業している日とは比較していません。その上でなのですが、この1月2月は前年比100%を超えていますし、11月12月も90%台後半ですね。一番悪い時でも80%台後半ぐらいでした。
記者)話は変わりますが、御社には町田商店以外にもブランドがありますよね。
田川社長)はい。実は今、特に力を入れているのが他のブランドです。町田商店の次に作った「ラーメン豚山」は、現在直営が16店舗で、プロデュース店が3店舗です。このブランドがとても好調なのですが、職人の手が必要という問題があります。そのため、職人としても動けるオーナーや、それでもいいと言ってくれるオーナーに入ってもらっています。
「みそ業態」も去年展開できるような形になったので、物件ありきで展開していき、軌道に乗ったらプロデュース店としてもできるようにしていこうと思っています。
その他にもいくつか仕込んでいるものがあります。新業態を年に1〜2軒ぐらいはリリースしながら、うまくいったものは直営で展開して、さらにうまくいったらプロデュース店として出すというのが、弊社の考え方ですね。
あとは、同じエリアで共存できるのかも見ています。例えば豚山をわざと既存の町田商店の近くに出店してみました。それでも直営店は豚山を出店しても売り上げが落ちませんでしたし、新店舗の豚山も想定通りの売り上げになりました。近くにラーメン店ができたら影響をゼロにするのは難しいと思ったのですが、一定の条件下なら弊社のブランド同士が共存できることがわかりました。
記者)共存できるのであれば、これから他のブランドも都内に増えていくということですよね。
田川社長)そうですね。一つの街に、中華そば、家系、二郎系、つけ麺、タンメンがあって、そのすべてが弊社のブランドにするところまでできればいいなと考えています。
記者)ジャンルとしては麺のみでしょうか。
田川社長)まずはラーメンの中で出来るところまで追求していきたいと思っています。もちろん、ラーメン以外のところに全く目を向けていないわけではないです。アークランドさんのように色々な店舗を運営する姿はとても勉強になっています。ただ、今はラーメンだけで行くつもりです。今、ラーメン以外をしていたら、ラーメン展開の方が遅れてしまうと思うので。これから切磋琢磨しながら、次のものを見つけていく感じでしょうか。
ただ、ラーメンの中でも、ECや海外への展開もあるので、まだまだやれる事はたくさんあります。
記者)最後になりますが、今後のM&Aの展望についてお伺いしたいです。
田川社長)これから1000店舗に向けてと考えると自社工場はまだ足りていないので、工場のM&Aは考えています。工場としてのインフラが整っている、もしくは整えられるのであれば、場所は全国どこでもいいのかなと思います。港に近ければより良いという感じです。
ラーメン店のM&Aについては、現在は中規模のM&Aというのはあまり考えていません。文化などもろもろを擦り合わせるパワーのほうがむしろかかってしまいそうだからです。
大切なのは5〜10年後、一緒になって双方が良かったと思えるかどうかです。M&Aとしてお買い得かどうかではなく、お互いが良くなるためのM&Aをしていきたい。働いている人、お客さん、ブランドが長く続くかどうかが大切です。
例えば、1軒の超繁盛店を一緒に盛り上げていくとかには興味はあります。うちの資金やノウハウを使って、超繁盛店を一緒にやれたらすごく面白い。双方がよい未来を描けるかどうかで判断していきたいです。